退職前や収入の多い年は限度額一杯までふるさと納税をしよう

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パソコンを操作する女性

年末が迫ると、ふるさと納税をいくらまですれば、税制上、最も効果的なのか(2,000円の負担でお礼品をたくさんもらえるか)気になる人は多いだろう。
一方で、サラリーマンの中には、納税や確定申告という言葉に拒否感を抱き、全くやらない人も多い。

ところが、サラリーマンはいずれ強制的にリタイアさせられる時がやってくる。
それが定年退職だ。

退職すると、翌年になってかかってくるのが、住民税や国民健康保険料(任意継続被保険者の健康保険料を含む)といった公租公課で、60歳未満の方だと、これに国民年金保険料も加算される。(2018年10月14日-会社を辞める理由一つで雲泥の差がある日本の社会保障

公務員や大企業のサラリーマンの方は、定年退職の場合、退職金が数千万円単位で支給されるので、それほど負担感はないかもしれないが、それでも数十万円から100万円を超える負担は心が重たくなることだろう。

しかしながら、その負担感を少しでも緩和できる方法の一つが、退職の前年(9月末や年末退職などの場合は同年内)に行うふるさと納税だ。

マネー雑誌など、ふるさと納税を取り上げる多くの記事では、2,000円の負担でお礼品を獲得できることがクローズアップされているが、ふるさと納税の本質は、翌年に課税される住民税の先払いシステムにほかならないからだ。

例えば、ふるさと納税をした人が所得税の確定申告をした場合、寄附金支出額(ふるさと納税額)の合計から2,000円を差し引いた金額に対し、まず、その人の所得税率に応じた還付金が戻り、その残額に対して、住民税の寄附金税額控除(地方税法第37条の2、第314条の7)が行われる仕組みになっている。

つまり、10月14日のコラムで例示した、年収5,167,660円(課税所得金額は1,647,000円、所得税率は5%)のサラリーマンが、ある年に2万円のふるさと納税をした場合、自己負担額が2,000円、残りの18,000円に対して、所得税の還付金は、所得税率が5%の事例なので900円、住民税の寄附金税額控除の基本控除分は1,800円(住民税の所得割の税率は一律に10%)、特例控除分が15,300円となって、合計18,000円が還付(住民税は減額)されるというわけだ。

そして、住民税の寄附金税額控除は、税金そのものを直接減額する効果があるので、本来払うべき住民税が181,100円だったとしたら、17,100円減額されて164,000円になるのだ。(参考:よこはま市税のページ-寄附金税額控除(ふるさと納税)の拡充について

このとき、給与所得のみのサラリーマンなど、確定申告が不要だと見込まれる人が、ふるさと納税ワンストップ特例制度(申告特例制度)(参考:平成27年3月31日法律第2号 地方税法等の一部を改正する法律)を使った場合、全額が住民税の減額となって返ってくるので、よりいっそうわかりやすいのではないだろうか。

つまり、収入の多い年にふるさと納税をすることによって、退職などで収入減が見込まれる翌年の住民税を減額させるのが、ふるさと納税の効用というわけだ。

さて、サラリーマンの人は10月分の給料をもらい、生命保険会社から生命保険料控除証明書が自宅に送られてくると、いよいよ年末が近づくなというイメージをお持ちになると思うが、今年はふるさと納税をいくらまですれば、税制上、最も効果的なのか(2,000円の負担でお礼品をたくさんもらえるか)気になる人は、各種ウェブサイトのシミュレーションにデータを入れて試算したり、地元の役所の税務担当課に問い合わせたりすることだろう。(参考:ふるさとぷらす-ふるさと納税 控除の目安と限度額の計算方法

しかしながら、それは昨年のデータであり、今年のものではないはずだ。(昨年のデータで試算するなら勤務先に源泉徴収票の再発行を求めよう
それでは今年の分をどうやってシミュレートするとかというと、10月までの収支を元に、エクセルを使って推計するしかないのだが、サラリーマン(給与所得者)の場合だと、まずは、1月分から10月分までの月額の税込み給与を足しあげたものを1.2倍し、夏季賞与を2倍したものを加えて、みなし年収とすることから始めよう。

