小学校高学年の英語必修化

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日本地図とビジネスマン

平成23年(2011年)度、つまり1年3ヵ月後から小学校5年生と6年生で英語の授業が必修化されるそうだ。

遅まきながら日本の将来を担う子どもたちがグローバル社会の波に乗り遅れないようにするために政府が重い腰を上げたようにも見える。

少なくとも1990年代は海外の人々が日本語も学んで(話して)くれる傾向が感じられたが、もはや日本経済の凋落に伴ってそんなことは微塵も感じられないようになったばかりか、海外では英語くらいできるよね、という感覚で話しかけてくることさえあるようになった。

こうした英語が、世界というのは大げさだが、少なくともアジアの共通語となっている時代において、英語教育を幼少の頃からやろうという理念はいいことだと思うが、中身を見てみるとまだまだ先は長いと感じざるを得ない。

今のところ、小学校の英語は必修化されるといっても正式には教科としてではなく、小学校外国語活動というカテゴリーの中で週1回行われるもののようだ。

やらないよりはマシというような気もするが、街中いたるところに外国人がいて、日頃から交流もある地域ならともかく、そうでなければ週1回ではいくら小学生の頭が柔らかいといっても習ったことを忘れてしまうのではなかろうか。

むしろ教科でない利点を生かして、今までのように全員一律にやるのではなく、週1回だけでは物足りないからもっとやりたい、という子どもがいれば、上級プログラムを用意するなどして意欲をかきたてる工夫がいるだろう。

それに、各都道府県や政令指定都市の教育委員会が、公立小学校教員採用試験で、英作文やリスニングなど、英語に関する出題をしていると報じられているが、指導要領では「授業の実施に当たっては、ネイティブ・スピーカーの活用に努めるとともに、地域の実態に応じて、外国語に堪能な地域の人々の協力を得るなど、指導体制を充実すること。」とあるのだから、週1時間のために教員採用試験に英語の、それも実技はともかく筆記を入れなくともいいだろう。

そんなことをして優秀な教員が採用されなくなれば本末転倒である。

今でもネイティブ・スピーカーの活用例として、語学指導等を行う外国青年招致事業(JET=The Japan Exchange and Teaching Programme)で招聘されたALT(Assistant Language Teacher=外国語指導助手)がいるが、彼らの採用基準が厳しいと聞くので、それを少なくとも民間の英会話スクール並にするといった方法もある。

本格的な英会話を教えるのでなく、楽しませるレベルならそれで十分であろう。

そもそも、文部科学省の政策の中で外国語教育はお粗末の一言なのだから、その中で育ってきた日本人のほとんどはまともに英語など話せるわけがない。

穿った見方をすれば、日本人に外国人と交流させないために会話能力を身に付けさせない学習をしてきたのではないかとさえ思えるほどだ。
事実、友人の話によれば、ある文部科学省の官僚は「日本人が英語に堪能になると人材が国外に流出して困る」とか真顔で言うらしい。

しかも、最近の大学生は、1990年代に比べると海外旅行にすら行かない人が多くなっていると聞くが、もし彼らが国内においても外国人と接する機会がなければ、「外国語を用いてコミュニケーションを図る楽しさを体験したことのない人」が小学生に「外国語を用いてコミュニケーションを図る楽しさを体験させる」ということになる。

そんなことが可能なのか、教育委員会の人たちは考えたことがないのだろうか。

小学教員採用に英語の波 (2010.1.9 読売新聞)

■必修化控え、教委が4割も関連問題

昨年実施された2010年度の公立小学校教員採用試験で、英作文やリスニングなど、英語に関する出題をした教育委員会が全体の4割に上ることが、文部科学省の集計でわかった。

半数以上は前年度以降の導入で、2011年度からの小学校英語必修化に備える動きが活発になっている。
文科省によると、今春採用となる2010年度の試験で、都道府県・政令市65教委のうち、27教委が英語関連の能力をみた。うち15教委は前年度以降に始めていた。

採用試験の内容は教委によって異なるが、通常、筆記のほかピアノや跳び箱といった実技、面接などを課すのが一般的。
英語関連はこの中で様々に盛り込まれている。

2010年度は筆記試験でリスニングや英作文を課したのが23教委。実技試験で簡単な英会話などを行ったのは、筆記との重複を含めて12教委だった。
埼玉県では、特に英語に強い人材の採用に力を入れる。

2009年度採用から、英検準1級などをクリアしていると採用試験の一部を免除する制度を導入した。
この枠では昨年17人が合格。今のところ700人を超える合格者の2%程度だが、県教委の担当者は「英語に不慣れな小学校教員が多いのが実態で、リーダーになれる人材の採用が急務だ」とする。

こうした採用枠は、京都市や熊本県でも設けている。
ユニークな実技試験もある。
岐阜県教委は、「こいのぼり」や「ひな人形」などの絵を見せ、それを英語で試験官に説明させる試験を始めた。
ジェスチャーを交えても構わない。担当者は「滑らかでなくていい。会話を試みる積極性をみたい」という。

5、6年生を対象とする小学校英語の必修化を前に、文科省は小学校教員の採用試験で英語に関する出題をできるだけ課すよう、2008年12月に通知を出した。
だが、受験者の多さなどから、筆記、実技とも課していない自治体も多い。
その一つ、神奈川県教委の担当者は「英会話も試したいが、すでに音楽などの実技試験がある。受験生が多く科目を増やすのは難しい」と現場の事情を語った。(加納昭彦)

英語関連の採用試験を導入している教育委員会
(●は2009年度採用試験以降の導入)
都道府県 宮城 秋田 福島 埼玉 千葉 東京 新潟 福井 岐阜 三重 京都 和歌山 岡山 福岡
筆記
実技
都道府県 佐賀 長崎 熊本 鹿児島 沖縄 政令市 仙台 さいたま 千葉 新潟 京都 岡山 北九州 福岡
筆記 筆記
実技 実技

コメント

  1. tora より:

    どのレベルを”英語ができる”というのかは難しいところだが、一流大学卒の人たちは殆ど英語ができるんじゃないでしょうか?
    学校でやらなくともみんな自主的に学んでいるのでは?

  2. カルロス より:

    >一流大学卒の人たちは殆ど英語ができるんじゃないでしょうか?
    一流大学卒業でも読み書きはできても話せないというのは多いようですよ。
    もっとも最近では外資系を狙っている人も多いので案外話せる人も増えてきているような気はしますが

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