国民生活センターの機能縮小案に思う

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相談する女性

先日、約2年前に起こった耐震強度偽装事件の教訓が全く生かされていないような記事がひっそりと読売新聞の家庭面に掲載されていた。


今度の舞台は国民生活センター、ここは1970年に特殊法人として設立され、2003年から独立行政法人になったところで、言うまでもなく消費者保護行政の隠れた主役である。

現在では職員数は約110人、相談調査部、商品テスト部など7部4課5室1館で構成され、東京都港区高輪に相談調査部などが、神奈川県相模原市に商品テスト部の施設があるが、今年度の予算は35億4700万円、必ずしも多いとは言えない規模だ。

そして、その国民生活センターは先月、内閣府の私的懇談会「国民生活センターの在り方等に関する検討会」の最終報告により、業務縮小方針が示されたと、読売新聞は報じている。

「小さな政府論」を標榜する人たちに言わせれば、行政改革の一環であり、聖域なしになるのは当然とまで言い切るだろうが、これは全くのお門違いだ。

小泉政権が推進した規制緩和政策、これ自体の方向性は間違ってはいないが、これを推進することはレフェリー役(の役人)が今まで以上に必要となるということを意味する。
そうしなければ、ルールを守らせるための監視が緩くなり、結果的に消費者がバカを見るからだ。

要するに、規制緩和とともに実施すべき行政改革とは、手取り足取り行政の官庁をスクラップし、レフェリー官庁を充実させないといけないということが全く認識されていない。
と、言うかわざとそうしているとしか思えないフシもある。

つまり、官はすべて不要と切り捨てにかかった小泉・竹中コンビを私がペテン師だと言ったのはこういう理由によるものだ(2005年8月27日「今日の一言」

そして、2005年11月から翌1月頃にかけて「きっこのブログ」で一大トピックになった耐震強度偽造事件と同じ図式となりそうなことが国民生活センターでも起きようとしている。

つまり、耐震偽装がなぜ起きたかと言えば、レフェリー役が官から民になり、その結果、不動産業界関係者が胴元とレフェリーを兼ねた八百長をやっていたからだ。
耐震強度偽装事件に関してどの程度八百長が行なわれていたかは彼女のブログに詳しく載っているので参考にするといい。

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<耐震強度偽装事件に関する「きっこのブログ」記事一覧>

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この悪夢の歴史がまた繰り返されようとしている。

読売新聞は、「全国消費者団体連絡会事務局長の神田敏子さんは「製品事故が相次ぐ中、国民生活センターの原因究明機能への期待はますます高まっている。現段階で、他の機関がどの程度まで消費者の視点に立ったテストを実施できるか分からず、不安だ」と話す。委託先には産業技術総合研究所や各種の試験研究機関などが挙がっている。しかし、これらの機関は企業からの検査依頼も受けており、消費者の誤使用などを想定した柔軟な検査ができるのかといった指摘もある。」と書いている。

つまり、企業の製品に欠陥があるかないかをテストする検査機関が外部委託されるようだが、その機関が企業の紐付きでない保証はどこにもない、ということを暗に言っているようなものだ。

仮に紐付きでないとすれば、原資は税金なのだから何も組織を複雑化させる必要は全くない。
耐震強度偽装事件で一番問題になったのは検査機関が業者の紐付きであったことなのだから、政府当局者は全く歴史に学んでいないということになる。

はっきり言って「バカ」である。
そうでなければ、やはり「国民にとって重要で権力者の邪魔になるところから」整理縮小するのであろう。

違うというのであれば説明してもらいたいものだ。
あれだけ問題のあるNHK(特殊法人)はなぜ民営化の論議にさえならないのか。

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どうなる国民生活センター (2007.10.6-7 読売新聞家庭欄)

■「縮小前提」改革に異論

消費者被害の解決に取り組んできた国民生活センターの改革案に異論が続出している。

一般消費者からの直接相談の廃止、商品テストの大幅な外部委託化など、業務の縮小が盛り込まれたからだ。
製品事故や消費者トラブルが相次ぐ中、同センターの役割が問われている。

内閣府の私的懇談会「国民生活センターの在り方等に関する検討会」(座長・野村豊弘学習院大教授)が先月25日、東京都内で開かれた。
最終報告案について協議が行われたが、検討会委員の間から相次いで異論が出され、この日予定されていた最終報告の公表が延期となった。

異論が相次いだのは、消費者からの相談を直接受け付ける制度の廃止と、製品事故の原因などを調べる商品テストの大幅な外部委託化についてだった。
同委員で埼玉大学非常勤講師の原早苗さんは「センターは消費者の駆け込み寺的な存在。直接相談の廃止などの業務縮小は、センターから現場感覚を失われてしまう」と指摘する。

しかし、2日後に公表された最終報告も、業務縮小の方針は変わらなかった。
内閣府が一貫して業務縮小にこだわるのは、政府が現在、独立行政法人の整理合理化計画を策定しているためだ。

すべての独立行政法人の事業をゼロから見直し、年内には同計画を閣議決定
する。
同センターも例外ではない。

内閣府の担当者は「消費者行政を充実させたいという要望はよく分かる。一方で、国の財政も厳しい。板挟みの状態」と打ち明ける。

同委員で弁護士の山口広さんは「消費者行政への期待が強まっているのに、そもそも予算削減ありきの中で、センターの役割を検討することに無理がある。独立行政法人の整理合理化の一環として業務の効率化を優先するのはおかしい」と話す。

