去る5月23日、NHKのクローズアップ現代で「追跡“臓器あっせん事件” 知られざる渡航移植の実態」という番組が放映された。
19時30分からわずか30分足らずの番組だったので、それほど深堀りできないだろうなとは思っていたが、私に言わせれば、すでに読売新聞などで報道されている記事の後追いといった感じが強かった。
出演していたのは、実名でメディアに告発を続ける小沢克年さん、私が「高橋幸春レポートに見るキルギス腎移植の真実」というコラムでも紹介した関西在住の女性Mさん、そして、Kさん(キルギス渡航時はNPOのコーディネーター、菊池氏の元部下)の3人、最後に出ていた男性は私の知らない人だった。
報道自体は目新しいものはなく、また、私を含めて少なくない患者が、リスクを冒して海外渡航している理由が、国内におけるドナー不足であることは事実なのだが、それを増やすために政府や関係者がすべきことは何であるかの突っ込みが欲しかったところだ。
最後に韓国の事例が紹介され、かの国では脳死患者が発生した時にあっせん機関への報告が義務化されており、日本の10倍もの臓器提供があるとのことだ。
これは法改正をすれば、今すぐにでもできることなのだから早急に実施してもらいたいものだ。
私は2021年10月7日付で「人工透析が廉価で受けられるという恩恵はいつまで続くのか」というコラムを書いた。
関連業界が2兆円産業と言われる透析利権にどっぷりと浸かり、一方で、30万人を超える透析患者も、フリーランチ(容易にありつける利益)の恩恵を受け続ける。
そういったことを続けていれば、ひっ迫する健保財政、引いては国家財政も大きな影響を受けるだろう。
私としては、人工透析を離脱するための手段の一つである、死体腎移植(第三者からの臓器提供)の方法が今のような心細いものでなく、例えば、生命保険や損害保険の特約条項に加えられ、70歳以下の死亡の場合は、臓器提供の謝礼金(保険金の上乗せ)と引き換えに、スムーズな提供がされるような制度ができることを願ってやまない。
今の透析患者が少しでも腎移植によって健康な身体を取り戻せば、彼らは担税力を持った労働生産人口に加わることができる。(すでに高齢者になっている人は無理だろうが)
年間1,000万円近い国費を透析患者のために費やしているのなら、その数年分で移植ができるのだ。
一方で、私が2004年2月29日付で掲載した「未来へのシナリオ」で紹介したピーター・タスカ(Peter Tasker)の「不機嫌な時代-JAPAN2020」、そこに書かれているシナリオが現実のものとならないことを私は祈りたい。
ピーター・タスカの描いたシナリオ-大逆転
■前提
はじめのうちカエルはゆっくりと煮える。やがて湯が煮立ちはじめるが、そのときにはカエルは狼狽のあまり逃げることができない。衰亡に向かっていることにみんなが気づけば、たいていはそれを食い止めるための手を打つことができる。ところが、きわめてゆっくりと衰亡に向かうとき、それは見えないところで進行する。
現状に満足し、リスクをきらい、混乱に直面しても受け身でこれにあたり、やがて、主要な機関・組織の中でアカウンタビリティとフィードバック機能が働かなくなる。衰退を阻止することにだれも直接的かつ強い関心を示さないから最悪のシナリオが現実のものになる。
再配分連盟側の連携が強すぎて身動きがとれないのである。(中略)
中村があてにしているのは、それとはちがった政府の施策-新しく導入された自発的尊厳死計画だ。
たとえば中村の母親のような80代はじめの女性の場合、奨励金としてかなりの額が免税で支給されることになっている。人生の最後の2年間に医療費の3分の1を使うとあれば、財政的に見てこれは大いに意味のあることなのだ。ただし、家族のためだからと、だれかが母親を説得しなければならない。これまで中村は、それを切り出す勇気がなかったが、ここ2年のあいだに、すでに一般家庭からかなりの申し込みがきているのだ。兄と父親と姪がいっしょになって状況を説明すれば、母親も納得するかもしれない。
そして、7年前、元フジテレビアナウンサーが自分のブログに透析患者について書き込んだ。(2016年9月25日 J-Cast News-長谷川豊氏、「人工透析」ブログの「真意」語る 全腎協の謝罪要求は「断固拒否」)
「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を滅ぼすだけだ!」
現実から目を背けていれば、私たち透析患者にとって最悪のシナリオが訪れるかもしれないのだ。
近い将来・・・
それを避けるためにも患者側から移植の促進を厚生労働省に訴えていく必要があると思うのだ。
コメント
facebookで告知されていたので、録画しておりました。
昨日見ました。
確かに突っ込みはあまり鋭くなかったかな。
ところで、カルロス氏には接触はなかったの?
私には取材の依頼は来なかったですよ。