内閣府が行なった2年前の裁判員制度に関する世論調査では7割の人が「参加したくない」と考えている裁判員制度が実施に向かって着々と進んでいるようだ。
その裁判員制度に参加に消極的な理由の解消のため、法曹三者は国民向けPRを懸命にやってきたようだが、未だにその不安たる原因の解消はされたようには思えない。
何が不安に思うかの一つは2005年4月17日の「今日の一言」にも書いたように「裁判員の保護」に関することだ。
その1ヵ月後の5月12日に、札幌地方検察庁から証人女性の住所が漏れて抗議されたという記事が新聞に掲載され、それを受けた「裁判員の保護というものが本当にされるのか怪しい」という趣旨のコラムがインターネット上を駆け巡ったのは皮肉としか言いようがない。
次は裁判員になる人の資質の問題だ。
裁判員制度が機能するかどうかの最大の懸念材料は人を確保することだ。
そこで、まずは最高裁判所規則で定めると言っている裁判員の日当などがどの程度になるか推定してみた。
現行法令で決められた刑事裁判のときの証人に支給する日当の最高額は何と8,200円(刑事の手続における証人等に対する給付に関する規則第3条)でしかない。(参考:公的弁護制度検討会(第3回)配布資料)
そして検察審査員の日当の最高額も8,000円(検察審査員等の旅費、日当及び宿泊料を定める政令第3条)である。
おそらく、このどちらかが基準になるのは想像に難くない。
これが妥当かどうかは置いておいて、裁判員に従事する場合がこれらの場合に比べて負担が大きいことを最高裁が考慮したとしても、仕事を持っている人が裁判員としての職務を優先するという動機付けにはほど遠い金額となろう。
少なくとも高収入を得ているホワイトカラー層は罰金(10万円以下の過料)を払わされたとしてもやりたくないと言い出すだろう。
さらにQ and Aにある「裁判員が1人でも欠席してしまうと裁判ができません。したがって、裁判員に選ばれた方には、裁判に必ず出席してもらう必要があります。」というところも問題だ。
有権者(衆議院議員の選挙権を有する者)の中から無作為に選ばれた裁判員候補者の中で、仕事を持っている人がこれを素直に聞き入れるとは思えない。
そもそも裁判員の参加する公判では、6人の裁判員が必要となるらしいが、彼らが全員一致で公判に立ち会える日が1年に何回あるのか法曹関係者は考えたことがあるのだろうか。
飲み会の企画でさえ、6人全員が揃う日を見つけるのは困難なのではないか。
おそらく、これらのことを考えると、国民参加型の裁判というのは絵に描いた餅になるだろう。
高崎経済大学助教授の八木秀次氏は言う。
仕事や学業、育児・介護で忙しい人は、裁判員の辞退理由に該当するから、いわゆる「普通の人」は辞退することになる。では実際どのような人たちが裁判員になるのか。
考えられるところ、暇な人、人がよくて断れないいわゆる「人のいい人」、社会的な活動に熱心な人々ということになるが、最後の分類の中には当然のこととして、左翼市民運動のプロやセミプロといういわゆる「プロ市民」や創価学会などの巨大宗教団体の信者が含まれることになろう。
ここに裁判員制度の導入に日弁連や左翼市民団体、巨大教団が賛成する最大の理由があるのだが、つまり裁判員制度は「普通の人たち」の感覚を反映させると言いながら、実のところ、「特殊な人たち」の意見を裁判に反映させる仕組みなのである。
この八木助教授の指摘が当たらないことを私は祈りたい。
証人女性の住所が被告に漏れる?札幌地検が謝罪 (2005.5.12 読売新聞)
札幌市内で女性を殴ったとして暴行罪に問われた男(40)の札幌地裁での公判で、住所などを男に伏せて目撃証言した検察側の証人女性の自宅に、男から手紙が届いていたことが12日、わかった。
住所は札幌地検が弁護側に開示した資料から男に伝わった可能性がある。同地検は証人女性からの抗議を受け、女性に謝罪した。
向井壮(つよし)次席検事は「男に住所などが伝わらないようにとの弁護士への要請が不十分だった可能性がある。結果的にこのような結果になり遺憾」としている。判決によると、男は昨年7月31日夕、市内の大通公園で水浴びしていた女児をカメラ付き携帯電話で無断撮影し、抗議した母親の腹部を殴る暴行を加え、暴行容疑で逮捕された。
今年2月と3月の公判で証言した女性の姿は、ついたてで見えないように配慮され、住所も伏せられた。しかし、未決拘置で札幌拘置所に収容されていた男から「偽証は残念」などとする手紙が郵送されてきたという。
男は11日に懲役4月(求刑・懲役6月)の有罪判決を受けた。未決拘置期間が刑期に算入されたため、同日、釈放された。
関連サイト
コメント
始めまして
検索できました。
平成19年9月からURLが変わっています。
宜しくお願いします。
ゴジラズワイフさん
ご連絡ありがとうございます。
さっそく修正させていただきます。