201*年、日本の食卓から米がなくなる日

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苦悩する女性

3月29日付のFinancial Timesの”Asia scrambles for rice stocks(米を奪い合うアジア)”という記事は現在の日本が置かれている立場を考えたとき、背筋が凍るような内容のものだった。


記事量はそれほど多くはなかったが、まさに地球規模で食糧の奪い合いが起こることを予感させるに十分すぎるほどだった。

もし、一旦ことが起これば、日本はおそらく1994年(平成6年)に起きた「平成の米騒動」以上の大パニックに襲われる可能性があるだろう。

当時の米騒動は、1993年(平成5年)の米の収穫が1933年(昭和8年)以来の凶作ということに端を発して、未曾有の米不足となり、アメリカ、オーストラリア、タイなどから米を緊急輸入したことに始まり、その中でタイ米が日本人の口に合わないことから消費者の中には国産米を求めてパニックの連鎖反応を引き起こした者もいた。

要するに、このときは食うに困って起きたパニックでなく、美食を追及するがための騒動だった。
もっとも、この件を数年後に人づてに聞いたところでは、当時の日本の商社とタイ側の悪徳商人が組んで家畜用の飼料(古米)を日本に輸出していたとのこと。
酷い奴らもいたもので、道理で不味かったわけだ。

しかしながら、近い将来に、この米騒動が国内の天候不順で起きるものでなく、今回のように外国政府による食糧の囲い込みで起きるものであった場合、日本の一般庶民が置かれる状況は極めて厳しいものになるだろう。

第一に、農業従事者の高齢化及び後継者難(参考:河北新報-田園漂流)は、数年後には地方で見慣れた田園風景が次々に喪失することを意味する。
そうでなくとも、燃料費の上昇に伴う生産コストの上昇は、それを消費者価格に転嫁できない以上、農家の収益悪化に直結し、それが離農の一因になる。

つまり、国産米の需給は異常なまでに逼迫し、高値で取引されることになるだろう。
それでは外国産米はどうか。

これも状況は1994年(平成6年)のときに比べて非常に悪くなるだろう。
当時の為替レートは日本経済に強さがあった頃の円高水準だったし、日本の一般庶民の所得水準もまだまだ高かった。

ところが201*年のときは状況は一変するだろう。
おそらく今の円ドルレートは円安に振れるし、日本の一般庶民の所得水準は負担増の連続で地に堕ちる。

一方で外国産米は「囲い込み」で高値に吊り上げられた挙句、原油高で輸送コストも嵩む。
政府が補助金を出そうにも財政難で「無い袖は振られぬ」ことになりかねない。
消費者価格は、うなぎ上りになり、各地で「売り惜しみ」や「米泥棒」が頻発するようになるだろう。

まさに地獄絵のようだ。
はっきり言って想像もしたくない。
ことは主食の問題だから余計に深刻だ。

ところが、今の日本はどうか。
食糧自給率が低いのにもかかわらず、賞味期限が1日過ぎただけでパニックになって騒ぎ立て、販売者側はそれを恐れて大量の食材を廃棄する。

そんなことをしていれば今にバチが当たるだろう。
先人は言ったものだ。「堂に怡(よろこ)ぶ燕雀は後災を知らず(目先の太平に安心して、後日の災難に気のつかぬこと)」と・・・

Asia scrambles for rice stocks(米を奪い合うアジア)
Financial Times by Daniel Ten Kate in Bangkok

Governments across Asia were rushing to secure rice stocks on Friday in the wake of a 30 per cent price jump in international markets.

先週の金曜日、国際市場で米の価格が(燃料価格高騰の懸念から)30%も急騰したことを契機にアジア各国政府は大挙して米の在庫を確保しようとした。

Vietnam said it would reduce rice exports this year to 3.5m tons, from a projection of between 4m and 4.5m tons. India raised its minimum export price to $1,000 (EUR635, £500) per ton, up from $650 per ton, in a bid to keep domestic prices low.

