ポスト平成時代の主婦は年収150万円の節税パートタイマーを目指せ

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働く女性

今まで専業主婦の方がパートタイムやアルバイトをするときに考える最も重要なことは、所得税法上、及び社会保険の被扶養者を外されない程度の収入を得るということだった。

所得税法上の上限は、給与収入103万円(給与所得控除65万円を差し引いた合計所得金額が38万円)であり、社会保険でいえば年収130万円までに抑えることだった。(国税庁-配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか

雇用する側もそういった観点で女性を採用する傾向があり、それは年収の壁と言われて、年間を通じて働いている人は、年末が近づくと、年収が基準を超えないように出勤日数を調整することも多かった。

特に、社会保険料が自己負担(国民健康保険・国民年金の第1号被保険者)になることは、最も避けなければならないことであり、夫の被扶養者を外れて、自分で保険料を払っても被扶養者のときと同じ利益しか得られないのであれば、なおさらだった。

それが大きく変わったのは、2016年(平成28年)10月から社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象が広がって、パートタイマーでも働いている事業所の規模や、そこで働く労働時間数によっては、自己名義で社会保険に加入させられるようになったからだ。(厚生労働省-平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています! 2017年5月10日 政府広報オンライン-パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象が広がっています。

そして、今年(2018年/平成30年)以降から所得税法上の配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しが行われ、世帯主(主に夫)の年収が900万円以下の場合、被扶養配偶者(主に妻)の給与収入が150万円以下(合計所得金額が85万円以下)であれば、配偶者控除又は配偶者特別控除による最大控除額の38万円が受けられるようになったのだ。(平成29年4月 源泉所得税改正のあらまし

従って、被扶養配偶者(主に妻)が就業先で社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用を受けた場合は、給与収入(年収)が150万円になるまで働いても、世帯主(主に夫)にとって所得税法上の損はないということになる。

なお、この見直しは、2019年度(来年度/新元号の元年度)以降の地方税(個人住民税)にも及ぶので、詳しくは、総務省の税制改正(地方税)-平成29年度税制改正-地方税法及び航空機燃料譲与税法の一部を改正する法律(平成29年法律第2号)の概要か、各市区町村のウェブサイトをご覧いただくといいだろう。
ところで、私が表題に「年収150万円の節税パートタイマーを目指せ」と付けたのには理由がある。

今年の年末調整(来年の確定申告)から、被扶養配偶者(主に妻)の給与収入が150万円以下(合計所得金額が85万円以下)であれば、世帯主(主に夫)の配偶者控除又は配偶者特別控除が満額取れることは前述のとおりだが、下表のようにご自身には所得税、住民税もかかるので、月間労働時間が35時間(年間で420時間)も増えたにもかかわらず、住民税を含めた実質手取り年収は147,587円しか増えておらず、これを年間総労働時間で割ると、時給換算で何と817円という効率の悪さである。

当たり前のことだが、これなら労働時間を増やさない方がマシという声が聞こえてくるだろう。(2018年6月13日 ダイヤモンド-パート主婦の悲しい現実、時給大幅アップでも年収が伸びない

そう、単に労働だけしかしなければ、政府に騙されたとなるのがオチなのだ。
そこで、やらなければならないのは、パートタイマーの主婦であっても節税だ。
私は個人型確定拠出年金(iDeco)に関して、「確定拠出年金(DC)口座で定期預金をすると年末にお年玉が貰えることを知っているか(2018年8月20日)」と、「ジンギスカン食べながら投資ネタ、iDeCo(個人型確定拠出年金)やるなら米国株型一択か(2018年7月28日)」というコラムを書いたが、いずれをやるにしろ、肝は救出金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となることだ。

仮に、月額10,000円を拠出したとしたら、年間で12万円、年収150万円の方の所得税率は5%なので、所得税還付金は6,000円増えることになる。
なお、下表の事例だと、所得税還付金の最大額は8,640円なので、特に節税だけが目的の定期預金コースの場合は、月額15,000円までにした方がいいだろう。

一方、住民税は収入にかかわらず、所得割が10%なので、単純計算で納付税額が12,000円減額されることになる。
ちなみに、夫が妻のために拠出した資金は、社会保険料控除と違って、所得控除の対象にならないので注意が必要だ。

これからの時代は、夫婦で金融資産を持った方がいい。
夫が多忙ならば、妻が自分名義の口座を持つことによって、資産運用のサポートができるよう勉強する気になるだろう。

また、離婚という予期せぬリスクに備えるためにも、自分名義の資産(公的年金を含む)を確保することをやっておいた方がいいと思う。

ポスト平成時代は、専業主婦という立場であっても、最大限、できることはやっておくというのが必要となる時代なのだ。

結果的にどうすればいいのかというと、大企業(従業員501人以上)や官公庁のパートタイマーの場合は、本人が社会保険の適用を受けることが多くなっているので、年収150万円を目途に、あるいは共稼ぎという観点で、それ以上の収入を狙い、本人が社会保険の適用を受ける可能性が低い中小事業所(従業員500人以下)の場合は、夫の社会保険の被扶養者の範囲(年収130万円以下)に収まるレベルで働くのが得策と言えようか。

パートタイマーのモデル賃金(従業員501人以上・時給1,020円・通勤手当日額1,000円)
区分 A-完全被扶養者 B-年収150万円パート
労働日数 6時間×14日 7時間×17日
給与支給月額 85,680円 121,380円
通勤手当支給分 14,000円 17,000円
源泉所得税(扶養親族なし) 0円 720円
健康保険料(政府管掌・神奈川県・介護第2号) 0円 8,165円
厚生年金保険料 0円 12,993円
雇用保険料(一般の事業) 299円 415円
差引手取り月額 99,680円 116,087円
給与の支払金額(年額) 1,028,160円 1,456,560円
源泉徴収税額(年額) 0円 8,640円
社会保険料の金額(年額) 3,588円 258,876円
手取り年収(通勤手当を除く手取り月額×12) 1,024,572円 1,189,044円
年末調整又は確定申告による所得税還付金 0円 115円
翌年課税の住民税(横浜市・年額) 5,400円 22,400円
住民税を含めた実質手取り年収 1,019,172円 1,166,759円

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