クールビズに見る日本の病理現象

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驚く外国人男性

クールビズ(cool biz)は、環境省が音頭を取って、温室効果ガス削減のために、夏のエアコンの温度設定を28℃に設定し、その中でも快適に過ごすために、夏のノーネクタイ・ノー上着ファッションを提唱したものだ。

これ自体は私は大賛成だし、むしろ遅すぎたくらいと思っている。
しかしながら、私がこれを日本の病理現象と言っているのは、1998年のスペイン旅行記でも書いたように

さしものスペイン人でも出勤前は慌ただしくしているのが、バル(bar)にいるとよくわかる。

でも、よく見ると、真夏にスーツにネクタイなんていう格好は皆無だ。一応は、襟付のシャツにスラックスを穿いているが、クソ暑くなるのがわかっていてそういうものを着て歩こうなんて思う人はいないらしい。

もちろん、オフィスに行けば、来客用にそういうものが用意している人もいるだろうが、銀行などに入った時もスーツの上着を着ている人は、見かけなかったように思う。要は、夏でも涼しいオランダみたいな地方の人と、超エリートだけがそういう格好をしているのであって、日本のように酷暑の中で、そういう格好をするのは「主催者なき我慢大会」以外の何物でもないということに、日本のサラリーマンはいつになったら気づくのだろうか?(クールビズ-もう南の島基準にしちまおう

ということすら日本人は勇気(courage)を持って変えていこうという気概が全く感じられないことだ。

ベンジャミン・フルフォード(Benjamin Fulford)が「泥棒国家の完成」という著書の中で、官僚は改革を先送りする臆病者(coward)と言っているが、私は日本のサラリーマン全体が臆病者にしか見えない。

事はクールビズだけの問題ではない。
サービス残業や過労死の問題になぜ立ち上がろうともしないのか、同僚が真綿で首を締められるように(会社に)殺されていくのをむざむざ見殺しするのはなぜか?

途上国に比べて日本はマシだ、なんていう議論はあまりにもバカげたものだ。
ほかの民主主義国で職場の同僚が殺されても何もしない国があったら教えてもらいたいものだ。

話は元に戻るが、クールビズというのは、本質的に政府が音頭を取り、企業にやってください、と頭を下げるものだ。

そこには「主催者なき我慢大会」を強いられているサラリーマン本人、それにも増してオフィスや電車の冷房の効かせ過ぎで真夏に「冷え性」などという職業病を患うことになっている女性の姿を見ることはできない。

女性は懸命にSOSを発しているが、日本の企業論理でそれは全く無視され、サラリーマンは見えない何かに怯えて戦々恐々としている。
要するに、個人の健康や労働者に快適に仕事をやってもらおうというよりも、バカげた規則や慣習にいかに従えるかという忍耐力(協調性)を試し、「お前だけ快適に仕事をさせてなるものか」という妬みが渦巻いている職場が多すぎるのだ。

これをマゾヒストのメンタリティと、明確に言い切ったのは、元厚生省の役人で「お役所の掟」という本を書いた故宮本政於氏だ。
彼の著書は英訳されて「拘束衣社会(Straitjacket Society)」という本としても出版されたが、まさに酷暑の日本でスーツを着ているサラリーマンは、拘束衣を着ているとしか言いようのない感情を私は抱いているのだ。

何が彼らをそこまで怯えさせているのか?
各種調査でも、なぜクールビズができないか、という理由で、下位者(部下や下請け業者)が上位者(上司や発注業者、顧客)に気兼ねするというのが非常に多い。

しかし、そんなことぐらいで不利益を被ることはそれほど多いのか?
クールビズごときで小言を言われ、顰蹙を買うようであれば、今後、今まで(先輩たちが)やってきたことを否定しなければならない局面で、どうなるのか?

一部の政治家や官僚が抵抗勢力と言われて叩かれているが、私に言わせれば、そんな貴方の会社の上司や先輩、取引先、顧客も同じということになるだろう。
下記の記事だけでは即断はできないが、クールビズを実践しても、ほとんど何のトラブルもなかった、要は本人の気持ち次第と言っているのだ。

はっきり言おう。
今の日本、旧弊を打破しなければ何事も進まないのだ。
クールビズごときで、と言うなかれ。
私は少なくともサラリーマンの7割(国民の多数派)が臆病者(coward)のままで終わるかどうかの試金石にしているのだ。

クールビズ:8割賛成だけど実践3割-男性「気が引けて」
ダイキン工業まとめ (2005.7.6 毎日新聞)

「8割はクールビズに賛成。でも、実践したことがあるのは男性の約3割だけ」という実態が、ダイキン工業(6367)が5日まとめた調査で明らかになった。
気持ちは賛成でも、実行しようとすると社内や取引先などが気になって踏み切れないサラリーマンの本音が読み取れる。

調査は6月10~12日にインターネット上で実施し、20~50代の会社員男女計800人が回答した。
男性のクールビズが広まることについては、「非常によい」「まあよい」の回答が計80%に上った。

ところが、男性回答者に実際に仕事で着ている夏の服装を尋ねると、「ワイシャツにネクタイ」「スーツにネクタイ」が計61%。
「ワイシャツにノーネクタイ」「カジュアルウエア」の計28%を大きく上回った。

クールビズにできない理由(複数回答)は、「取引先に不快な印象を与える気がする」(40%)「会社の規則」(32%)「軽装は許されない雰囲気が社内にある」(28%)など。
ところが、クールビズ経験者たちに仕事上でトラブルがあったかどうかを聞くと「ない」が89%と圧倒的だった。

ダイキン工業は「クールビズに腰が引けるのは、実は本人の気持ちの問題が一番大きい」と分析している。

コメント

  1. クールビズ−もう南の島基準にしちまおう

    クールビズ―― 私は大賛成です。 くそ暑く、湿度が高い日本の夏にネクタイをしめて、長袖のワイシャツを着て、スーツを着こむなんて馬鹿げています。 ビジネスマンが軽装になることでエアコンの使用量がへり、冷えすぎで辟易していた事務職のOLさんがすくわれ、CO2の排…..

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