日本人サラリーマンが貧しくなった平成時代、経済復興のモデルはポルトガルにすべきか

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1943年4月20日 市民に貯蓄奨励を進める「移動講演隊」

1943年4月20日、市民に貯蓄奨励を進める「移動講演隊」 提供:朝日新聞

引用:朝日新聞

私は、2019年3月2日付の東洋経済の記事「日本人の給料がほとんど上がらない5つの要因」を読んで、これでは日銀の黒田総裁が目論むデフレ脱却など夢物語だと思った。
「1997年から2016年までの19年間で、先進7カ国のアメリカやドイツでも1割以上上昇しているにもかかわらず、日本は1割以上も下落している。」と書かれていたからだ。

21世紀になってから日本は給与所得が増えていない

落ち込む男性

今年の1月に、戦後最長景気になったと政府が喧伝しても、庶民にとっては景気回復が実感できず、日本経済が一向に上向いた気がしていないのはなぜだろうか。(2019年1月29日 日経新聞-景気回復「戦後最長の可能性」 1月の月例経済報告

その答えは、21世紀になってから日本人サラリーマンの実質賃金が上昇していないからだ。
それに加えて、サービス残業という無賃労働、これで幸せを感じろと言われても無理だというのは数字にも如実に表れている。

それゆえ、2018年2月21日に開催された衆議院予算委員会公聴会で、全労連の伊藤圭一雇用・労働法制局長は、1990年代後半以降、先進国で日本だけ賃金が上がっていないことは極めて深刻な事態だと意見陳述をした。

お手元の資料を1枚めくっていただきまして、資料の1というところに賃金に関するグラフを持ってまいりました。これは賃金の変動の推移を国際比較したものであります。

よく知られていることではありますけれども、日本の場合、平均賃金が過去最高に高かったのは1997年と言われております。それ以降、物価の変動も加味した実質の賃金の変動、これを見ておりますけれども、日本の場合はこの間ずっと抑制基調にある。消費者物価もデフレ基調で来たとは言われていますが、賃金の伸びがそれを下回ってきたということであります。現在におかれましては引き続き10%下回り、10%ポイントは満たないという状況であります。もとに戻らないという状況であります。

諸外国を見ますと、インフレ基調で物価は進んでおりましたけれども、賃金の上昇率はそれを上回っておりまして、ドイツ、アメリカを見ましても15%、16%増、フランス、イギリスを見ましても25%を超える実質賃金の上昇を見ているということであります。

これは殊さら賃金がうまくいっている国だけを並べているのではなく、OECD、多くの国の統計を発表しておりますけれども、実は日本だけこういう特異な状況にある、異常な状態にあるということをまず御認識いただきたいと思っております。

資料の第2、これは賃金の変動だけを見ておりますので、水準はどうかという御疑問もあるかと思います。これにつきまして、資料の2では、賃金の年収ベースでの推計、比較をしたものを出しております。

これはフルタイムに換算した場合ということになりますけれども、1997年、日本はOECDの平均よりも高い賃金水準を示しておりました。ドル表示でいいまして36,249ドルということが購買力平価換算で比較できております。これが、2015年になりますと位置が下がります。実額としても、ドルベースで見て35,780ドルと下がっております。

先ほど、実質賃金の変化、これは名目賃金も下がってきたということでありますが、そこからもわかるとおり、唯一実額として労働者の収入が落ちているというのが日本だということです。これは経済政策を考える上においても極めて深刻な事態だと私は思います。

この全労連の伊藤氏が衆議院の公聴会で公表した資料の元データは、OECD Average Annual wagesという表からデータを抽出しているのだが、私は、これに加えて、ここ数年は経済運営がうまくいっていない韓国、PIIGS(ユーロ圏で財政基盤の弱いポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの頭文字)の一角、ポルトガルも加えて最新データを掲載してみた。

基本的には2000年以降のデータ表示になっているが、Timeというところをクリックすると、さらに古いデータを表示することができる。

なお、1990年のデータに関してない国があるので、ドイツは1991年(*)、ギリシャとポルトガルは1995年(**)で記載した。

  • Current prices in NCU(現地通貨建て名目賃金、NCUはNational Currency Unitの略)
  • 2017 constant prices and NCU(2017年基準の現地通貨建て実質賃金)
  • In 2017 constant prices at 2017 USD PPPs(2017年基準の米ドル建て実質購買力平価)
  • In 2017 constant prices at 2017 USD exchange rates(2017年の米ドル為替レートで計算した実質賃金)

