今、裁判官は本当に良心に従って判決を下しているのだろうか?
日本国憲法第76条
- すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
- 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
- すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
1月15日付のコラム「中村氏の裁判に見る日本の司法の現実」に掲載した新聞記事の中で、彼が言ったとされるセリフを覚えているだろうか。
「高裁は山ほど提出した書面をまるで読まず、最初から和解金額を決めていた。これで正義の判断といえますか」と声を荒らげ、「これだけが言いたくて日本に来た。日本の司法システムは腐っている」と切り捨てた。
東京高裁の和解案について「何も根拠がない。一審判決が認定した600億円が大きすぎるので、100分の1にして適当に計算式を作っただけ」
というものだ。
一般の人の中には、中村氏の裁判も、ストックオプション訴訟の八幡氏の裁判も雲上人のことであって、私らと関係ないと思っている人もいるだろう。
しかし、ことはそう簡単ではない。
要は自分より上位権力者(政府だけでなく大企業や組織も含む)に何か不利益なことをされても、それが明白に法律に違反しない限り、上級裁判所(高裁・最高裁)は権力者側に有利な判定を下すということが明白にされたのだ。
原告側は「国税が課税の判断基準を突然変更したのは信義則違反だ」とも主張したが、同小法廷はこの部分について「重要ではない」として審理対象にしなかった。
このセリフ、誰かに似てるだろう。
わが国の首相である小泉純一郎が「公約した30兆円の国債発行枠の上限」をこともなげに破ったことに対して野党が追求したときのセリフと同じだ。
しかも、原告の八幡氏の言う、「突然変更した」というのは、将来に向かって変更した(これは正当な法令改正に当たる)のではなく、過去に遡って変更したというのだ。
言うならば、今現在、法律で許されていることが、2年後に「あのときの行為は本来許されなかった行為」だと言って取り締まられるのと同義だ。
行政府や立法府の暴走を止めるのが司法の役割の一つにもかかわらず、これを「重要ではない」という最高裁に存在価値はないだろう。
なぜ、そうなったか前にも書いた。
要するに裁判官とは言え、宮仕えの身、最高裁事務総局という人事予算権限、要は役人の生殺与奪の権限を持った組織が法務官僚の手に握られていればどうなるかは明白だ。
しかも憲法第79条、第80条違反の「裁判官給与減額法案」まで飲まされた最高裁にはもはや司法の独立を期待する方が間違っているかもしれない。
最後にベンジャミン・フルフォード(Benjamin Fulford)の著書「泥棒国家の完成 (ペーパーバックス)」の中で、彼が紹介していたジョークをあげよう。
グローバリゼーション以前の世界には、各国のルールが存在した。
- ドイツでは禁止されていることは禁止されている。
- イタリアでは禁止されていることも、ときには許される。
- ソ連では許されたこと以外はすべて禁止されている。
- イギリスでは禁止されていることも許されていることも法律に書かれていない。
- アメリカでは禁止されていること以外はすべて許されている。
- 日本では禁止されていることも許されていることも、すべて官僚にお伺いをたてなければわからない。
ストックオプション利益、「給与所得」確定 最高裁判決 (2005.1.25 朝日新聞)
企業が社員らに与える自社株購入権(ストックオプション)で得られた利益は「給与所得」か「一時所得」かが争われた訴訟で、最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は25日、「職務の対価であり、給与所得に当たる」とする初の判断を示し、原告の上告を棄却する判決を言い渡した。
一時所得に比べて税額がほぼ倍となる給与所得として課税した国税当局の処分を適法とした二審・東京高裁判決が確定した。
国税当局は1980年代半ばからストックオプションの利益を一時所得として課税してきた。
しかし、1999年に給与所得として取り扱うこととして過去にさかのぼって課税したため、取り消しを求める訴訟が相次いだ。国税庁によると全国で102件の訴訟が係争中。
地裁段階では納税者側が勝訴するケースもあったが、今回の最高裁判決で司法判断が固まったことになる。
判決理由で第三小法廷は「企業側はストックオプションを与え、その権利行使で利益を得させたといえるから、その利益は企業からの給付に当たる」と指摘。「米国親会社がグループ企業の役員、従業員の精勤の動機付けを目指して設けた制度で、職務遂行への対価、経済的利益であることは明らかだ」と判断した。
原告は、米国の半導体製造装置メーカー「アプライドマテリアルズ」の日本法人の元社長八幡恵介さん。八幡さんは米国の親会社からストックオプションを与えられ、1996~1998年、約3億6000万円の利益を一時所得として申告したが、国税当局は2000年になって給与所得と指摘し、約8000万円を追徴課税した。
一審・東京地裁は「利益は株式の時価など偶発的な要因で決まり、給与所得とは評価できない」として追徴課税処分を取り消したが、二審・東京高裁は「労務の対価だ」と述べて適法とする逆転判決を言い渡した。
原告側は「国税が課税の判断基準を突然変更したのは信義則違反だ」とも主張したが、同小法廷はこの部分について「重要ではない」として審理対象にしなかった。
判決後、記者会見した八幡さんは「税務署の指導に従って処理したのに、これでは行政の判断で後々いかようにでもできる。納税者は将来の生活設計が立てられなくなり、行政追認の判断に憤りを感じる」と話した。
一方、第三小法廷は同日、マイクロソフト日本法人の社員が起こした同様の訴訟についても上告を退ける決定をし、給与所得としての課税を適法とした二審判決が確定した。
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