日本政府に選択肢はあるのか

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苦悩する女性

8日イラクで日本人が3人(郡山総一郎さん、今井紀明さん、高遠菜穂子さん)武装ゲリラ「聖戦士旅団」(Mujahideen Brigades, the hitherto unknown Iraqi group called Saraya al-Mujahideen)に拘束され、日本政府はビデオ放映後3日以内に自衛隊を撤退させなければ人質を殺すと脅迫されている。(記事


しかしながら、小泉首相が言っているように「自衛隊の撤退」は人質に最悪の事態が生じようともあり得ないというのが非情なる現実でもある。
犯罪者に人質を取られたからと言って政策を変更すれば、日本国と日本人はそれこそ国際社会から永久に追放されることにもなりかねないからだ。

従って、家族の1人が「自衛隊の撤退が選択肢の中にないのは納得できない」というのは、家族の心情としては理解できても、国のトップとしては永久に選択できないことなのだ。

彼らの中でも唯一の女性である高遠さんは戦闘状態にあるイラクへボランティアとして出かけ、崇高なる使命感を持って現地の人たちと接していたという。
とてもじゃないが、私にはマネできないことだ。

しかし、彼ら3人はヨルダンのホテルで「ここ2~3日はバグダッドへ向かう陸路は危険度が増している」という忠告を振り切って向かったと報じられている。
別のルートの選択、あるいは勇気ある撤退という選択はできなかったのだろうかという悔いが残るところだ。

諸外国と違って、万が一のときに日本政府に法的、物理的に選択肢がないのは自明の理だからだ。
自衛隊が派遣されていても民間人の安全を守るのにそうした不備があることも前から指摘されていたことだ。

そもそも外国人が常に狙われているのは周知の事実だし、あまつさえ今月1日にはファルージャ(Fallujah)でアメリカの民間人の惨殺死体がさらされたとのニュース(Revulsion at Iraq bodies display)があったばかりではないか。

今回の事件に関し、見方を変えて、例えばゲリラが「自衛隊の撤退」を条件にしているのを、「1億ドルを出せ」というようになっていたらどうだろうか。
おそらく今、自衛隊を日本に返せと言っている市民グループや一部の識者の反応は全く違って、武装ゲリラを一斉に非難したに違いない。

そして、自分たちが自衛隊の手足を縛っているのを棚に上げて、何でイラクへ派遣された自衛隊が何もしないのだ、の大合唱になっただろう。

要は、武装ゲリラがこうした戦術を取り、人質の殺害に猶予を与えたのは、人質を取って「自衛隊の撤退を条件」にすれば、日本の世論が武装ゲリラでなく、小泉首相を追い詰めて退陣させるだろうという計算、そしてうまくいけば身代金をゲットできるという計算があるのではないかという穿った見方もできるのだ。

今、日本政府は彼らの要求を拒否している。
悲しいことだが、予告がアラブ特有のはったりでなければ人質の命はあと2日程度しかない。

もし、彼らの声明通りに人質が処刑されたとき、おそらく小泉首相は退陣せざるを得ないだろう。
自衛隊(軍)を他国へ派遣する、あるいは撤退させるという最高度の政治判断はすべての国においてトップの権限と責任において行われる。

その説明がされない場合、その者は不適格とみなされて交替させるというのが民主主義国の原則だ。
もちろん、国民の投票基準において、それは第一級の優先度があるというのも常識なのだ。

しかし、日本国民は小泉首相がイラクへ自衛隊を派遣させることがわかっていながら、しかもその説明が不十分であるにもかかわらず昨年の総選挙で自民党に投票し、あるいは自ら選挙権を放棄した。
自衛隊をイラクへ行かせてはならないと思ったなら、そのほかの選択肢がどうであれ、自民党の反対勢力に投票しなければならない、というのは国際常識なのだ。

つまり、外国人には日本国民が自衛隊の派遣に同意したとみなされるのは当然のことだ。(Newsweek Japan 2004.2.4 PDF – 日本人が沈黙で認めたイラク派遣)
そういう論理からすると日本人のほとんどは政府の行動を非難する資格など最初からないのだ。

最後に、この緊急事態に際しても小泉首相は、民主党の提案したトップが陣頭指揮を取れるようにとの政治休戦(国会審議延期)の申し入れも人質との家族との面会も拒否したという。
日本人はこの「丸投げ」首相をいつまで支持するのか?

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