昨年の11月29日に「社会保険労務士試験へ向けて」ということで、勉強をやり直すことを決意したと書いた。
それで、結果はどうなっているのかと言うと、基本テキストを通読し終えたのはいいが、ほとんどそれを記憶できていない。
要は過去問をやってみても成績は芳しくなく、このままいけば受験料をドブに捨てることになるだろう。(爆)
さすがに合格率1割の難関試験だけのことはあると思うが、合格できなくても勉強を生かすことはできる。
そう、実生活に密着した知識を得ることができるからだ。
そこで個人事業主が法人の代表者となる、いわゆる「法人成り」が社会保険制度上で得なのかシミュレーションしてみたいと思う。
ところで、橘玲氏の著書、貧乏はお金持ち-「雇われない生き方」で格差社会を逆転するを読んだことがある人もいると思うが、彼が提唱する「経済的独立を果たすための一人法人化で、すべてのメリットを享受する。」というのを、この応用としてやってみるのも悪くないだろう。
横浜市在住の30代の夫婦がある個人事業をやっていたとしよう。
こうした場合、法的には社会保険(健康保険・厚生年金)に加入することもできるが、一般的には国民健康保険と国民年金に加入することが多いだろう。
国民健康保険の場合は、横浜市の個人市民税(住民税はこれに神奈川県民税が加算されたもの)がどうなるかでシミュレーションが全く変わってくるが、仮に課税所得金額が100万円だったと仮定しよう。
個人市民税の所得割の税率は6%なので、年額6万円、これに均等割が3,000円加算されるので、個人市民税の合計は63,000円となる。
ちなみに、ここまでの計算は全国一律であるが、最近では住んでいる自治体によって「横浜みどり税」のような法定外普通税が均等割に加算されることも多い。
横浜市の国民健康保険料は、この63,000円(横浜みどり税を除く)を基準として、世帯の被保険者数は2人、夫婦とも30代で、介護保険第2号被保険者に該当しない(介護保険料のかからない)という条件なので、国民健康保険料を試算(平成21年度)すると年額で175,920円となる。
一方、国民年金保険料は収入にかかわらず定額なので、年額で1人当たり181,200円(平成22年度)、夫婦で362,400円となる。
しかしながら、国民健康保険料や国民年金保険料は節税をすることによって、減免の対象になる可能性がある。
ここで、彼が「一人法人」を設立した場合はどうなるか。
法人の場合は、個人事業主と違って社会保険(健康保険・厚生年金)が法的に強制適用となるが、社長個人に対する報酬は経費(役員報酬)で落とすことができる。
ここでは節税術を説明するわけではないので、あえて役員報酬は月額62,000円とする。
この金額は全国健康保険協会(協会けんぽ)管掌の健康保険料を計算する上で、第1級(最低)の標準報酬月額が適用される月給(報酬月額が63,000円未満)である。
一方、厚生年金の保険料は、この月給(報酬月額)が101,000円未満となる。
もっとも、月給(報酬月額)が62,000円(年額744,000円)では夫婦2人が日本で生活することなど不可能だが、ここでは彼らが給料以外の所得があると仮定する。
この前提で社会保険料を試算すると、社長本人の月給(報酬月額)は62,000円としているのだから、神奈川県下の協会けんぽ管掌の健康保険料(平成21年9月分から健康保険料率は全国一律の8.2%から都道府県別のものとなった)は、30代の(介護保険第2号被保険者に該当しない)場合で、事業主負担分と本人負担分を合わせて月額5,411円(年額64,936円)となる。
一方の厚生年金は月額で15,390円(年額184,680円)である。
これだけ見ると国民年金とほとんど同じように見えるが、被扶養配偶者がいれば、その人の国民年金保険料は第3号被保険者該当届を出すだけでタダ(被用者年金加入者全体で拠出)になる。
実のところ、この第3号被保険者の制度は、独身OLと共稼ぎの妻が専業主婦に手当てをあげているとも言われるほど、物議を醸しているものだが、一向に改善される気配はない。
しかも、この第3号被保険者の制度は、法的には厚生年金加入者の被扶養配偶者(20歳以上60歳未満)であること以外に、国籍や居住地要件はないため、外国在住の外国人配偶者にさえ適用できる、ということはほとんど知られていない。
もっとも、今やいかに日本の公租公課から逃れるかを考えている人の方が多いのだから、将来の円安リスクをモロに被ってまでそんなことを考える人はいないだろう。
さらに、通算で20年(240月)以上の厚生年金加入暦があれば、年金の受給年齢になったときに、被扶養配偶者がいる場合は、配偶者が65歳になるまで(要は年齢差がある夫婦でないと実質的に受給不可)加給年金をもらうことができるし、万が一、厚生年金加入者本人が死亡したときには、18歳未満の子どもがいなくても遺族厚生年金が支給される。
ちなみに、老齢基礎年金の満額は792,100円(平成21年度)と、これだけでは日本で生活できない金額であることや、遺族基礎年金の受給要件が、原則として18歳未満の子どもがいないとダメということもあり、年金不信以前に、自営業者など国民年金の第1号被保険者にとって魅力のないものになっている。
言うなれば、年金不信の蔓延する中での厚生年金は生命保険のようなものとも言えるだろうが、果たして「法人成り」は税制のみならず社会保険制度上も得と言えるのだろうか。
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