2020年の東京五輪開催決定の祝賀ムードに立ちはだかるガラパゴス業界の壁

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驚く外国人男性

56年ぶり2回目の東京五輪開催決定おめでとう。
今日はスポーツ関係者を始めとして首都圏は祝賀ムードに溢れている。

大きな国際イベントを前にして関連業界の業績見通しも前向きなものが出てくるだろう。
日本経済全体を見渡せば久々の明るいニュースだし、良いことづくしのように思える。

これが一過性のムードで終わらずに、10年単位で持続できれば、デフレからの完全脱却も夢ではないだろう。
それに日本が真の意味で観光立国を目指す最後のチャンスである。

五輪の開催地が東京に決まったのは、クウェートのシェイク・アハマド・アル・ファハド・アル・サバーハ(Sheikh Ahmad Al-Fahad Al-Sabah)委員が「2016年リオデジャネイロ大会に関する準備の遅れが東京にとって有利に働いた。(It was exactly the Rio delays that swung the vote in Tokyo’s favour.)」と、述べたとあるように、日本人の仕事に対する生真面目さが大きく評価されたようにも思う。

IOCの委員からすれば、「施設の建設や修復が間に合いそうもない、とか、チケットの予約がうまくできない、とか、日本人に任せればそういうことは滅多に起こらない。都市の治安も良好だ、交通インフラは文句の付けようがない。」とくれば、福島原発問題のマイナスを差し引いても、という気持ちになったのだろう。

このように、2020年の東京五輪開催決定は日本の一般サラリーマンの仕事が評価されたという面も大きく感じられる。

ところが、こうした東京の五輪開催の良い面とは裏腹に、日本が観光立国を本気で目指そうとするなら、その重しになりかねない粘土層が数多く存在する。

粘土層とは2010年11月10日号の週刊ダイヤモンドの特集「職場で女性に嫌われるタダ乗り社員たち-。“粘土層”のオジサンや敵が多い女性は要注意!」、11月24日号の「あなたも『頭の中身が昭和時代』の管理職?“タダ乗り粘土層”に対する不満の原因と対策」で使われた言葉で、主に中間管理職を指しているのだが、ここでは権力や地位にしがみつく無能なオジサン全般、それに彼らが実権を握る企業や官公庁を指すことにする。(お前もそうだろ、とは言わないように・・・苦笑)

実際、「世界の日本人ジョーク集」には、軍隊の比較としてこういうことが書かれている。

世界最強の軍隊とは?アメリカ人の将軍、ドイツ人の参謀、日本人の兵。では世界最弱の軍隊とは?中国人の将軍、日本人の参謀、イタリア人の兵。

なぜ、東京が五輪開催地に選ばれたのか、五輪には数多くの前例があり、将軍も参謀も不要、いるのは兵隊だけ、という穿った見方もできるのだ。

それでは日本の観光立国を阻む粘土層の両輪は何かというと、言わずもがなの政治家と官僚、それに大手銀行の幹部だ。
ついでに携帯電話会社の幹部も加えてもいいだろうか。

福島原発から垂れ流される汚染水の問題は、いずれ大きな国際問題となって、それが東京五輪開催の足枷になるような気もするが、そのことについてはここでは触れない。
もし、気になるのなら、というか気にならない方がおかしいが、フランスねこのNews Watchingをご覧になるといいだろう。

ところで、私の書いたコラム「10年遅い日本の観光庁構想(2007年6月26日)」と「訪日外国人旅行者を困惑させる銀行ATMのバリア(2010年3月28日)」をご覧いただければ、いかに彼らが日本の将来にとって癌かというのがおわかりいただけるだろう。

特に、銀行ATMの件については、当時の政権与党であった民主党や、観光庁にもメールしたのだが、今までほとんど事態が変わっていないということは、関係当局の責任者か銀行幹部にやる気がなかったのだろう。

このほかにも、成田などの国際空港以外で外国人が日本のプリペイドSIMカードを入手する困難さや、貧弱な公共のWi-Fi環境、英語が通じにくい旅行会社、宿泊先のホテルや民宿(ゲストハウス)でショートエクスカーションの申し込みができないなど、改善すべき点は多い。

それと、気になるのは日本語の案内板や道路標識に単にローマ字の付け足しをしているもの、例えば「○○通り」というのを単に”** dori”などとしているものだ。

これは鉄道やバスの車内放送でも多いのだが、これでは外国人にわかるわけがない。
“** dori”を”** street”や”** road”に変えることも必要だろう。

事実、日本政府観光局(JNTO)が出したTIC利用外国人旅行者の訪日旅行実態調査の「訪日外国人個人旅行者が日本旅行中に感じた不便・不満調査(2009年度版)」でも標識等(案内板、道路標識、地図)が不満のトップなのだから即座に改善すべきだろう。

ついでに言うなら2012年度版の報告書では、訪日観光客の9割がインターネットを使っているとあるし、要約のページにはまさに日本が抱える通信環境の問題がすべて出ている。

今現在はパッケージツアーで来ている人たちもリピーターになれば個人で来るようになる。
そのときに感じる不満が耐えがたいものになれば、どうなるか想像に難くないだろう。

