2017年分(平成29年分)の家族分の所得税の確定申告書は、地方税法第317条の3第1項但書に基づいて、2018年度(平成30年度)の住民税(横浜市民税・神奈川県民税)の申告書とダブルで提出した。
原則として、所得税の確定申告書を提出すれば、住民税(市町村民税・都道府県民税)の申告書は不要というのが、地方税法第317条の3第1項の規定なのだが、あえて住民税の申告書とダブルで出せば、所得税の確定申告をした上場株式等の配当所得・譲渡所得について、所得税と異なる課税方式を選択することができるようになる。
これが、私が2017年2月25日付のコラム「配当所得に関して個人事業主や国民健康保険加入の個人投資家に朗報」で書いた趣旨なのだが、この規定は以前からあったにもかかわらず、国民に広く知れ渡るようになったのは昨年からだった。
つまり、政府が平成29年度(2017年度)税制改正の大綱-個人所得課税-6 その他-地方税-個人住民税-(9)にある「上場株式等に係る配当所得等について、市町村が納税義務者の意思等を勘案し、所得税と異なる課税方式により個人住民税を課することができることを明確化する。」と明示したからだ。
これをやると何が良いのかと言うと、源泉徴収ありの特定口座(金融機関ごとに選択可)で投資を行っている人は、上場株式等の配当金や譲渡益があったときに、20.315%の源泉税(所得税・復興特別所得税が15.315%、地方税が5%)が差し引かれて口座に振り込まれるわけだが、これらの投資による利益を加算した課税所得金額(1月1日から12月31日までの1年間の全ての所得から所得控除額を差し引いた金額)が330万円以下の人なら、所得税率が10%(課税所得金額が195万円以下なら5%)になるため、確定申告で総合課税を選択することによって、源泉徴収された所得税の還付金を得ることができる。
また、株式譲渡所得に関して損失があった場合は、原則として損益通算ができるため、この場合も確定申告をすることによって、源泉徴収された所得税の還付金を得ることができる。
ところが、所得税の確定申告をして還付金を得ると、その情報は住民税(市町村民税・都道府県民税)にも反映されるため、源泉徴収された住民税は還付されるものの、所得税の確定申告書に記載した配当所得や株式譲渡所得が、国民健康保険料や介護保険料を計算するときの合計所得金額に上乗せされた結果、例年に比べて保険料が高騰して、ぬか喜びになるリスクが大きかった。
しかも、住民に対する様々な行政サービスは、住民税額に比例して決まることが多いため、なおさらそうなる傾向があった。
夏になると、市役所などの国民健康保険担当の窓口で、口角泡を飛ばして文句を言っている爺さんが多くなるのもこれが原因の一つだ。
そのぬか喜びのリスクを避けるためにやるのが、所得税と住民税の申告書をダブルで提出するというものなのだ。
これによって、源泉所得税の還付を受けた上で、住民税額に比例する国民健康保険料や介護保険料の高騰を防ぐやり方を取れるからだ。
なお、これは源泉徴収ありの特定口座(金融機関ごとに選択可)で投資をやっている場合に限って適用できることなので、会社をやめて(定年退職等)国民健康保険に加入すると思われるときは、年初、あるいは前年末に証券会社などに配当金や譲渡益の課税方式を確認する必要がある。
具体的には、私も家族も横浜市民なので、ここでは横浜市の例を挙げる。
住民税(横浜市民税・神奈川県民税)の申告書も所得税同様、郵送でも提出できるが、今年はダブルで提出できる制度が周知された初年度で、今後のためにも申告書提出時に書き方を確認してから出す方が間違いないと思ったので、今回は直接書類を持参することにした。
居住地の区役所の税務課に提出するのは平成30年度市民税・県民税申告書、その第一面右下や記載例には、「所得税の確定申告をした上場株式等の配当所得・譲渡所得について、所得税と異なる課税方式を選択する場合はチェックしてください。(所得税の確定申告書の控の写しを添付し、異なる部分を明示してください。)」と書かれているので、まずは所得税の確定申告書を税務署に提出して、申告書の控えに受付印をもらい、その上で、申告書の第一表、第二表、第三表、所得の内訳書の4枚をコピーして持参した。
横浜市の住民税申告書の記載例には、「この欄にチェックがある時は、上場株式等の配当所得・譲渡所得について、申告書に記載のとおり、又は記載のないとおりに課税を行います。」とあるため、今回は、所得税について総合課税、住民税は申告不要制度(特定口座で源泉徴収ありの人のみ)を選択すると伝えたところ、配当の収入金額と所得金額を0円(申告不要)にし、配当割額・株式等譲渡所得割額の欄も0円にするように指示された。
つまり、ここだけは所得税の確定申告書の内容と違うものを記入するのだ。
さらに、それ以外のところは所得税の確定申告書の数字を転記して、念のために、平成30年度市民税・県民税申告書(分離課税等用)」の3番と4番の項目にも「申告不要」と書き入れて提出した。
これらの項目の0円や「申告不要」の意味は、所得税申告書第2表記載の住民税の配当割額控除額と、株式等譲渡所得割額控除額の還付を諦める代わりに、配当所得などを国民健康保険料や介護保険料を計算するときの合計所得金額に算入しないで欲しいという意思表示となる。
つまり、確定申告において、配当所得や株式等譲渡所得に関して総合課税を選択すると、原則として、住民税の課税総所得金額の計算も所得税と同じ総合課税になってしまうので、住民税の申告を別にすることによって、本来であれば、課税総所得金額に算入されるはずの配当所得と株式等譲渡所得を申告不要(5%の源泉徴収で完了)にできるため、配当所得や株式等譲渡所得にかかる住民税の所得割が0円になり、国民健康保険料や介護保険料への影響も避けることができることになる。
つまり、住民税の所得割は、2007年度(平成19年度)から税率が所得に関わらず一律10%(市町村民税6%、都道府県民税4%)になっているので、申告をダブルですることは総合的な節税策を取る上で必須と言えるだろう。
ちなみに、申告期限は、横浜市の場合は、大阪市同様、地方税法第317条の3第1項但書の規定にかかわらず、自治体の事務処理上の運用で、住民税の納税通知書が発付されるまでなので、自分の住んでいる自治体に確認するといいだろう。
最後になるが、住民税・国民健康保険・国民年金の仕組みと節約法を解説しているウェブサイトがあったので、参考にするといいだろう。
このサイトでは各自治体によって異なる国民健康保険料がいくらになるか試算できるページもある。
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