とりあえず、比較できる最古のデータは1990年、この年は日本が世界第二位の経済大国として輝いていた時代、ここから今までどの程度、従業員の賃金レベルが上昇してきたか比べてみた。
FX rateは2017年の現地通貨の対米ドル為替レートなので、表の数値に係数をかけると、現地通貨建ての価格が出る。

国名米ドル建換算価格1990年2000年2017年
Australia年間実質賃金US$46,013US$53,563US$61,620
FX rate: 1.3購買力平価(PPPs)US$36,683US$42,702US$49,126
Canada年間実質賃金US$36,060US$40,414US$50.033
FX rate: 1.3購買力平価(PPPs)US$34,322US$38,467US$47,622
Denmark年間実質賃金US$48,356US$53,228US$65,674
FX rate: 6.6購買力平価(PPPs)US$37,895US$41,713US$51,466
France年間実質賃金US$31,661US$35,223US$42,410
FX rate: 0.89購買力平価(PPPs)US$32,666US$36,341US$43,755
Germany年間実質賃金US$34,462 (*)US$39,129US$44,466
FX rate: 0.89購買力平価(PPPs)US$36,879 (*)US$41,873US$47,585
Greece年間実質賃金US$17,306 (**)US$20,344US$19,542
FX rate: 0.89購買力平価(PPPs)US$23,081 (**)US$27,133US$26,064
Italy年間実質賃金US$32,085US$32,460US$32,931
FX rate: 0.89購買力平価(PPPs)US$35,716US$36,134US$36,658
Japan年間実質賃金US$36,699US$38,349US$38,234
FX rate: 112.2購買力平価(PPPs)US$39,222US$40,986US$40,863
Korea年間実質賃金US$18,363US$24,118US$31,390
FX rate: 1130.7購買力平価(PPPs)US$20,586US$27,039US$35,191
Portugal年間実質賃金US$17,688 (**)US$19,980US$19,210
FX rate: 0.89購買力平価(PPPs)US$23,357 (**)US$26,383US$25,367
Sweden年間実質賃金US$31,729US$37,178US$47,783
FX rate: 8.55購買力平価(PPPs)US$28,150US$32,984US$42,393
UK年間実質賃金US$31,839US$39,460US$45,280
FX rate: 0.78購買力平価(PPPs)US$30750US$38,110US$43,732
USA年間実質賃金US$44,721US$52,801US$60,558
FX rate: 1.0購買力平価(PPPs)US$44,721US$52,801US$60,558

いかがだろうか。
2000年から2017年の賃金推移を見ると、マイナスになっているのは日本のほかに、PIIGS(ユーロ圏で財政基盤の弱いポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの頭文字)の一角であるギリシャとポルトガルだけだ。

まして、ギリシャは2011年に経済危機に見舞われて、ユーロから離脱するのではないかと言われていたほど、ポルトガルも2011年に財政危機に陥った国だ。
一方の日本は、21世紀になってから二度も景気拡大期があったのではないのか。
日本のサラリーマンは、この事実をおかしいと思わないのだろうか。

21世紀の日本では、労働所得に依存し続けることが、最もバカげた人生の選択肢であることを知ることが重要なのだ。

日経連の「新時代の『日本的経営』」はサラリーマン受難の序曲

頭を抱えるビジネスマン

私は、1995年のサラリーマン賃下げ元年とも呼ぶべき、日経連(現経団連)の雇用政策の転換は、21世紀の日本の経営者にとってマリファナのような効果を与えたと思っている。

このとき、日経連(現経団連)は「新時代の日本的経営」というリポートを発表し、今までの正社員を中心とした雇用をやめる方針に転換したのだが、将来の幹部侯補生である正規雇用である正社員、高度な特殊技能を持つ有期契約社員、マニュアル通りに働くだけの派遣社員やアルパイトというものに分離し、その上で効率最優先の能力主義を徹底すべしと書かれていた。

このときに書かれていた有期契約雇用(非正規雇用)の意味が、高度専門能力活用型よりも雇用柔軟型の方へシフトし、おまけに、それが新たな身分制度(サラリーマン・カースト)となってしまったのだ。