ここから、下表の給与所得控除を差し引いて、年間の所得金額とする。
例えば、年収が500万円だと推計された場合は、給与所得控除の計算式は、500万円×20%+540,000円なので、1,540,000円となる。
参考までに、給与等の収入金額が660万円未満の場合には、所得税法別表第五(年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表)を使用するのだが、年収は確定でなく、推計なので、簡単な方を使いたい。

ここで、個人事業主としての事業所得や、サラリーマン大家としての不動産所得がある人は、それぞれの収支を推計したものを合算すればいいだろう。

次に、所得控除項目である、月額給与の社会保険料控除(健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料)、小規模企業共済等掛金控除iDeCo/個人型確定拠出年金の掛金)については、1月から10月までの全額を集計して1.2倍し、夏季賞与の分は2倍すればいいだろう。

生命保険料控除地震保険料控除に関しては、所得税と住民税の控除額に若干の差異があるが、今年新規に加入したものがなければ昨年並み、住民税の人的控除のうち、基礎控除は33万円、配偶者(特別)控除扶養控除(16歳以上の扶養親族)については、該当者がいればそれぞれ33万円で計算すればいいと思う。

ここで、気をつけないといけないのは、住宅借入金等特別控除特定増改築等住宅借入金等特別控除は、所得税の税額控除の対象であり、住民税の課税所得金額には算入しないので注意が必要だ。

こうして算出した住民税の課税所得金額に税率10%をかけ(所得割額の算出)、さらに、20%をかけたものが、ふるさと納税寄附金の住民税特例控除の限度額となる。

法的には、ほかにも限度額を計算する上での条件があるが、例え、年収1075万円以上の高度プロフェッショナルであっても、事実上は、この計算式で求められる数値が上限と考えていいと思う。

つまり、この範囲に寄附金支出総額が収まっていれば、2,000円の自己負担で、税制上、最も効果的にふるさと納税ができるというわけだ。

仮に、住民税の課税所得金額が80万円(年収300万円程度)の人のふるさと納税上限額は、80万円×10%×20%=16,000円なので、1万円のふるさと納税を2か所にした場合は、住民税特例控除分が課税所得金額の85%なので、計算上は15,300円の減額となり、上限ギリギリということになる。

もっとも、これはあくまで目安なので、境界線にある場合は、寄附の精神に則り、多少の自己負担は覚悟でやるのもありかと思うが、いかがだろうか。

ふるさと納税に対する税効果の目安
収入金額
  • 税込み給与収入、事業収入、不動産収入
    (給与所得の源泉徴収票は「支払金額」と表示)
給与所得控除 *給与等の収入金額が660万円未満の場合には、所得税法別表第五を用いるが、ここでは目安のため以下の計算式で行う。
給与等の収入金額
(源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
*1,800,000円以下 収入金額×40%
650,000円に満たない場合には650,000円
*1,800,000円超 3,600,000円以下 収入金額×30%+180,000円
*3,600,000円超 6,600,000円以下 収入金額×20%+540,000円
6,600,000円超 10,000,000円以下 収入金額×10%+1,200,000円
10,000,000円超 2,200,000円(上限)
所得金額
  • 事業所得と不動産所得は必要経費控除後の金額
  • 源泉徴収票では「給与所得控除後の金額」と表示
所得控除
  • 社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除、地震保険料控除
  • 基礎控除、配偶者(特別)控除、扶養控除
**所得税・住民税の
課税所得金額
寄附金控除対象額(支出総額-2千円)に対する
所得税還付率 住民税基本控除 住民税特例控除
195万円以下 5% 10% 85%
195万円を超え330万円以下 10% 10% 80%
330万円を超え695万円以下 20% 10% 70%
695万円を超え900万円以下 23% 10% 67%
900万円を超え1,800万円以下 33% 10% 57%
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 10% 50%
4,000万円超 45% 10% 45%
**所得税と住民税の課税所得金額の計算は、人的控除(基礎控除及び地方税法第37条第1号イ、第314条の6第1号イの配偶者・扶養控除等)など各種控除額の違いにより結果が異なるが、あくまで目安のため差異を考慮しない。

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