私が患っている急速進行性糸球体腎炎に対する治療薬は、現代医学において存在しない。
それゆえに指定難病とされているわけだが、唯一の光明が腎移植となっている。
腎移植と言っても国内においては、親族から腎移植を受ける生体腎移植と、第三者から腎移植を受ける死体腎移植があるが、前者の場合は親族の同意、後者の場合は、10年単位で待たないといけない。
事実、私の知人も15年程度待ったというから、私にとっての15年後は70歳超である。
そして、私が取った第三の選択肢が、海外での腎移植の可能性を探ることだ。
要は、海外での腎移植、メディカルツーリズム(medical tourism)であり、日本語では医療観光とも訳されることがある。
海外腎移植体験者の手記
私が海外での腎移植の道を模索したとき、いわゆる体験談のようなものがないか探してみたが、それらしき腎移植体験者の情報はほとんどなかった。
海外腎移植をしている人は、それなりの社会的地位がある人が多いと言われており、それゆえに、書籍やインターネット上に体験談を出すことはまずないと思うからだ。
そのような中で、私が巡り合った書籍が、石渡英五氏の「腎臓移植・希望の選択―あるビジネスマンの闘病記録」だった。
1995年7月1日の出版なので、彼の情報が今でも役立つかと言われれば、疑問符がいくつも付くだろう。
しかしながら、彼がインターネットなき時代に、海外で腎移植ができた背景には、透析付きの海外旅行で訪れたハワイで、現地メディアを通して知った臓器移植の話を透析病院でぶつけたところ、移植実現まで漕ぎつけたという嘘のようなホントの話がある。
今でも透析付きの海外旅行で、石渡氏と同じようなことをすれば、キ・セ・キに巡り合うことは可能なのだろうか。
イスタンブール宣言は形骸化しているのか
石渡氏が英語に堪能だったことが、インターネットなき時代に、腎移植まで漕ぎつけられた背景にあるわけだが、今でもそれは十分すぎるほどに言えるのだ。
海外での臓器移植は、2008年に採択されたイスタンブール宣言(The Declaration of Istanbul)以降、困難になっていると言われる。
しかし、これが表向きのことなのは、グーグルなどの検索エンジンで、英語で「kidney transplant(腎移植)」とでも入れて、検索すれば明確にわかる。
事実、2019年1月18日付のDaily Sabahは、「Turkey rises as key organ transplant hub, draws many foreign patients(トルコは主要な臓器移植ハブとして台頭し、多くの外国人患者を引き付けている)」という記事を配信している。
イスタンブールはトルコの玄関口、イスタンブール宣言を採択したサミット会場が、今や医療ツーリズムのメッカなのだ。
そして、インドをベースにする医療ツーリズムのエージェント「Lyfboat」は、自国のみならず、トルコの病院にも外国人患者を紹介し続けている。
日本人の患者がこのエージェントにコンタクトを取って、すべてがうまくいくかは未知数だが、少なくとも英語が堪能であれば、アクセスすることはできる。
そうでなくとも、トルコの病院は、英語でダイレクトにコンタクトできるようにもなっている。
「best kidney transplant clinics Turkey」とでも入れれば、腎移植をやっている病院がいくつも出てくるし、費用の見積もりもしてくれる。
複数のウェブサイトで高評価が出ていれば、そこは間違いなく大丈夫なのではなかろうか。
もちろん、海外での医療は、2017年12月12日付で産経新聞が報じた「海外臓器移植、一部保険給付へ 1千万円程度 現在は全額自己負担」という一部の例外を除いて、保険が効かないため、それなりのお金が出せる人しか受けることはできない。
そして、日本での腎移植に関しては、10数年待ちと言われ、それまでに移植の限界年齢(概ね75歳)を迎えるか、お亡くなりになることを考えれば、お金で命を買えるかどうかは切実な悩みとなろう。
それゆえに、私は日本では数少ない海外移植エージェントとコンタクトを取り続けているのだ。
豚の腎臓移植成功は末期腎不全患者にとって朗報
2021年10月21日付のロイターは「U.S. surgeons successfully test pig kidney transplant in human patient(日本語版:ブタの腎臓をヒトへ、拒絶反応抑えて移植 米国で初成功)」という記事を配信した。
Wait times for a kidney average three-to-five years.
腎臓移植の待ち時間は平均で3-5年と言われる。The NYU kidney transplant experiment should pave the way for trials in patients with end-stage kidney failure, possibly in the next year or two, said Montgomery, himself a heart transplant recipient.
モンゴメリー博士は今回の移植実験で、1-2年のうちに末期の腎不全患者を対象とした臨床試験への道が開かれると述べた。
これが一般的に普及すれば、私も含めて、多くの末期腎不全の患者が救われるだろう。
しかし、私は思った。
アメリカで3-5年と言われる腎移植の待ち時間が、10数年に及ぶ日本は腎移植に関しては後進国だと・・・
もはや、日本における腎移植の進展が今以上に見込めないなら、私は、一日も早く、ブタの腎臓を人へというのが実現することを願っている。
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