ただでさえ、人口構成が危機を帯びていたときに、日本のサラリーマンの収入や、それから派生する税収や社会保険料といったものの減少を招いたことが、政府の累積赤字を増大させた一因になったことは言うまでもないだろう。

日経連「新時代の『日本的経営』」(1995年5月)

カテゴリー「長期蓄積能力活用型」「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」
雇用形態期間の定めのない雇用契約有期雇用契約有期雇用契約
対象管理職・総合職・
技能部門の基幹職
専門部門
(企画、営業、研究開発等)
一般職
技能部門
販売部門
賃金月給制か年俸制
職能給
昇給制度
年俸制
業績給
昇給無し
時間給制
職務給
昇給無し
賞与定率+業績スライド成果配分定率
退職金・年金ポイント制なしなし
昇進・昇格役職昇進
職能資格昇進
業績評価上位職務への転換
福祉施策生涯総合施策生活援護施策生活援護施策

それから2年経過し、1997年4月に橋本内閣が実施した消費税率アップ(3%→5%)や、同年11月の大手金融機関の破綻なども相俟って、家計支出が慎重になり始め、2013年6月3日付の大和総研グループ「1998年を節目とした日本経済の変貌」に書かれているように、21世紀になると企業業績の回復とは裏腹に、日本の家計支出は坂道を転げ落ちるように凋落してしまったわけだ。

つまり、21世紀における日本の企業業績の回復は、「正規雇用者の減少とその賃金の低下、一方で賃金水準は上昇しても格段に水準の低いままの非正規雇用者の増加、結果としてのトータルの雇用者報酬の減少」によってもたらされたわけで、素直に日本企業の業績回復を喜べない事情がここにあるわけだ。

奥田碩経団連会長発言と顧みられなかった杉村太蔵議員の国会質疑

苦悩する女性

厚生労働省は「2040年を展望した社会保障・働き方改革」の一環で、就職氷河期世代活躍支援プランを策上している。
しかしながら、岩盤のような日本企業の新卒至上主義の採用方針が崩れない限り、こういった政策のすべては水泡に帰すだろう。

ひと昔前、2006年7月24日号の日経ビジネスの記事「奥田碩が日本を斬る『アジアの盟主?品格も力量もないよ』」で、当時の経団連会長であった奥田碩氏(トヨタ自動車会長)は、「労働者不足解消のためにフリーターの活用など滑稽千万、女性、高齢者とか頭数だけいればいいわけではない。」と述べ、「外国人が隣家にいて嫌だとか言っている場合ではない。」として、外国人労働者の早期受け入れを主張していた。

これはトヨタ自動車だけでなく、多くの日系企業経営者の本音だったのだろう。
人材を活用して収益を上げるという視点でなく、経費節減至上主義と言うべきか、日本の大企業経営者のほとんどが、彼と同じように考えていたのなら、21世紀になって、日本人の給与水準が下がる一方なのも納得できるだろう。

2015年8月10日、私は「杉村太蔵議員の国会質問から9年、新卒至上主義の就活環境は変わったのか」というコラムを掲載した。
そこで引用した彼の国会質問は、当時の若者の気持ちを代弁した素晴らしいものだと思っている。

今は、投資家の一人としていろいろなセミナーで名前を拝見する杉村氏だが、当時は小泉チルドレンの一員だった。
時系列から見れば、彼の国会質疑から約半年後に奥田碩経団連会長(当時)のインタビューが掲載されたわけである。

杉村氏の要請に対する答えは、経団連として全面拒否!けんもほろろ!というのが結果だった。
あのときに20代、30代で意欲もあった人たちは、今や40代の中年フリーターとなっていることだろう。

このままいけば、彼らは日本経済の担い手でなく、生活保護など社会に扶養される立場に転落するのも時間の問題だろう。
そのとき、彼らは「自分が好きでそうなったんだろう」などという、言われなき非難を浴び続けるのであろうか。

最高益でも賃上げを拒む経営者と弱体化した労働組合

外国人ビジネスマン

2019年6月3日に財務総合政策研究所が発表した「法人企業統計調査」の2019年(平成31年)1~3月期の結果によると、企業が持つ利益剰余金は、金融業、保険業を除いた統計でも466兆7703億円になり、合算したものになると、529兆2204億円にも達している。

