ロンドン同時爆破テロに思う

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英字新聞

7月7日にロンドンの地下鉄とバスが爆弾テロの犠牲となった。
通勤時間帯の公共交通機関を狙ったものとしては2004年3月11日のマドリードに次ぐものだ。

テロは「欧州の聖戦アル・カーイダ組織(the Secret Organisation Group of al-Qaeda of Jihad Organisation in Europe)」を名乗る集団が犯行声明を出したとされている。

マドリードのテロのときは、国際テロ組織アルカーイダ系の「アブハフス・アルマスリ旅団(The Abu Hafs al-Masri Brigade)」を名乗る組織から犯行声明(Purported Al-Qaida Statement: 抄訳あり)が届いたと報じられた。

その中で、「アスナール(スペイン首相)よ。だれがおまえや英国、イタリア、日本をわれわれ(の攻撃)から守ってくれるのか(Where is America to protect you today, Aznar. Who is going to protect you, Britain, Italy, Japan and other hirelings from us?)」という一節がある。

1年前にも、そして今回も「標的」と名指しされたイタリアのシルヴィオ・ベルルスコーニ(Silvio Berlusconi)首相が、テロの翌日に、イラク駐留軍(約3000人)について、9月に約300人を撤退させる方針を表明した。(イタリアとデンマーク、テロ対策強化 Italy sets date to pull troops out of Iraq

今まで強固な親米派政権であった彼が、こう決断したのは、イタリア本国内におけるテロ捜査を巡るCIA要員との摩擦(CIA要員、容疑者拉致で伊が逮捕状 Italy seeks CIA kidnap agents)や、去る3月にイラクで人質から解放されたイタリア人ジャーナリスト、ジュリアナ・スグレナ(Giuliana Sgrena)さんの乗った車に米軍が誤射して、イタリア特殊救出チームの司令官、ニコラ・カリパリ(Nicola Calipari)さんが殺された事件(イタリア人人質解放、米軍の発砲/Hostage’s shooting no accident State honours for slain Italian agent)などからアメリカと距離を置こうという意図なのかもしれない。

さて、わが日本であるが、相変わらず強気というか、それしか選択肢がないのか?という小泉首相。(国内テロ対策の強化も ロンドン同時テロで小泉首相
「今回の事件を教訓に」と毎度のように言うが、どう教訓にするのか。

彼もメディアも1年前のことなどほとんど覚えていないのだろうが、日本はもはや完全なアメリカの軍事的同盟国(属国とも言うが)だから、アルカーイダの声明通りにいつ標的になってもおかしくない。

2004年3月13日付の「マドリードの列車爆破テロ」で書いたように、日本がイスラム原理主義者の標的となっていてもテロが実行されないのは、彼らにとっての拠点やネットワークが築きにくいだけかもしれないのだ。

10年前に起こったオウム真理教による「地下鉄サリン事件」を、他国は衝撃をもって受け止め「化学兵器によるテロ」として位置づけ対策を講ずるように治安当局に命じたという。

対する日本は「テロ」として受け止めた風潮は全くなく、「破壊活動防止法」の適用を阻止する勢力が大手を振って世間を渡り歩いた。
そして、総合的なテロ対策をしないまま今に至っているのが現実であろう。

ちなみに私は当時成立した「サリン等による人身被害の防止に関する法律(サリン防止法)」と、鉄道のゴミ箱撤去を見て不謹慎にも笑ってしまった。
まさに日本の政治家を始めとする指導者層の頭の悪さがにじみ出ているのを象徴していたからだ。

日本政府の最大の欠陥は情報に対する感度だ。
優先順位の付け方と言ってもいい。
なぜ、「テロ対策法」といった法律を作らないのか、と当時も思ったほどだ。

そして、今、小泉首相の最大の仕事は郵政民営化でもなく、アメリカの対テロ戦争に自衛隊を派遣することでもなく、自国民の生活や安全を守ることではないのか?

麻生幾氏の小説である「宣戦布告」というのが単なる小説では済まされないリアルさがあるのも、いざというときはそうなるだろうと簡単に予測がつくからだ。
専属の情報機関を持つイギリスでさえ、長期にわたって緊張を強いられることが油断を生むということは、こちらの記事(英治安当局、テロ警戒レベル引き下げていた Intelligence officials were braced for an offensive – but lowered threat levels)が示す通りだ。

これが日本の場合だと、政治家の不見識から、そうした情報を総合的に分析する機関さえないありさまだし、防衛庁や警察庁といったところに散逸する情報機関でさえ人員削減の対象になりかねない状況だ。

今、構造改革という美名のもとに貧富の差が拡大され、弱者はまともなセーフティネットもないままに放置されている。
今や食い詰めたホームレスや、リストラされたサラリーマンが金に釣られて詐欺の片棒を担ぐなんてことは珍しくもないし、安月給のアルパイトが個人情報を売るなんてことも日常茶飯事で起きている。

そして、今後はこうした人が、テロの片棒を担ぐといったことが起きないとも限らないのだ。

小説「宣戦布告」に出てくる東山という画商の営業マンはそんな意識もないままに高度なセキュリティ情報を北朝鮮の工作員に売っているという設定になっている。
むしろそうした場合の方が日本人は多くなるのではないだろうか。

歴代の首相は外国に訪問するたびに、多額のお土産を奉げて行くが、そんな金があるなら自国民のために使えと言いたいのは私だけではあるまい。

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