ベトナムは400万トンから450万トンを予定していた今年の米の輸出を、350万トンに減らすことになるだろう、と言った。
インドは国内価格を安く抑えるために、最低輸出価格を1トン当たり650ドルから1,000ドル(635ユーロ、500英ポンド)に引き上げた。

In Thailand, the world’s largest exporter, millers were storing rice and defaulting on contracts with exporters. “Exporters who have stock are making a lot of money, as millers who have supply contracts are not actually delivering the rice,” said Vichai Sriprasert, president of Riceland International, a Thai rice exporter. “I believe the losses are running by about $200 per ton for those who don’t have physical control of the rice.”

世界最大の米の輸出国であるタイでは、精米業者が米を貯めこみ始め、輸出業者との契約が不履行となりつつあった。「在庫がある輸出業者は、契約をしている精米業者が現に米を供給を止めているために大金を儲けている。私は米の物的管理をしていない人たちのために1トン当たり約200ドルの損失が続くと思っている。」と、タイの輸出業者の1つであるライスランド・インターナショナル社のスリプラサート社長は言う。

The moves follow measures by Egypt and Cambodia to ban rice exports, which prompted world prices to hit an all-time high on Thursday. Global rice stocks are at their lowest since 1976.

この動きは米の輸出を禁止したエジプトとカンボジアによる(自国米の囲い込み)政策を他のアジア各国が追随したもので、先週の火曜日には米の国際価格は史上最高値を付ける結果となり、世界の米の在庫は1976年以来、最低となった。

The record prices for Asia’s food staple have raised fears of social unrest and prompted donor organisations to ask for more funding to maintain food distribution programmes.

このアジアの主食の高値は社会不安への恐怖を引き起こし、食糧の流通計画を維持するためにもっと資金を供給するよう求めるための資金援助団体の行動を促進した。

The World Food Programme, which appealed for $500m in February, said the price rises would cause its operational costs in Asia to rise by $160m. It said in Afghanistan, $50m would buy 189,000 tons of food last year, which would feed 3.5m people. This year, the same amount would buy only 112,000 tons to feed 1.9m.

去る2月に5億ドルの援助を求めた世界食糧計画は、米の価格の高騰はアジアにおける調達コストが1億6000万ドルまで上昇するだろう、と言った。
アフガニスタンでは昨年、350万人の食糧を確保するための189,000トンの食糧を買うのに5千万ドルかかったと言われている。同じお金で今年は、190万人分、112,000トンしか買えないだろうと言われている。

India said it would sacrifice blistering economic growth in order to tame inflation as latest figures reached a 13-month high of 6.7 per cent on the back of spiralling fuel and commodity prices. “We are determined to curb inflation even if we have to live with slower growth,” Palaniappan Chidambaram, the finance minister, said.

インドは、急上昇する燃料と商品価格を背景に、過去13ヶ月で最高の6.7%に達した現在のインフレを抑制するために、急激な経済成長を犠牲にすることになるだろう。「我々は、たとえ経済成長が減速することになろうともインフレを抑制することを決意した」とチダンバラム財務大臣は言った。

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コメント

  1. 3/30の日本農業新聞に、カンボジアが米を「2カ月禁輸」との記事が出ていました。
    同国内の米の値上がりを抑えるための措置。
    恐れが杞憂で終わってくれればよいのですが・・・

  2. カルロス より:

    レバレッジ君さん
    >3/30の日本農業新聞に、カンボジアが米を「2カ月禁輸」との記事が出ていました。
    おお、そうなんですか。
    でも2ヶ月ですみますかね?
    あっちは2期作とかやってるんで多少の期待はありますが

  3. tora より:

    まさにですなあ。
    今から備えておかないとどうなるのか。
    食べないと人間、死んでしまいますからねえ。

  4. カルロス より:

    toraさん、初めまして
    今から備えるといっても家庭菜園じゃねえ(笑)
    それこそ泥棒にやられますね。
    逃げますか?国外に・・

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