日本政府は従軍慰安婦問題を解決する気がないのか

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靖国神社

日韓の外交関係を語るときに常に棘のように刺さっている問題の一つが従軍慰安婦問題だ。

日本と韓国との戦後補償問題は、政治的に解決済(財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定)(参考:外務省条約検索)にもかかわらず、韓国は日本に対して誠意がないと言い続けている。

右派の論客に言わせれば、断交を含めた毅然とした態度を取らないからいけないとのことだが、日本政府の態度は未だに謝罪外交の余韻を引きずり、煮え切らないことが多いように思える。

まして、現在の岸田文雄首相は、安倍政権下の外相時代に「岸田外相、慰安婦問題『終止符打った』 日韓合意」(2015年12月28日 日経新聞)と報じられたものの、結果的には10億円を韓国に詐取されたような形で、今日に至っている。

従軍慰安婦の性奴隷説を否定したラムザイヤー論文

エンパイアステートビルからの眺め

2021年1月12日付で、ハーバード・ロー・スクール教授のマーク・ラムザイヤー氏(John Mark Ramseyer)によるRecovering the Truth about the Comfort Women (PDF)(従軍慰安婦に関する真実の回復)という論文が発表された。

これを受けて、産経新聞が2021年1月28日付で「世界に広まる『慰安婦=性奴隷』説を否定 米ハーバード大J・マーク・ラムザイヤー教授が学術論文発表」と報じ、JBPressが2月14日付で「性奴隷説を否定した米論文にぐうの音も出ない韓国」と、続いて、17日には「慰安婦は性奴隷ではないと理詰めで語る米論文の中身」と掲載した。

JBPressの記事には、ラムザイヤー論文の内容は、韓国が日本に対して主張する性奴隷説を根本から覆すものであり、韓国では論文に反論できないと見るや、教授の人格攻撃をしたと書かれている。
つまり、彼の論文が正鵠を得ていたということの証左であろう。

ここで思い出すのは、2014年6月1日付で「従軍慰安婦とは単なる韓国人売春婦の証拠を入手-グレンデール市慰安婦像撤去裁判の原告団体(GAHT)に寄付」でも紹介したように、かつては、テキサス親父ことトニー・マラーノ(Tony Marano)氏が、日韓の従軍慰安婦問題について、日本の強力な援軍だったことだ。

ところで、彼ら米国人がやってくれた仕事は、本来、日本政府(外務省)と政権与党である自民党の仕事であり、少なくとも、米国人協力者の仕事に対して、それを外交に生かすようにするのが務めだと思うのだが、日本政府が韓国に対して、毅然として対応したという実績はあるのだろうか。

私でさえ、従軍慰安婦が性奴隷ではないという証拠の一つ、「Report No 49: Japanese Prisoners of War Interrogation」(日本語訳はテキサス親父日本事務局のウェブサイトから)をアメリカ公文書記録管理局(NARA/National Archives and Records Administration)から取り寄せられたのだから、政府や与党のスタッフができないはずがないのだ。

私は、2022年1月14日付の産経新聞が「ラムザイヤー教授が批判に反論 強制連行に証拠なし」と報じたように、韓国からの執拗な批判の矛先が教授に向かうのを見て、それが自分たちに向かうのを恐れた政府や与党幹部が、ラムザイヤー論文に関して沈黙を決め込んだのではないかと思っている。

国会質問も驚きの少なさ

東京駅

ここで私は国会会議録から「ラムザイヤー」と入れて、どの程度、国会で論戦が繰り広げられたか確認しようと思った。
何しろ、日本のマスコミは産経新聞を除いて、どこの国のメディアかと思うくらいに、中国や韓国に不利な記事を掲載しないからだ。

そして、検索結果は第204回国会(2021年1月18日 – 2021年6月16日)のわずか2件だけだった。
3月22日の参議院文教科学委員会と、5月31日の参議院決算委員会で、質問者はいずれも有村治子自民党議員のみだった。

正直、自民党議員でさえ、ラムザイヤー論文に関して、これほどまでに無関心なのか、それに、参議院文教科学委員会の

日本と韓国は一九六五年に日韓請求権・経済協力協定を締結し、国交を正常化させました。両国がお互いに努力し、歩み寄り、十四年の歳月を掛けてやっと合意したこの協定において、慰安婦のことはどのように論じられ、いかに対応されているのでしょうか。