最近になって、私の知っている企業経営者も、日本企業がしこたま溜め込んだ内部留保の一部を従業員給与に回せば、日本人はもっと幸せになれると言っていた。
つまり、ほかの先進国の人たちと同じレベルの暮らしは、今でもできていると言っている。

しかし、日本の御用組合がそういうことを経営者に要求することはないだろう。
大企業の労働組合は、昭和時代から第二人事部でしかなく、その組織率すら落ちている。

結果的に、日本人が近代史というものを蔑ろにしないで、なぜ近代の欧州各国では労働組合というものができたか、なぜ労働者を守る法律があるのかを理解していれば、ここまで虐げられることはなかったのだ。

ただ単に知識を記憶させることしかさせなかった教育の弊害が、多くの日本人サラリーマンを貧しくさせているのは残念なことだ。

究極の話、Atusi氏が言う「日本から社畜が無くならないのは、企業と同じくらい労働者も悪い件」という風潮を作ったのは、1990年代の労働組合ではなかろうか。
そもそも、わずか千円程度の賃上げ(春闘)云々の前に、サービス残業根絶、過労死防止を掲げるのは、労組として当然だと思うのは私だけなのだろうか。

働く母(working mother)に冷酷な日本で子供を産めるのか

レッドカードを出す女性

2006年1月9日、私は少子化も人口減も止まらない理由というコラムを書いた。2005年7月31日に「女性と子どもの無言の抗議(silent protest)」というコラムを書いて、わずか半年後のことだった。

このときの書き出しが「少子化対策(政策)とは言うが、実際には何もやってないに等しい状態が10数年来ずっと続いている。なぜかと言えば、日本の中枢を司る支配階級(政官財=永田町・霞ヶ関・丸の内)の男たちは、本気で「少子化対策」を実行する気などさらさらないように思えるからだ。」というものだった。

それから、さらに一回り年月が経過しても、少子化対策に何の政策効果も上げられていないように見えるのは気のせいだろうか。

当時のコラムで私はこう書いた。

日本経済新聞社が出している「女たちが日本を変えていく」の中にもあるように、「働く母(working mother)」を支える政策が少子化対策として有効なものの一つとしてあげられている。

しかし、それは今まで企業中心主義の根幹をなしてきたポリシー、そして、それらを忠実に実行することが仕事中毒、会社人間と揶揄されながらも高度成長時代、そして経済大国に至るまでを担ってきたというサラリーマンの歴史を覆すようなコペルニクス的な発想の転換を必要としたからだ。

日本の中央官庁や民間企業のサラリーマンは、かつて景気が良かったときでさえ有給休暇を取るのに、上司や同僚に気兼ねしてなかなか取れないと言われた。

単に有給休暇の問題かという人もいるだろうが、それが気兼ねして取れないということは、「子供の健康を理由に休暇を取るリスクがある母親」を雇う、あるいは彼女たちを仕事のローテーションに組み込むことが困難であるということを意味する。

日本の市役所や旧西欧の会社で既婚女性が働きやすいと言われるのは、有給休暇の取りやすさと決して無縁ではないのだ。

インターネット空間では霞が関の別動隊が暗躍しているのか

2019年6月16日 日比谷で行われた「年金払え」デモ

2019年6月16日 日比谷で行われた「年金払え」デモ 提供:時事通信

去る6月16日、東京の日比谷で「『年金払え』デモに2000人」が行われた。
もはや、自助努力で2000万円と言われても、そんなことができるかというところにまで日本人は追い詰められているのだ。

ただ、私がちょっと変だなと思ったのは、このデモ参加者に対する批判が度を越えている気がしたのだ。
デモのきっかけは、麻生太郎金融相が、金融審議会の報告書を受け取らないとしたことだろう。
記事では「報告書を引っ込めて解決するのか」「きちんと説明が欲しい」「政府はごまかさず、議論のきっかけにすべきだ」とあり、なぜ、デモ参加者を批判するのか全く理解できなかった。

ちょうど、このときは私は香港で起こった大規模デモのことをニュースで見て、どっちが民主主義国家として成熟しているのかと感じた時だった。(2019年6月17日 BBC Japan-香港デモ、さらに大規模に 行政長官の辞任求める

