ふるさと納税制度は曲がり角に来ているのか

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佐賀県藤津郡太良町ふるさと納税お礼品
すっかり忘れそうになっていた今年のふるさと納税、もう12月なので、第一弾とかいう季節ではないのだが、申し込み時点で越年が決定しているものがあり、とりあえず年内に届いたのは佐賀県藤津郡太良町の田嶋農園産の海藻ミネラルみかんだった。

冬と言えば、「炬燵でみかん!」と言うくらいみかんが好きな私の家族が選んだのがこれなのだ。
ここ10年くらい、私はテレビはほとんど見ないのだが、炬燵に入ってテレビを見ながら正月を過ごすには最適な果物だ。

もっとも、「1年の計は元旦にあり」を実践されている方々は、もっと有意義な休日を過ごしていると思う。(笑)
ふるさと納税は、地方税法等の一部を改正する法律(平成20年4月30日法律第21号)によって、2008年(平成20年)から始まった制度なのだが、来年で発足10周年、お得感溢れる制度として定着した感があるが、一方では「2016年3月19日 ウェッジ-地方をダメにするふるさと納税の不都合な真実」や、「2016年6月14日 NHK時論公論-急増! ふるさと納税を問う」といった弊害も指摘されている。

ただ、こうした弊害は数年前から指摘されていて(2014年12月21日-ふるさと納税制度の拡充と税申告簡素化は地方創生に繋がるのか)、それが大きくなったのは、地方税法等の一部を改正する法律(平成27年3月31日法律第2号)によって、2015年分から始まった「特例控除額の拡充(個人住民税のふるさと納税に係る特例控除額の上限を所得割額の1割から2割に拡充)」と、「申告手続の簡素化(「ふるさと納税ワンストップ特例」の創設/確定申告が不要な給与所得者等がふるさと納税を行う場合に、確定申告をせずにワンストップで寄附金税額控除を受けられる特例を創設)」によるものだろう。

つまり、高額納税者のお得感がさらに増したことに加え、給与収入しかないサラリーマンの「面倒くさい」を助ける制度になったことで、都市部からの税収の流出が加速したというわけだ。

私が思うに、この制度の一番の勝ち組は、ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」を運営する「株式会社トラストバンク」(2012年4月2日設立)の代表取締役社長・須永珠代氏だろう。

私が2015年5月15日付のコラム「2015年のふるさと納税第二弾は三重県多気町の松阪牛」で書いたように、この会社は各自治体から半公的機関のように扱われていて、実際に自治体のウェブサイトからふるさと納税しようとすると、「ふるさとチョイス」に繋がることは数知れない。

仮に、このふるさと納税制度に規制がかかり下火になったとしても、全国の自治体とのコネクションは計り知れない大きな財産だし、次なる事業のステップに十分使うことができるだろう。

一方、負け組は都市部の自治体で、2016年8月15日付のイザは「ふるさと納税、分かれる明暗・・・『出ていく方が多い』自治体悲鳴」という記事を配信し、2017年1月10日付のブルームバーグは「ふるさと納税で割食う都市部-世田谷区の税控除は保育園5つ分に」、2017年9月20日付の週刊朝日では「1位は!? ふるさと納税“損している自治体”ランキング」が掲載された。

それゆえ、危機感を抱いた都市部の自治体は政府に対し、ふるさと納税制度の見直しについての要望書を出し始めた。(2017年3月13日 東京都特別区長会-「ふるさと納税」に関する要望書を提出しました。

総務省では、ふるさと納税の返礼品を寄付額の3割以下に抑えるよう地方自治体に要請したが、2年前に改正した法律の一部である「特例控除額の拡充(個人住民税のふるさと納税に係る特例控除額の上限を所得割額の1割から2割に拡充)」を元に戻せばいいだけではないかと思ったのは私だけだろうか。(2017年4月3日 総務省-ふるさと納税に係る返礼品の送付等について

いずれにせよ、今や返礼品競争が激化したふるさと納税制度は、曲がり角に来ていると言えるだろう。

ところで、都市部の自治体はふるさと納税が住民税減収の原因であるとのアピールをしているが、もっと根本的な問題があることを総務省に指摘しないのだろうか。

それは、今や個人住民税の賦課徴収の構造的欠陥とも言える前年所得課税方式(地方税法第32条、第313条/個人住民税の所得割の課税標準を前年の所得について算定する規定)で、国民の所得が右肩上がりだった高度成長時代は理にかなった制度だったものが、今や住民税の滞納の最たる原因になっている。

要するに、住民税は前年の所得に応じて課税されるため、退職などによって収入が減ったところへ、前年の所得に応じて計算された住民税の請求が来るために、支払いに困窮する人も多く、滞納分の徴収に係る地方自治体のコストもバカにならない。

こうした結果、政府はザルの穴を防ぐより、安易な増税策で減収分を補おうとするから始末に負えないし、連鎖的に住民税額に比例する国民健康保険料(税)の滞納も増えているという。

それを現年課税、つまり所得税と同じにすることが総務省の個人住民税検討会で議論された形跡があるのだが(平成28年度検討会第1回、第2回-資料6)、法改正などの動きは遅々としてほとんど進んでいないようだ。

いったい何年かかったら法改正に着手できるのだろうか。
基本的に法改正は立法府の仕事、これをお読みになった方は、有権者の一員として野田聖子総務大臣と、各自の選挙区の国会議員に意見を伝えるべきだと思う。

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