穢れし者たちへ~水際対策という名の成田空港検疫

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成田国際空港

コロナ禍前であれば、搭乗機が無事に日本の空港へ着陸すれば、旅行はほぼエンディングを迎えたのも同然だった。

しかしながら、今は空港での水際対策(2021年12月10日付の「水際対策強化に係る新たな措置(21)による待機について」)という名の検疫と、厚生労働省・入国者健康確認センターの「14日間の待機期間中」のルールがあるので、帰国日から2週間を経過しなければ、日常の行動規制が解除されない。

この政策の根幹にあるのは、多くの日本人が無意識に持っているソトから来たものは穢れているとの論理にほかならない。

空港検疫で見えた~観光立国への夢は完全に潰えた

驚く外国人男性

現在、日本へ入国(帰国)する人は、出国前72時間以内の検査証明書(厚生労働省指定のPCR検査証明書)を提出する必要がある。

これは、私が今回渡航したウズベキスタンとキルギスも同じなので、あらかじめ準備すればいいだけのことだが、日本の場合は、それに加え、上陸地点でもPCR検査が実施され、その双方が陰性であれば、基本的に検疫を通過することができる。

普通に考えればここまでやれば十分ではないかと思うだろう。
実際のところ、外国帰国者(入国者)の2週間の隔離というのは、1年前ならともかく、今はゼロコロナを標榜する狂信的な国か、医療体制が脆弱な国が実施しているというのが私の認識だからだ。

例えば、2021年9月8日付のキャリコネニュースで「『コロナフリー』を目指すニュージーランドの、日本のメディアが伝えない不都合な真実」と報じられたニュージーランドが、たった1人の新型コロナウイルスの感染者で、ロックダウンに踏み切らざるを得ないのは、医療体制がすでに崩壊しているからと言われている。

しかしながら、日本政府はゼロコロナ政策こそ標榜していないが、国民の心の中はゼロコロナ信奉の人が激しく多いと感じる。
私が何度も疑義を呈している、夏でも屋外マスク族は、まさにゼロコロナ信奉&ソトは穢れし世界に浸っているとしか思えないからだ。

それゆえに、ソトから入ってくるものは遮断せよという政府の政策に多くの国民が賛意を示すのである。
新型コロナウイルス(亜種を含む)の感染者が国外滞在歴があるとかないとか報じられるのはその一例で、新種のウイルスはすべて外国からもたらされるという日本人が持つ一種の狂信的な信仰である。

1月11日付の共同通信が「外国人新規入国禁止、2月末まで継続と首相」と報じていることにもほとんど異議が出ていないようで、観光庁の設立目的たる「我が国の『観光立国』の推進体制を強化」がむなしく響くのは気のせいだろうか。

私はこれからの日本は、観光で食っていく政策を貫くことが重要であると思っているのだが、為政者やほとんどの国民はそうは思っていないようだ。
そうでなければ、これまでのレジャーを敵視する政策の数々に、多くの国民が賛意を示すことは私には理解できないからだ。

落ち込む男性

実際のところ、2020年7月19日付で私が書いた「日本が観光立国を目指すというのはタチの悪いジョークだったのか」というのが現実化した姿を今の成田空港に見ることができる。

今まで搭乗ゲートだったところが、検疫の会場として使われ、現在の水際対策がなくならない限り、かつての賑わいを取り戻すことは不可能に見えた。

私は車椅子を押してくれている航空会社のスタッフに言った。
「搭乗機が着陸してから2時間以上も検疫にかかっている。これではインバウンドの再興は当分ないね。日本人が自由に海外に行くこともね。日本の観光立国の夢は潰えたんじゃないかな。」

私がそう言ったことに対し、彼女は力なく頷いた。
そして、こう言った。「貴方の2時間半は短い方よ。週刊誌に書かれていた外国人一家で8時間というのは事実なのよ。それじゃほとんどの人はたまらないわ。」