私が、このときフト思い出しのは、元厚生労働省の木村盛世氏の著書のことだった。

厚労省と新型インフルエンザ」という本のP36(悪質ないじめをする病んだ組織)で彼女はこう書いている。

国会(平成21年5月28日の参議院予算委員会)が終わった後の午後、(厚生労働省の)医系技官たちは重要な指令を受けて霞ヶ関合同庁舎五号館を飛び出しました。

場所はネットカフェです。やることは2チャンネルに『木村盛世』の悪口を書き込むことです。

私は、国会中継の翌日の夜、テレビでの出演が決まっていたのでテレビ局に出かけました。その際、ディレクターやレポーターの方たちが2チャンネルの書き込みについてどのような状況だったかを教えてくれました。(後略)

インターネット上では政治的な話題が出ると、左翼の扇動だとか、特定アジア云々という言葉が飛び交っている。(米帝のスパイかとか逆バージョンはあるのか?)
確かに、そう思えることも多いのだが、全然関係ないことでも、政府批判をするだけで、それを批判する人が後を絶たない。

私に言わせれば、Atusi氏の言う「不当と戦わない人間が搾取される側なのは当然」なアホ~か、木村盛世氏の悪口をネットカフェに書き込みに行った霞が関の別動隊みたいなヤツか、どちらかということになるのだろうな。

老後2000万円報告書をボツにすれば物事がうまくいくのか

6月18日付の朝日新聞DIGITAL(紙面は19日)に、金融審議会が出した「老後2000万円報告書」が、官邸の意向でボツにすることになったことが書かれていた。

ほとんどの金融関係者ら専門家が評価しているものを、菅義偉官房長官や二階俊博幹事長を始めとする政府要人がボツにしたからと言って、現実が変わるわけではない。

安倍首相の側近が、来る参議院選挙の影響を抑えるために、そうしたと言われているが、あまりにも稚拙なことだと思う。
元は、野党が国会でトンチンカンな質問をしたのが発端かもしれないが、与野党ともにこの不勉強ぶりでは、どこの党が政権を取っても、社会保障改革が政治主導で行われる可能性はないだろう。

首相激怒「金融庁は大バカ者」 官邸主導、異例の火消し (2019.6.18 朝日新聞)

老後の生活費が「2千万円不足」するとして資産形成を呼びかけた金融庁の審議会報告書の受け取り拒否は、首相官邸が主導していたことがわかった。森友・加計(かけ)学園問題などで隠蔽(いんぺい)を続けた政権の体質が、改めて浮き彫りになっている。

安倍晋三首相は、18日の参院厚生労働委員会でも火消しに追われた。

「あたかも一律に老後の生活費が月5万円赤字になるとしたことは、国民に誤解と大きな不安を与えるもの。高齢者の実態はさまざまで、平均での乱暴な議論は不適切であった」
首相にとって年金問題は鬼門だ。2006年に発足した第1次安倍政権は参院選前に「消えた年金記録」の問題が噴き出し、1年で退陣に追い込まれた。

今月10月、首相も出席した参院決算委員会で「2千万円不足」問題の追及が強まり、公的年金にも焦点が当たった。その日、首相は周辺にこう漏らした。

「金融庁は大バカ者だな。こんなことを書いて」
首相の激怒を背景に、首相官邸は事態の収拾に動いた。政府関係者によると、菅義偉官房長官が首相や自らの秘書官を通じて11日午前に財務省と金融庁に連絡。審議会の報告書を受け取らないという異例の対応を指示した。

その直後、麻生太郎金融相が閣議後会見で「正式な報告書としては受け取らない」と表明。4日の会見では報告書に理解を示していたが、態度を一変させた。

同じころ、自民党の二階俊博幹事長は党本部に金融庁幹部を呼びつけ、報告書の撤回も含めて厳重に抗議。金融庁の「スタンドプレー」を印象づけることで、政権への影響を最小限に抑える狙いがあった。

金融庁は当初、報告書の書き換えを申し出ていた。
政権内には「『受け取らない』ではなく、『受け入れられない』でいいのでは」との意見もあった。

だが、官邸側は「初期消火に失敗したら建物ごと燃やすしかない」とし、問題に「ふた」をする判断をした。受け取り拒否を受け、自民党の森山裕国会対策委員長は「報告書そのものがなくなった」と強調。国会論戦を避け、参院選の争点外しを図った。

