ここ2年ばかり、私は、身体障害者手帳や健康保険、年金関係の手続きを始めとして、役所や銀行に行く機会がたびたびあるが、そこで行われる本人確認の儀式(!?)について一言申し上げたい。
ここで、儀式(!?)と私が書いたのには理由がある。
コロナ禍における私の経験では、パスポートの受け取りと、成田空港のアシアナ航空のチェックインカウンター以外で、実質的な本人確認をされたことがないからだ。
本人確認という名の儀式
これらの場所以外で行われる本人確認は、私に言わせれば、単なるセレモニーだった。
接客スタッフ:「ご本人確認のできる顔写真付きの証明書はお持ちですか?」
私:(マイナンバーカード or 身体障害者手帳を出しながら)「これでよろしいですか。」
接客スタッフ:(私にマスクを外せとも言わず)「ありがとうございます。これで結構です。」
私:「証明書の写真と私が同一人かどうか見比べなくてもいいのですか。」
接客スタッフ:???(何言ってるんだこの人はという顔をしながら)??? 黙秘・・・
私:「証明書の写真と私を見比べないのなら、顔写真が付いてなくても同じではないですか。」
接客スタッフ:「こういうご時世なので・・・」
彼らはコロナ禍で、来客者にマスクを一瞬でも外させると、新型コロナウイルスに感染するとでも思っているらしい。
その一方で、まともに本人確認をしている部署に対して、マスクを外させられたと苦情を言っている市民がいることは驚嘆に値する。
日本における本人確認の多くは「写経」
そもそも日本においては、長い間、印鑑が本人確認の道具として、証明書の提示と同等の扱いを受け、さらには、健康保険証などの顔写真が付いていない書類が、未だに本人確認の書類として有効となっているので無理もないが、わざわざ顔写真付きのものを提示させておいて、持ってきた本人が同一人であるかどうかを確認しないというのはどうかと思う。
コロナ禍でマスクを外す、外さないという行為で、それは明確にわかったが、コロナ禍前でも、接客スタッフは、証明書の番号などを申請書に書き写すことに必死で、ほとんど私の顔など見ていなかった。
私はこれを「写経」と呼んでいた。
日本の役所や銀行の本人確認作業のほとんどは「写経」なのだ。
日本では役所を始めとして、未だに窓口に来い、来いということが多い。
なぜかと聞くと、本人確認が必要だと言われることが多いのだが、接客スタッフが単に「写経」をするだけなら、対面で手続きをする必要などどこにもないだろう。
このことで、私の友人から面白いことを聞いた。
ある地方都市の役所で、印鑑登録をしようとしたところ、内部で登録印鑑(印影)について論議があった挙句、1時間もかかって手続きが完了したらしい。
もちろん、彼女は相当に憤慨していたのだが、私はあえて質問した。
私:「運転免許証の写真と貴方が同一人であることを確認するために、マスクを外せと言われなかったでしょ。」
相方:「そう言えば、言われなかったね。」
私:「印鑑登録でさえ、そのレベルなんだよ、日本は。それで印影がナンチャラには1時間か。さすがだね。」
マネロン大国を招く杜撰なKYC (Know Your Customer)
余談になるが、2021年9月1日付の週刊文春が「マネロン天国の汚名を返上せよ 前代未聞の『金融庁調査』入手」という記事を配信しているが、2019年3月(2019年3月27日 産経新聞-日本は「マネロン天国」の汚名返上なるか 国際組織が今秋審査)から一歩も進んでいないのか。
金融機関で顔写真の付いていない書類を、本人確認書類としているのに加え(全国銀行協会-本人確認書類って何?)、顔写真が付いている書類を提示したところで、接客スタッフは「写経」をしているだけなので、当然の結果とも言えるが、ひどいものではないか。
マネロン防止のイロハであるKYC (Know Your Customer)の基本が欠落しているのだ。
いい加減に、役所や銀行における本人確認書類は、顔写真付きのものに限ればいいものを、それができない理由って何だろうか。
マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF: Financial Action Task Force)が言う行動要請対象の高リスク国・地域(High-Risk Jurisdictions subject to a Call for Action – 21 February 2020)の一つは北朝鮮(Democratic People’s Republic of Korea)なのだ。
日本の役所や金融機関の無防備ぶりに北朝鮮の工作員たちは笑っているだろう。
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