私としては2020年の東京五輪開催が、日本の観光立国化の起爆剤、引いては斜陽化する製造業に代わる成長産業の転換点となって欲しいが、その道は粘土層によって阻まれ、迂回路は果てしなく遠い。

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五輪=2020年招致、東京は信頼性と財政力が決め手に (2013.9.8 ロイター)

[ブエノスアイレス 7日 ロイター]  国際オリンピック委員会(IOC)は7日の総会で2020年夏季五輪の開催地を東京に決定。
安心して大会を任せられる信頼性と財政力が決め手になったとみられる。

東京は決選投票でイスタンブール(トルコ)に圧勝し、アジアでは2008年北京大会以来、東京では1964年大会以来2回目の開催を獲得。
強固な財政基盤と、これまでの各種大会における運営実績を前面に押し出した作戦が功を奏した。

調印式でIOCのジャック・ロゲ会長は、投票前の最終プレゼンテーションで安倍晋三首相が自ら「安心して任せてもらえる」と発言したことに触れ、「自分は整形外科医でもあり、投票権を持たなかったとはいえ、この言葉は響いた」と述べた。

ジョン・コーツ・IOC理事はロイターに対し、「東京の実施計画は非常に選手本位であり、会場配置も素晴らしい」とコメント。
IOCを支援するスポンサーの多くがアジアにあることも、五輪運動にとってはプラスだとした。

IOCで影響力が大きいとされるクウェートのシェイク・アハマド・アル・ファハド・アル・サバーハ委員は、2016年リオデジャネイロ大会に関する準備の遅れが東京にとって有利に働いたとの見方を示した。

トーマス・バッハ・IOC副会長は、世界情勢が不安定な中、IOC委員は決選投票で、イスラム圏での初開催を目指したイスタンブールよりも伝統と信頼性の東京を選択したのではと述べた。

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Olympics-IOC opts for stability, money in picking Tokyo
*Tokyo seen as “safe pair of hands”
*IOC to tap into vast Asian market
By Karolos Grohmann
(September 7, 2013 Reuters)

BUENOS AIRES, Sept 7 (Reuters) – The International Olympic Committee was in no mood for new adventures when it picked Tokyo as the host of the 2020 summer Olympics, opting for a “safe pair of hands” that could also boost its finances.

Tokyo beat Turkish metropolis Istanbul in a landslide vote after Madrid were eliminated in the first round, taking the world’s biggest multi-sports event back to Asia for the first time since the Beijing 2008 Games.

While Istanbul officials were left licking their wounds after their fifth failed bid in the last six votes, Tokyo were vindicated for a strategy which saw them highlight their solid finances and strong track record of delivering on promises.

The Japanese capital also dangled $4.5 billion in front of the IOC a year before the vote, saying the money for the Games was “in the bank.”

“You described yourself as a safe pair of hands and as a surgeon even if I did not vote, this appeals to me,” IOC President Jacques Rogge told Japanese Prime Minister Shinzo Abe during the contract signing ceremony after the vote.

The Japanese capital took the lead from the start, landing 42 votes compared to 26 for Madrid and Istanbul, before beating the Turkish metropolis 60-36 in their final round.

Tokyo will now host the Games for a second time since 1964 while Istanbul, hoping the IOC would again go to uncharted waters after giving the 2016 Olympics to Brazil’s Rio de Janeiro and to South America for the first time, leave empty handed.
“All three bids were strong bids,” IOC Executive Board member John Coates told Reuters. “But Tokyo’s bid was very, very good for athletes, the concentration of venues there is very good.”

COMMERCIAL APPEAL

“It was also good for the Olympic movement because much of our commercial support is in Asia,” he said.
Coates also hinted the conflict in neighbouring Syria had been on the IOC members’ minds.

“We also had the geopolitical uncertainties which Istanbul addressed really well,” said the Australian.
Asked whether delays in preparations for the Rio Games may have alarmed members and could have swung votes in favour of Tokyo’s solid bid, Coates said: “I may have heard that.”

Tokyo’s compact bid has estimated a non-Games budget of around $4.4 billion compared to $3.4 billion for the actual event.
Istanbul’s proposal had a total cost of $19 billion, making it more ambitious but also risky given the country’s lack of experience in staging major sports events.

Influential IOC member Sheikh Ahmad Al-Fahad Al-Sabah, who also heads the Olympic solidarity fund and is president of the Association of national Olympic committees, said it was exactly the Rio delays that swung the vote in Tokyo’s favour.
The Brazilian city is under mounting pressure to speed up preparations, with the IOC obviously unwilling to repeat such an experiment in 2020.

“I think it was more the commitment to the file,” he told Reuters. “It was this commitment that was important. The problems with Rio played a role in this decision.”

For the IOC it was a return to the most populous continent of the world and its vast commercial potential.
“It was once more a decision between two principles,” said IOC Vice President Thomas Bach.

“There you have one candidature addressing more the sense of tradition and stability and another candidature addresses the longing for new shores.”
“This we have seen in the past also with different bids and this times the IOC members – in a fragile world – have decided in favour of tradition and stability.” (Editing by Ian Ransom)

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