今回の検討会は、今年4月から始まり、計9回の協議を重ねてきた。
もともとは、来年度から始まる同センターの次期中期計画づくりに向け、同センターの業務内容を検討することが目的だった。
製品事故や消費者トラブルが相次ぎ、同センターの機能強化を求める声は強い。

今回の最終報告では、裁判以外の方法で民事紛争を解決する「裁判外紛争解決手続き(ADR)機関」としての役割を同センターに持たせることになった。
同センターは、消費者から苦情相談を受けた場合、事業者とのあっせんを行ってきた。

しかし、現行の国民生活センター法には、あっせん行為は明文化されておらず、事業者が話し合いを拒絶した場合、その時点で解決の道は閉ざされていた。
同法を改正して法的な位置づけを明確にすることで、被害の救済と防止を図るという。

同センター理事の田口義明さんは「業務の効率化は必要なこと。最終報告を踏まえた改革を進めていきたい」と話す。
紛争解決機能と各地の消費生活センターヘの支援に重点を置いた活動をしていくという。
国民生活センターの今後の役割が注目される。

■商品テストも外部委託

東京都心から電車で約1時間。神奈川県相模原市に国民生活センターの商品テスト施設がある。
食品や家電などを調べる設備のほか、自動車の屋外走行テスト場もある。
ここでは地方の消費生活センターからの依頼や消費者の製品事故情報などをもとに、毎年約60件の商品テストを実施。性能や安全性、欠陥の原因究明などを行い、問題があれば結果を公表する。

「テストがきっかけとなり、国や業界団体、業者が安全対策や製品の改善に向けて動き出すことは多い」と商品テスト部職員は胸を張る。
窒息死の相次いだこんにゃく入りゼリーでは、業界団体が高齢者や子どもは「食べないで」と警告するマークを作成。
ヘナ配合の白髪染めでは、かぶれの原因となる化学物質を含むものもあるため、厚生労働省は使用前に必ずバッチテストをするよう促す注意書きの徹底を求めた。

商品テストは、かつて各地の消費生活センターでも盛んだったが、地方の財政悪化などのあおりを受け、年々減っている。
2007年の消費生活年報によると、2006年度に商品テストを実施したのは全国で25機関。2000年度の69機関に比べて大幅に減っている。
こうした事情を背景に、消費者団体からは、国民生活センターの商品テストを外部委託化することに対して反対の声が上がっている。

全国消費者団体連絡会事務局長の神田敏子さんは「製品事故が相次ぐ中、国民生活センターの原因究明機能への期待はますます高まっている。現段階で、他の機関がどの程度まで消費者の視点に立ったテストを実施できるか分からず、不安だ」と話す。

委託先には産業技術総合研究所や各種の試験研究機関などが挙がっている。
しかし、これらの機関は企業からの検査依頼も受けており、消費者の誤使用などを想定した柔軟な検査ができるのかといった指摘もある。

一方、同センターは、消費者から直接受ける相談業務を段階的に廃止する。
廃止により、深刻な消費者トラブルを早期発見する機能が低下するという見方もある。

同センター理事の田口義明さんは「消費者から電子メールで送られてくるトラブル情報は引き続き受け付けており、こうした生の声に触れることで、問題点を見いだす『センサー機能』は保てる」と説明する。しかし、「国民生活センターの在り方等に関する検討会」委員で、日本女子大非常勤講師の夷石(いせき)多賀子さんは「一方的に送られてくる文字情報だけでは限界がある。実際に消費者とやり取りする中から、重大な問題点が見えてくることは多い」と言う。

同センター改革の最終報告では、消費者問題を扱う中核的機関としての役割を求めているが、消費者の視点や現場感覚を失っては中核としての役割は担えない。
主婦連合会副会長の大河内美保さんは「地方の消費者行政が縮小される中、センターを頼りにしている消費者は多い。整理合理化の波に負けず、センター自身も自分たちの存在意義を、誇りを持って訴えてほしい」と話している。(竹之内知宣、板東玲子)

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最後に、私が今から3年前に書いたエッセイ「カルトとヤクザが支配する国」から、バブル以降の歴代の政治家の本音(裏)のメッセージを再度紹介したい。

これは当時の国政選挙であまりの棄権者の多さに私が皮肉を込めて送ったメッセージであるが、郵政選挙で小泉自民党が大勝した後の政治状況にも十分に当てはまることではなかろうか。

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今まで応援(棄権)をしてくれてありがとう。
(面白くないことはやらないのが一番ですよね。わかります。その気持ち・・・)
現在、私どもの政党とそのシンパが国政の最大勢力を維持できるのもあなた方の(怠慢)のおかげです。

政治みたいな難しいことは我々プロに任せていただければ(我々にとって)悪いようには致しません。
皆さんはもっと仕事を(死なない程度に)してたくさん稼いで(貢いで)ください。
できるならば国債も買って(金を貸して)いただくともっとありがたいのです。(返せないかもしれませんが)

いつも本当にありがとう。(あなた方は世界一の貢くんです。)
そうそう公務員もリストラ・・・あなた方の言うこともっともですよね。
(検察庁・国税庁・裁判所・公正取引委員会・会計検査院・・・あんなに人いらないですよね。そうすれば私たちに噛み付こうなんて不届きな役人も出ないでしょうから)
さすがです。役人ももちろん減らしますよ~(国民にとって重要で我々の邪魔になるところから)

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