日本は2019年版外国人が働きたい国ランキングでブービーに

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落ち込む男性

去る7月4日付で、ブルームバーグが報じた「スイスが一番、外国人が住んで働きたい国-生活の質ならスペイン(原題:Bloomberg on 4 July 2019 – Top Pay Makes Switzerland No. 1 for Expats)」という記事で、外国人駐在員(expats)に人気の国として、アジア諸国では常連のシンガポール(Singapore)に加えて、ベトナム(Vietnam)がトップ10入りしていた。

ここで、我が日本はどうなのか。
ブルームバーグの記事には言及がなかったので、独自に調べてみることにした。


2018年IMD世界人材ランキングでは世界29位

トップレベルの人材にとって、どこの国が魅力があるかを示したランキングとしては、2017年にアジアでビリだと報じられて衝撃が走った(!?)、IMD世界人材ランキングが日本では有名なところだが、2018年11月にも最新のランキング(IMD World Talent Ranking 2018)が発表されている。

それによると、調査63カ国中で、日本は前年の31位から29位となったものの、アジア諸国の中では下位に低迷している。
卑しくも世界第三位のGDPを誇る経済大国を自任しているなら、この順位は屈辱的なものではないだろうか。

1年以上経った今でも、私が2017年12月12日に掲載した「日本は世界の高度人材(high-skilled talent)から見限られるのか」という状況にはほとんど変わりがないように思える。

高スキルを持った外国人の受け入れを促進しようとしている安倍政権や、中西経団連会長ら財界首脳には、日本を良くしていこうという気概がないのだろうか。
それとも、黙っていても外国人に来て貰えるなどと、傲慢な態度でふんぞり返っているのだろうか。

2019年海外駐在員レポートでは世界でブービー

ブルームバーグの記事ではトップ10までしか書かれていないので、日本は何番目なのか気になって、元ネタであるHSBC Expat Explorer – Expat 2019 Global Report(2019年 海外駐在員レポート)を当たってみると、調査対象(Expat Explorer Survey)33カ国中、何と下から2番目(32位)という不人気ぶりだった。

【単純労働の外国人受け入れ】移民が増えたら心配?日本で働きたい外国人なんて多くないから心配ナシ!」という記事の中で、「未だに『日本が住み良い国』だと思っているのは日本人だけ」と、切り捨てたアンチ・ブラック企業ブロガーの「かわずんさん」が書いていることが名実ともに裏付けられた格好だ。

生活環境

さて、日本についての調査結果を見ると、生活(Living)の項目は、総合順位(Overall)が15位となっており、細目については、

  • 生活の質(Quality of life)  13位
  • 身体的・精神的な健康(Physical & mental wellbeing) 20位
  • 満足感(Fulfillment) 18位
  • 文化的で開かれた友好的な地域社会(Cultural, open and welcoming communities) 26位
  • 政治的な安定性(Political stability) 6位
  • 生活の始めやすさ(Ease of settling in) 32位

とあるので、多少改善すれば大丈夫と、お思いになるだろうが、日本人が外国人に対して解放的であるという項目と、生活を始めやすいという項目が下位にあるので、政治が変わるのでなく、首都圏にいる日本人でさえ、その閉鎖的メンタリティが変わらないと無理だということなのだ。

少なくとも、外国人が話しかけて来たときに、手を振って逃げているようではダメだろう。
また、家族や恋人でもない人に向かって、言わなくてもわかるだろとか、空気を読めとか、察しろとか言っているようでは話にならない。

仕事の達成感や野心

続いて、達成感(Aspiring)の項目は、総合順位(Overall)が30位と著しく低い。
所得(Income)とワークライフバランス(Work / life balance)が、調査対象33カ国中でビリという不名誉をどうにかしないと、来年は総合でブラジル(Brazil)に抜かれて、最下位に沈むのではなかろうか。

  • 所得(Income) 33位
  • 手取り収入(Disposable Income) 19位
  • 経済的な安定性(Economic stability) 13位
  • キャリアの進展(Career progression)  19位
  • 能力を発揮できる可能性(Reaching potential) 16位
  • ワークライフバランス(Work / life balance) 33位

日本人でも逃げ出す労働環境のところで、外国人に働いてもらおうなどと考えること自体がおこがましいと思うのは私だけだろうか。

子供の就学環境

最後は、海外駐在員のご子息(Little Expats)に関するものだが、先進国とは思えないほど、絶望的な順位と言っておこう。
総合順位(Overall)は言うまでもなくビリだ。