こうした政府の対応に、世論は強く反発している。
共同通借社が15、16両日に実施した世論調査によると、政府の対応について「問題だ」が71.3%に上った。18日の参院財政金融委員会では、共産党の小池晃書記局長がこう指摘した。「受け取らないという対応にみんな怒っている。中身以前に、みんな不信を持っている」(太田成美)

「なかったことに」政権再び

記録がない、記憶がない、廃棄した-。安倍政権は、都合の悪い公文書や記録を「なかったこと」にしてきた。18日には、老後資金に2千万円は必要なのかとの立憲民主党の中谷一馬氏からの質問主意書に、政府は「正式な報告書としては受け取らないことを決定している。報告書を前提にしたお尋ねについて答えることは差し控えたい」との答弁書を閣議決定した。

報告書を「なかったこと」にするのは、年金や社会保障をめぐる根本的な議論を遠ざけることでもある。

2004年の年金制度改革では、現役世代の負担が増え続けないように保険料率などに上限を設け、保険料と税金、積立金で賄える範囲に年金水準を引き下げる仕組みを導入。
厚労省の試算では、モデル世帯(40年働いた会社員と専業主婦)が受け取る厚生年金は今は現役世代の平均収入の6割程度だが、2043年度には5割程度になる。

さらに国民年金だけで暮らす人や低年金・無年金の人もおり、年金だけでは安定した老後を送れない可能性も指摘され続けてきた。
それでも、抜本改革の議論は深まらないままだ。

報告書は投資などを促すが、働き手の4割弱にあたる非正規の平均給与は年175万円。投資や貯蓄をする余裕はない。
首相は18日の参院厚労委で「安心できる老後生活を送っていただけるように、医療や介護も含めた社会保障全体のセーフティーネットの充実を進めていきたい」と述べただけで、具体策は示さなかった。(山本恭介、別宮潤一)

日本もポルトガル型の経済復興策を見習うべきでは

喜ぶ女性

私が2011年に財政危機に見舞われたと書いた、PIIGS(ユーロ圏で財政基盤の弱いポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの頭文字)の一角、ポルトガル、21世紀に入って日本と同じように賃金がマイナスになっている国だが、ポルトガルの方は経済復興を果たしつつあるという。(2018年4月26日 ハーバービジネスオンライン-世界中の富裕層が熱視線。ポルトガル経済回復の原動力となった『ゴールデン・ビザ』政策とは

その秘訣について、2017年6月3日付の記事「景気回復したポルトガル、依然厳しいギリシャ。PIIGSの中でも似た規模の両国を分けた差とは?」にはこう書かれていた。

3党はそれぞれイデオロギーは異なるが、再建ということを主眼に置いて着々と経済政策を3党合意のもとに実施していった。

その根本にあるのはトロイカ(EU、ECB、IMF)が要望して来た緊縮策からの脱皮である。
公共投資の実施を取り戻し、例えば、医療部門における投資を積極的に行った。
燃料やたばこへの税金を僅かに上げたが、消費税は13%に値下げた
週35時間制に変更もした

前政権が進めていた公的企業の民営化を中断させた。
例えば、ポルトガル航空TAPも政府保有株式を過半数に挙げた。
更に、公務員の最低賃金と年金額も上げた。  

その結果、GDPに占める負債は133%まで上昇しているが、その一方で景気は上向き、輸出が10%上昇。

しかも、EUが一番重要視している財政赤字が昨年は2%まで減少し、今年は1.5%、来年は1%まで減少すると予測できるまでになっているのだ。

この賃上げ論について、小西美術工藝社社長であるデービッド・アトキンソン(David Atkinson)氏が2019年1月11日付の記事「『永遠の賃上げ』が最強の経済政策である理由」を東洋経済に寄稿した。

彼は言う。
「国が主導し、賃上げ政策を実現させれば、税収が増え、年金と医療の問題も次第に解決されます。また、国の借金問題も解決に向かい、少子化問題も解決されます。同時に、女性活躍も進むことでしょう。」

