2023年2月9日付の読売新聞は「臓器あっせん初の逮捕…3300万円振り込んだ男性、海外で肝臓移植後に死亡」(英文記事:Japan NPO Director Sent to Prosecutors Over Overseas Transplant)と報じ、NPO法人 難病患者支援の会の代表理事、菊池仁達(きくち ひろみち)氏が警視庁に逮捕されたことを伝えていた。
私が2021年11月から12月にかけて渡航した中央アジアの旅行記において、コーディネーターと記載しているのは大方が彼のことであり、私もキルギスで腎移植手術を受けることになっていた患者の一人であった。
今回、NPO法人 難病患者支援の会の代表理事、菊池仁達(きくち ひろみち)氏が逮捕されたのは、本人にとっては意外なことだったのだろう。
彼は、2022年8月に読売新聞が特集でNPOの疑惑を報じたときも、「マスコミがどれだけ騒ごうが大丈夫なんだ」と豪語していた。
今は非公開となったYouTube動画で、彼のインタビューも報じられているが、それを見ても彼の自信のほどが窺える。
私が思うに、警察の捜査だけでは菊池氏の逮捕まで結びつくことはなかったかもしれない。
事実、今までもNPOの疑惑を招くような行為は行われていたに違いないが、そこは患者側がNPOを必要悪と割り切ってダンマリを決めこんでいたと推測される。
それに、私がそうであったように、患者側は、社会的地位が高い富裕層が多く、多少のことは目をつぶっても臓器移植をしてもらいたいとの感情が芽生えたのは容易に想像がつくからだ。
それゆえに、移植体験記みたいなものもインターネット上にはなく、情報収集は困難を極めた。
しかし、今回の菊池氏の誤算は、元部下の証言や、患者の恨みにも近い感情が、社会正義、そして刑事告発へのバネになってしまったことだろう。
それに加えて、読売新聞社の社会部が総力を挙げて、コロナ禍のご時世にもかかわらず、現地取材までしたことも大きいだろう。
一方で、菊池氏が言っていた「今まで医療業界の利権のために、日本では臓器移植、特に腎移植がされる割合が著しく低いため、海外に活路を見出そうという人の手助けをしている」というのは事実だと思う。
そして、臓器移植というのは手術が終わればハッピーエンドではない。
術後(帰国後)に診てくれる病院や医師を必要とするので、それを探すのがイスタンブール宣言の絡みで日本では難渋するのだ。
ここまで海外臓器移植が悪(倫理的には??マークがあるのも事実だが)というイメージが植え付けられてしまうと、個人的に海外へ移植渡航(現時点では皮肉なことにNPOの疑惑の渦中にあるベラルーシが合法的に移植手術が受けられる)ができたとしても、日本へ帰国した後に受け入れてくれる病院や医師がなくなるだろう。
今までも大々的に受け入れ病院があったわけではないが、個人的なコネななどで受け入れてもらえたのが事実なので、そうした道も閉ざされてしまうのではないか。
私が患っている腎疾患については、移植しか根本的な治療の方法がない。
今通院している透析病院の看護師は、「もう一度、(国内の)献腎登録をしに行きますか?」と言ってきた。
17年待ちで75歳・・・私の寿命がそこまで持つのだろうか。
日本政府や医療関係者が根本的な問題、ドナー不足の解消に尽力しようとしなければ、NPOの菊池仁達氏が逮捕されようとされなかろうと、臓器移植を希望する富裕な患者は、あらゆる手を尽くして伝手を探すことだろう。
まあ、私にとっては、キ・セ・キは遠く、はかないものになってしまったのだけどね。
読売新聞の特集記事一覧
各記事の文中、実質代表とあるのは、2022年10月からNPO法人 難病患者支援の会の代表理事に就任した菊池仁達氏のことです。
- 【独自】海外での移植手術で臓器売買か、都内NPOが仲介…術後に日本人患者が重篤に(2022年8月6日)
- 国内の腎移植は「14年待ち」、深刻なドナー不足…海外で移植希望する患者も(2022年8月7日)
- 臓器売買疑惑、NPO実質代表「全く関与していない」「対価を払ったことない」(2022年8月7日)
- ウクライナ人のドナーに日本語、親族装い旅券偽造…移植した腎臓機能せず摘出(2022年8月7日)
- NPO仲介の臓器売買疑惑、厚労相「情報収集に努める」…警察から求められれば「全面的に協力」(2022年8月8日)
- 臓器売買疑惑、厚労省がNPO調査へ…実質代表が患者に口止め「貧乏な人から買ったと言われる」(2022年8月9日)
- 臓器売買疑惑のNPO、生体移植の批判恐れ患者に「口止め」…「ドナーは書類では死体」(2022年8月9日)
- 「臓器売買疑惑」スリランカでも移植計画…NPO「急いでやろう、患者10人送る」(2022年8月13日)
- 「臓器売買で捕まっているじゃん」…仲介NPO、コーディネーターの名前伏せる(2022年8月13日)
