私が去る7月5日に「デフレ時代は終わりか?」というエッセイを載せた後、固定型の住宅ローン金利が上昇し(10年物の国債の利回りを基準に銀行の住宅ローンの金利が決まるので、国債価格が下落し、金利が上がれば住宅ローンの金利も上がる。)始め、いよいよ悪性インフレ時代の幕開けかと思ったが、今日になって日銀展望リポートで「来年度も物価下落」という予測がなされたという記事が日経新聞に載った。
主要各国はデフレ退治と称して、ジャブジャブと金を市場にばら撒いているようだが、はっきりとした成果が出てるとは言えない。
日本もゼロ金利政策という異常な政策が実施されてからもはや四年以上たつがITバブル相場を演出した以外は暗黒の21世紀に突入していまだに脱出しきれてないようだ。
むしろ「金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏に」という二極化が著しくなり、一般庶民は失業と倒産に加えて老後の不安を恐れてますます財布の紐を締め続けている。
かつては中流の代名詞だった、日本の就業人口の多くを占めるサラリーマン層の多くが貧困層への転落の瀬戸際にある状況ではデフレ退治はおろか景気の本格回復もおぼつかないだろう。(Newsweek Japan 2003.6.11 PDF – 中流なき階級社会の暗い影)
私は思う。もはやゾンビ企業や無益な公共事業に投入する税金を「サラリーマン救済基金」みたいなものを設立して失業保険制度の充実と住宅ローン破産者予備軍の救済に充てるべきだと。
また政府は国策としての持ち家政策の一切を放棄すべきと。
もはや戦後の高度成長時代のモデルは完全に破綻した。
しかしながら、私は驚いている。
いまだに35年の住宅ローンを組んで、マンションを買っている人がいることを・・・
「あなたは3000万円の物件に1億円を払うつもりですか?」
これは72の法則(投資元本が2倍に増えるまでの期間は、「72÷年利」で求められるという法則で、当然借金の場合はこれがマイナスに働く)に毎年払う固定資産税を考えれば極論ではないことが理解できると思う。
私に言わせればマンションを買っていいのは以下の条件のいずれかを満たす人たちに限られる。
なぜなら10年後の資産価値はゼロに等しいからだ。
つまり住むことを楽しみ、飽きたらいつでも引っ越せるということが重要だと考えるからだ。
- 即金で買えるだけのキャッシュを持っていること
- ローンを組む場合はどんなに長くとも10年以内に返済が終わること
当然ながらこれは自分たちのレジャー資金や家族団らんを犠牲にしないで実行できること
これから持ち家をしようなんて考えている人はこれらのことを考えるべきだと思う。
デフレの原因は個人消費の低迷だが、高齢者が期待する郵貯の金利はゼロ、熟年世代は住宅ローンに養育費に加え将来の生活不安、これだけの悪条件がそろっていたらどう考えてもデフレ脱却なんか尋常な方法では無理だ。
そう、残された方法はただ1つ。「人為的にインフレを起こす。」
私は10年以内、いや5年以内にそういう事態が訪れるのではないかということを危惧している。
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日銀展望リポート「来年度も物価下落」(2003.10.31 日経新聞)日銀は、31日の政策委員会・金融政策決定会合で、政策委員の見通しを示す経済・物価の将来展望(展望リポート)をまとめた。
消費者物価の「大勢見通し」は2004年度も前年比でマイナス圏内。中央値では0.3%の下落となり、小幅ながらデフレ基調が続くという判断になった。
日銀は金融市場に潤沢な資金を供給する量的緩和策を堅持する方針だ。日銀が量的緩和継続の尺度とする全国の消費者物価(生鮮食品を除く総合)の「大勢見通し」は今年度が0.3―0.1%の下落。
2004年度は0.5―0.2%の下落となり、いずれもマイナス圏内となった。政策委員のなかには2004年度で0.5%の物価上昇の予測もあったが、大勢はなおデフレは続くとみている。
来年度は医療費負担やたばこ税の引き上げといった物価の押し上げ要因がなくなるため、下落幅はやや拡大すると判断したもようだ。日銀は政策委員の多くがプラスの物価見通しを持つまで量的緩和を続けると表明している。
このため、今回の展望リポートで日銀が量的緩和を堅持する姿勢がより明確になった。*****************************
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