安倍晋三首相中西宏明経団連会長神津里季生連合会長が、彼の言うことを少しでも聞き入れることを願うと同時に、これをご覧になった皆さんが、彼らに自分の言葉で意見書を送るなどのアクションを起こすことを期待している。

2000万円が無理なら、まず100万円の貯金を作ろう

外貨と英字新聞

長らくお読みいただき、平成時代というのが一般の労働者にとって、決して恵まれた時代ではなかったということが、データの上でもおわかりいただけただろうか。

2019年6月3日に公表された金融審議会の市場ワーキング・グループの報告書「高齢社会における資産形成・管理」が、国会を揺るがすような世間の大きな動揺を誘っているが、自助努力などふざけるな、どこの世界の話だと言う人が多くなっていることは、私もわかっているつもりだ。

そこで、一つのやり方だが、最初から2000万円と思うから無理だと思うのだ。
私だって、今から英語をやって米国の会社に就職できるぐらいのスキルを身に付けろと言われたら、最初から諦めるだろう。
20年前にはそれを目標にしたときもあったし、30年前にはそうなるように頑張ればいいから、うちに入社するかと言われたこともあったけど。(笑)

そこで、まずは100万円の貯金というわけだ。

人生のステップアップを図ろうと、投資やスモールビジネスを始めたいと思ったとする。
ここで、1円も持たない状態では何も始められないし、永遠に人の意思(雇用主の意思や政府の政策)に左右されて一生が終わりになってしまう。

21世紀の日本では、労働所得に依存し続けることが、最もバカげた人生の選択肢であることを知ることが重要なのだ。

ダークネスの著者、鈴木傾城氏の2019年2月16日付のコラム「資本主義の世界では、誰しもが生き残るために『資本』を持つ必要がある」にはこう書かれている。

何もない人間の最初の目標は、とにかく「貯金を増やす」ということだ。たとえば、100万円の貯金はひとつの目安になる。100万円が貯まると、少なくとも何も持たない最下層からひとつ上の階段に上がることを意味するからだ。

従って、「老後2000万円報告書」云々に関係なく、まず最初の一歩は100万円を貯めることだ。
6月16日付の産経新聞では「還暦迎える4人に1人の貯蓄は百万円未満 PGF生命アンケート」とあったが、これからの時代は、この状態でも這い上がる術を考えることが必要かもしれない。

最後に

私がニューズウイークを定期購読をし始めた1998年8月12日/19日号の特集は「海外で暮らす」というものだった。
その中のフェズで暮らす海外青年協力隊員の古川貴子さんと斉藤貢氏の言葉は、今でも私の心の中にある。

日本の都会生活に戻りたいと思う隊員はいない。みんな仕事熱心だが、個人を犠牲にした働きバチになる気はない。

今の日本人は、経済という名の自転車をこいでいるだけだ。そろそろ自転車を降りて、自分の足で歩けばいいのに。

海外青年協力隊の経験者が、日本の内地企業で採用されない最大の理由が、彼らの言葉に凝縮されている。

そして、その非人間的な職場環境に染まれない人間を排除し、サービス残業を何時間やらされても文句一つ言わずにやってきた結果が、世界有数の経済大国でありながら、老後のために、2000万円を用意しろと言われて、デモをやらないといけないレベルにまで落ちてしまったのかと思うと、やり切れない気持ちがする。

もはや、ここまできたら日本がガラガラポンしないと新時代はやってこないだろう。
私は、そのときに向けた準備をした方がいいように思っている。

WELCOME TO MY LIFE」、友人のかじさんが10数年前に作ったフィクションなのだが、最近になって読み返してみた。
荒唐無稽な物語なのだが、日本が財政破綻するとこうなるのだろうなと思う。

コメント

  1. かじ より:

    こんばんは

    昔に自分で書いたのを読むのは恥ずかしいですね。
    よくこんなの書いたなと(笑)。

    日本は、小選挙区制で政治家が劣化したので、もう良い方向へは行かないでしょうね。
    官僚社会主義がなんとか回っているうちは、増税によって延命しようとするとは思いますが、破綻ポイントが後ろになればなるほど悲惨な結果になりそうです。

    • こんばんは

      よくウェブサイトを消さないで残してありましたね。
      私はそっちの方に驚きました。(笑)

      まあ、日本はデフレ脱却はできそうもないし、10月に消費税率を上げたら相当にヤバイかもですね。

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