休暇を取れば労働生産性も上がり長生きもできる?

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イビサ島のカラ・コンテ(Cala Comte)

先月の15日、CNNがTake your vacation, or die?(休暇を取るか死ぬか?)という衝撃的な表題の記事を掲載した。

日本語訳は今月の2日、休暇取得で一石三鳥? 心臓発作になる前にとソフトタッチな表題になっているが、記事の要旨は、「休暇を取らない人は、取る人に比べて早死にする危険性もある。(If people skip vacations, there’s a chance that they may die younger than those who don’t.)」「長時間労働が必ずしも利益の増加や生産性の向上につながるわけではない。(Working more hours does not necessarily translate to a better bottom line or higher productivity.)」と、先進国の中で休暇取得率が低いとされる日本人ビジネスマンには頭の痛いものだ。(2009年5月27日-今年の夏休みはお預け? 2010年8月15日-ワークライフバランス、太平洋戦争の敗戦から65年目に思うこと

この記事では日本のことには全く言及していないが、記事の論旨が正しいとすると、苛酷な労働環境に喘ぐサラリーマンが多ければ多いほど、それだけ早死にする人も多くなり、年金財政が助かるという穿った見方もできる。

日本政府はそれを狙っているのか、と思えるくらいにデフレ不況が続くような政策を取り続けている。

一方で現役サラリーマンが鬱病になったり心身の異常を訴えて戦力にならなければそれだけ企業の生産性は落ちることになる。
世間では労働環境が悪い会社をブラック企業と銘打っているが、今の日本ではブラックではない職場を探す方が困難なような気がしないでもない。

日本観光振興協会が「1ウイークバカンス」キャンペーンをやっていて、主要駅の構内でポスターを見かけることもあるが、どことなく侘しさが漂うのはそのためだろう。

本当ならこんなキャンペーンをしなくとも皆が1週間くらいの休暇が取れるようになればいいと思うのは私だけではあるまい。

ところで、「ギリシャ人の年間平均労働時間は2017時間と欧州で最も長い(Greeks work the most in Europe — averaging 2,017 hours per year.)」とあるが、まさか、国家財政だけでなく統計も粉飾しているのではないだろうか。

それともただ職場にいるとカウントされている時間が長いだけか。
ドイツがフランスを並んでバカンス天国ぶりなのはもっともだとしても、ギリシャ人が労働時間が長いと書いている記事には首を傾げざるを得ない。

いずれにせよ、外国の長所を真似てきた戦後の日本が休暇(バカンス)だけは真似しなかったのはサラリーマンにとって悲劇であろう。

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休暇取得で一石三鳥? 心臓発作になる前に (2012.8.2 CNN Japan)

(CNN) 「心臓発作を起こしてもいいのか」、休暇を返上する際には常にそう自問すべきだ。
休暇を取らずに働き続けると、さまざまな健康問題を引き起こすことが複数の調査で分かってきた。また休暇を取らない人は、取る人に比べて早死にする危険性もある。

ストレスが健康に悪いのは周知の通りだ。
ストレスは潰瘍や体の痛み、不眠症など、さまざまな問題を引き起こす。
そして、このストレスへの有効な対処法の1つが休暇を取ることなのだ。

ある調査で、冠動脈性心疾患(CHD)を発症する危険性が高く、さらに毎年休暇を取っていなかった人は、心臓発作で死亡する確率が一般の人に比べ32%も高かった。

また別の調査で、毎年最低2回休暇を取っていた女性と、6年に1回以下しか休暇を取らなかった女性とを比較したところ、驚くことに毎年休暇を取っていなかったグループは、冠動脈性心疾患や心臓発作を起こす確率が約8倍も高かった。

我々は普段、仕事のことで頭がいっぱいだ。
中には、休暇の取得を弱さの表れととらえたり、何年も休暇を取らなかったりしたことを誇りに思う人すらいる。
また、休暇を取る権利が与えられているのに、休暇を取ることに罪悪感を覚える人もいる。

米国の一般の労働者が1年に取得できる休暇は14日だが、大半の人はわずか12日しか休暇を取っておらず、さらに全体の25%は全く休暇を取っていない。
米国は先進国で唯一、労働者への有給休暇の付与が法律で義務付けられていないのだ。

対照的なのが欧州だ。
欧州連合(EU)では、毎年20日間の有給休暇の付与が義務付けられている。
では、平均寿命が長いのは米国と欧州のどちらか。

答えは当然ながら欧州だ。
米国は、世界の平均寿命ランキングで28位というありさまだ。
もし自分の命が助かるだけでは2、3日の休暇を取る理由として不十分であれば、休暇を取るべき理由がもう1つある。
実は、毎年休暇を取る人は、取らない人に比べ生産性も高いのだ。

2010年に米国で行われた調査で、回答者の35%が休暇の後、仕事に対する自信や生産性が向上したと答えた。
また、休暇は元気を回復する効果があることも分かっている。
休暇中また休暇の後しばらくは、夜ぐっすりと眠れる。
また休暇の後は脳の回転も速くなる。

意外に思う人もいるだろうが、長時間労働が必ずしも利益の増加や生産性の向上につながるわけではない。
例えば、ギリシャ人の年間平均労働時間は2017時間と欧州で最も長いが、ギリシャ経済は破綻状態にあり、ギリシャ人の暮らしは決して裕福とはいえない。

一方、欧州一の経済大国であるドイツを見てみよう。
ドイツ人は他の国民より長時間働いていると思う人もいるだろうが、決してそんなことはない。

ドイツ人の年間平均労働時間は1408時間で、年間の総労働時間は欧州25カ国で下から2番目の短さだ。
またドイツ人は1年間に平均30日間の有給休暇を取る。
これは欧州で最も多い日数だ。

このように、休暇は疲労回復、健康増進、生産性向上と、まさに一石三鳥である。
まだ夏は始まったばかり。
もし休暇を返上しようと考えているのであれば、今からでも遅くはない。
是非、休暇の取得を検討すべきだ。

英文記事:Take your vacation, or die?

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