という有村氏の質問に対して、外務省の石月英雄アジア大洋州局参事官と、岡野正敬総合外交政策局長の答弁があるが、石月英雄氏(政府参考人)の

日韓国交正常化交渉関連文書の中に、南方占領地域慰安婦の預金、残置財産との記述が存在することは承知しております。
いずれにせよ、慰安婦問題を含めて、日韓間の財産請求権の問題は、この交渉の結果締結された一九六五年の日韓請求権・経済協力協定で完全かつ最終的に解決済みでございます。

との答弁は、日本の歴代の首相、外相が韓国に対してもしていることは私も承知している。

しかしながら、韓国がかつての独裁国のリーダー(今でも日本以外は?)のように「約束は破るためにある」というメンタリティを持っている以上、別のアプローチを行う必要があるのではなかろうか。
そういった意味で、ラムザイヤー論文は有効な反撃のツールになり得ると思うのだが、日本政府はそういったことをするのに及び腰だ。

5月31日の参議院決算委員会では、茂木敏充外務大臣が答弁しているが、

対外発信の最前線であります在外公館の体制強化を図りつつ、各国や地域ごとの特徴も踏まえて、例えば海外にあるコミュニティーでも、日本人コミュニティーは、もう百年以上たっていて、どちらかというと非常に結束が緩くなっていると、一方、例えば韓国のコミュニティーというのは、まだ五十年ぐらいでそういった結束があると、そういう特徴の違いもあるわけでありまして、そういった中で、オピニオンリーダーを始めとする様々な関係者に対して理解を深める取組を進めてきております。

従軍慰安婦問題に関して、韓国の理解など得られていないし、向こうも日本からお金を毟れるうちは、理解などする気もないということがわからないのだろうか。

いい加減、官僚の作った答弁書を棒読みするだけでなく、自分の言葉で話すようにしないと、韓国に対するアプローチは永遠に変わることがないだろう。

従軍慰安婦問題の最終解決策はあるのか

アシアナ航空574便

ところで、日本政府が従軍慰安婦問題解決に積極的にならない理由は、おそらく韓国の元従軍慰安婦と称する人の寿命が尽きるのをただ待っているのではないだろうか。
火中の栗を拾えるかとばかりに、永田町にはまるで官僚の世界のような事なかれ主義がまん延し、のらりくらりとやっていれば嵐は過ぎるとでも思っているのだろうか。

でも、それはあまりにも甘すぎるような気がしてならない。
なぜなら、かの国の犠牲者を名乗る人間は、次第に少なくなっていくという自然の摂理に逆らって、次々に出てくるからだ。

2022年1月31日付のダークネスで、鈴木傾城氏は「本当の効果のある歴史戦とは韓国に反論することではない。韓国との関係を断つことである」というコラムを書いている。

鈴木傾城氏は、岸田文雄首相に韓国との断交を勧めたいと結んでいるが、私は外相時代に10億円をむざむざ毟り取られて何も反撃しなかった岸田首相には何も期待していない。
従って、私は、ラムザイヤー教授の論文(英語)を見つけたとき、これを和訳して意見書を首相官邸に送ろうかとも思ったが、彼の外相時代の不甲斐なさを思い出してやめることにした。

それに、私が2018年5月15日付で「将来の反日の芽となりかねない技能実習生という名の外国人奴隷たち」と書いた外国人の特定技能資格者については、2021年7月2日付の東京新聞が「『搾取』の汚名負った外国人技能実習制度 米国務省の人身売買報告書が指摘」と報じているが、米国務省からは毎年のように指摘があるに違いない。(2021年人身取引報告書 英文:2021 Trafficking in Persons Report: Japan

それゆえに、日本政府が韓国との間に横たわる諸問題の根本的な解決ができない一因になっているような気がしてならない。
要するに、21世紀でさえ日本が人身売買まがいのことをやっているなら、帝国主義時代(戦前)は間違いなくやっていただろうという論理で、裏から攻め立てられている可能性も否定できないのだ。

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