そう、彼女たちは毎日空港の様子を見てわかっているのだ。
衰退の色濃い国際空港の惨状を・・・非能率極まりない検疫の事実を・・・
私は思い出していた。
2021年12月10日付の東洋経済に「英語力『112カ国中78位』の日本で広がる外国嫌い」とあったことを・・・

穢れし者は電車やバスに乗るべからず

レッドカードを出す女性

成田空港のウェブサイトには「日本へ帰国・入国される方の交通アクセスについて」ということで、海外から来た人は公共交通機関を使うなというソトから来たものは穢れているとの論理満々の文章が書かれている。

厚生労働省は、全ての地域から帰国・入国する方に対し、空港から自宅やホテルなどの待機場所までの交通手段に電車、バス、タクシー、航空機(国内線)などの公共交通機関を使用しないよう、強く要請しています。
成田空港内を運行する「ターミナル連絡バス」も公共交通機関です。帰国者・入国者の方はご利用になれませんのでご注意ください。

もっとも、これをシカトして帰る人も多いのだが、まともに要請を聞き入れて、ハイヤーを頼むとそれだけでも高額の費用がかかる。

公共交通機関だと第三者に感染させるリスクがあり、プライベートカー(自家用車、友人の車、ハイヤー)だったら、感染させないなんてことはないのだが、感染ルートを特定させたいだけのための日本政府のやったフリ政策の一つに多くの人が振り回される。

おまけに、ハイヤーに乗ったら乗ったで、例えば、私が使った松崎交通の「海外より帰国(入国)されるお客様へのお願い」には、とても正気の沙汰とは思えぬ厚生労働省の要請が羅列されている。

まさに、ソトから来たものは穢れているとの論理が充満しているのである。
空港検疫で何時間も足止めされ、そこから解放されても、べからず国家の論理丸出しとは旧ソ連並みの素晴らしい政策ではないか。

日本のザル対策の根源はブラック規則にあり

耳を塞ぐ女性

学校のブラック校則だろうが、会社のブラック社則だろうが、お上品に守ってきた者の典型が日本の官僚を頂点とするエリートだ。

しかしながら、このたびの水際対策でもそうだが、そんなことを守らせてどうなるという規則が随所に見られる。
多くの日本人はそれでも規則を守ってくれるものだと信じている人が多いが、一見してバカバカしいと思えるものを守る、しかも守らせる抑止力もなければ、そんなものは多くの外国人にとって有名無実なのだ。

もう少しシンプルに、真に必要なことだけをすればいいものを、日本政府のやったフリ政策に多くの人が振り回されるのである。
そして、無駄なお金が今日も流れていく。

最後に

ノートパソコンとハーブティ

私は今回、ウズベキスタンから帰国したということで、検疫所が確保する宿泊施設での待機はなく、自宅での14日間の待機が求められるだけとなった。

その待機期間中のことだが、厚生労働省・入国者健康確認センターの「14日間の待機期間中」のルールは憂鬱の一言だ。
待機場所(自宅)を登録すると、毎日2回、居場所の確認が行われ、さらにAIによるビデオ撮影が行われ、時折、ダイレクトに電話がかかってくる。

おまけに、空港で配布された抗原検査キットで、入国3日目、6日目、10日目に自主検査をして報告することになっている。
私の経験から言って、7月に肺炎で入院した時でさえ、そこまではしなかった。
まさに、ソトから来たものは穢れているとの論理なのだ。

2020年のシンガポールのように、海外渡航の自宅隔離者に追跡端末着用義務を課した国もあったようだが、日本の対策がザルと言われるのは、物理的な抑止力がないことも一因なのだ。
まあ、自分がその身になってみると、ザルの方が気楽でいいのだけどね。

それにしても、海外帰国者の14日間の自宅待機の義務はいつまで続くのか。
まさに、ソトから来たものは穢れているとの論理をやめない限り、未来永劫に続くことになるだろう。
そうなれば、海外旅行好きの人たちが望む、自由に海外へ行き来するということは夢物語になるのだ。

2021年11月-12月 中央アジア旅行のトピックス

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