- [臓器移植 海外仲介の実態]<1> 不安募った途上国での手術、NPOスタッフは「大丈夫」と言ったが…傷口化膿し腎臓機能せず(2022年8月17日)
- [臓器移植 海外仲介の実態]<2>「この世界は袖の下」…NPO発言 患者男性不信感(2022年8月18日)
- [臓器移植 海外仲介の実態]<3> SNSでドナー集め…手配役のトルコ人、売買関与か(2022年8月19日)
- [臓器移植 海外仲介の実態]<4>ドナー不足 患者苦悩…国内の手術数、制度 世界に後れ(2022年8月21日)
- [臓器移植 海外仲介の実態]<5・最終回>専門家に聞く(2022年8月23日)
- 海外で臓器移植し帰国、仲介NPO案内の病院受診できず…臓器売買疑われ「話が全然違った」(2022年8月30日)
- 200万円で海外臓器移植、紹介状作成の医師30万円受領…「ざっくばらんに金額を」(2022年9月8日)
- 海外での臓器売買疑惑、調査に立ちはだかる壁…国に権限なし・NPOは対象外(2022年9月21日)
- 標的はウクライナ人「経済苦なら腎臓買います」…ネットで臓器売買、日本にも拠点?(2022年9月23日)
- 臓器売買仲介疑惑のNPO、所管の都は発覚後も立ち入り検査せず…議会答弁「情報は収集」(2022年12月9日)
- 臓器売買疑惑、患者が移植仲介NPOを提訴…費用返還など3000万円支払い求める(2023年1月29日)
ここからはNPO法人 難病患者支援の会の代表理事、菊池仁達氏逮捕後の記事です。
- 海外移植 捜査メス…NPO理事長逮捕 患者「被害もう出ないで」(2023年2月9日)
- 臓器あっせん、150人の患者名簿押収…ベラルーシ死体移植は3人か(2023年2月9日)
- 臓器あっせん、患者は徹底捜査求める「移植費用の行方解明して」(2023年2月9日)
- 臓器あっせん、患者3人から移植費用1億3000万円超…NPOに多額の利益か(2023年2月10日)
- 臓器あっせん、別の日本人患者も死亡…ベラルーシで肝臓・腎臓を同時移植(2023年2月11日)
東京新聞の特集記事一覧
- <渡航移植 その実態>(上)日本では「15年待ち」 弱る腎臓「海外頼るしか」(2022年10月4日)
- <渡航移植 その実態>(中)「営利」を否定 「支援活動」 仲介先で手術トラブルも(2022年10月5日)
- <渡航移植 その実態>(下)帰国後受診断られるケースも 透明性保つルール作りを(2022年10月6日)
- 「人生の選択として渡航を」海外での臓器移植を無許可あっせん疑い、NPO理事逮捕 背景にドナー不足(2023年2月10日)
- 臓器移植の違法あっせん容疑で逮捕にも…患者「すがるしかなかった」 渡航移植の実態と課題(2023年2月10日)
2021年11月-12月 中央アジア旅行のトピックス
- 奇跡へのシルクロードフライト
- コロナ禍だからか、アシアナ航空のビジネスクラスはしょぼい
- 海外旅行でわかった~マスク姿が常態化しているのは日本だけか
- タシケントのウズベクレストラン「シャシュリク No1」
- タシケント市内散策&アスキヤバザールでお買い物
- タシケント・ディズニーランド(Tashkent Land)に行ってみた
- 中央アジアで人工透析を受けて思ったこと
- ビザランでウズベキスタンからキルギスへ脱出
- 新型コロナワクチン接種証明書アプリを入れてみた
- Merry Christmas from overseas!
- 日本語ガイド付きビシュケク市内観光ツアー
- ビシュケクでサウナに行ってみた
- アタチュルク公園でアスレチック
- ビシュケク市内散策&美女図鑑
- オシュ・バザール(Osh Bazaar)へ行ってみた
- ビザランを終えてウズベキスタンへ帰還
- 日本語ガイド付きタシケント市内観光ツアー
- ウズベキスタンから帰国~日本でドナー待機へ
- 穢れし者たちへ~水際対策という名の成田空港検疫
- 海外帰国者14日間の自宅待機の中で
- 史上最速の確定申告、海外療養費と海外旅行傷害保険の請求完了
- 海外療養費の国民健康保険負担分(7割)還付
コメント
はじめまして。私も当事者の一人であり、海外移植患者です。菊池とは何度か面識があります。
ほんといやはやです。仰る通り「恨み」を買いましたね。それと焦っていたように思います。
こんにちは。六地蔵さんも海外移植経験者ですか。
菊池氏は恨みを買った。
その一言でしょうね。
カルロス・ハッサンさん
色々な人が、自分に都合のいい事を話していますね。
もし良ければメールを下さい。
六地蔵さん、3/3にメールしました。g-mailからです。
有難うございます。
返信させて頂きました。
よろしくお願い致します。