  • 友達づくり(Making friends) 32位
  • 学習(Learning) 33位
  • 学校(Schooling) 24位

海外駐在員レポートの総括

単純に総括すれば、日本は外国人にとって閉鎖的で、相対的な収入も低く、ワークライフバランスは最悪、子供の就学環境も悪いと酷評されているのである。
今後、日本に働きに来る外国人は、情報から隔絶された貧困層か、日本より経済状況の悪い国の労働者しかいなくなるだろう。

日本で働くなら恩を感じろというブラック企業と社畜の不気味さ

2018年9月7日付の産経新聞には「韓国人の日本就職急増…2万人突破 雇用環境悪化で韓国政府も後押し、目標は『今後5年で1万人』」とあるので、政財界の要人はおろか、ほとんどの日本人は、自国が外国人の労働者にとって、不人気な国に成り下がっているなどと思いもしないのだ。

それどころか、「百田尚樹『日本企業が韓国人を2万人も雇うという。30年後、管理職に就いた韓国人が人事や採用で何をするか企業は想像すらできない』(2019年3月23日 政治知新)」の中にあったコメントのような勘違いが生まれる。

30年後以降、又雇って貰った恩を忘れて、日本企業を訴えるんじゃない?

私はこれと同じコメントを別のところでも見かけたことがある。
このコメント主は、多くの日本企業が、雇って貰った恩を感じられるような、素晴らしい労働環境にあるとでも思っているのだろうか。

笑うしかないだろう。
彼は、将来の日本が、日韓併合当時の徴用工のことを蒸し返している韓国人と同じことをされるのではないかと言っているのだろうが、長時間の奴隷的無賃労働(サービス残業)と、海外メディアも仰天した、会社の無制限残業命令権にお墨付きを与えたと言われる、1991年11月28日の「日立製作所武蔵工場事件」(昭和61年(オ)第840号)の最高裁判決で、過労死まで働かせるサラリーマンに対する虐待は現在進行形なのだ。

これは、労働基準法違反などという微罪ではなく、少なくとも平成の30年間を通じて、普遍的に行われていたことなので、少子化の元凶、つまり日本人抹殺計画として、国際法に定める人道に対する罪(crime against humanity)に認定されてもおかしくないレベルだ。
そこに外国人労働者を突っ込めば、訴えられるのは当然、国際問題にもなりかねないだろう。(2018年5月15日 将来の反日の芽となりかねない技能実習生という名の外国人奴隷たち

むしろ、日本人がそんな会社から逃げ出しもせず、反旗も翻さない(労組がストライキもせず、被害者遺族の訴訟も支援しない)ことに私は驚いているのだ。
それに「雇って貰った恩」などと、およそ現代の契約社会とは縁遠いことを言っているとは、日本のブラック企業と社畜たちの底知れぬ闇に、不気味さを感じざるを得ない。

そして、この時代がかった契約の概念とは相容れない言葉こそが、川人博弁護士の著書「過労死社会と日本」(1992年6月25日初版)を読んだときから私が強く感じていた日本のブラック企業と社畜たちの冷酷かつ残忍な仕打ちの正体だったのだ。

これでは、高度なスキルを持った外国人が日本に働きに来るわけがないし、仮に、日本で勤めていたとしても、そこから去った後は、仲間たちに働きに行くべきではないと言うだろう。

ブラック企業に人生を台無しにされないために

今でこそ都市部のコンビニや商店、飲み屋などには外国人スタッフが溢れ、私が書いたことなど、何を言っているんだくらいにしか思わないだろう。
しかし、頼みの外国人がそっぽを向き、少子化の弊害が隠し通すことができないほど大きくなったとき、どうなるのかはだいたい想像がつく。

6月4日付の東洋経済の記事「人手不足を嘆く地方の組織が陥る『4つの矛盾』」によれば、2019年4月から始まった単純外国人労働者の受け入れ政策も、地方から若者が逃げ出したから、その穴埋めがしたいという地方財界の下心でしかないと言われている。

その外国人も逃げ出せば、最後に行きつくところは、一旦退職した日本人中高年サラリーマンをターゲットにすることだ。(2013年6月27日 ダイヤモンドオンライン-中高年退職者を食い物に!ハローワークが紹介する”辞められないブラック企業”)(2015年4月1日 日刊SPA-ブラック雇用主が「中高年バイト」を使いはじめた理由

こういったことの餌食にならないためにも、現役時代から労働所得だけに頼るのでなく、収入源を複数持つことが必要なのだ。
もし、ご興味があれば、拙著「副業は人生100年時代のセーフティネットだ」をお読みいただければ幸いである。

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