観光は日本の基幹産業となり得るか

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寝台特急「あけぼの」

鳩山政権は「観光立国の実現は、今後の我が国の成長戦略の柱として位置づけられるべき最重要課題」として位置づけた。

豊富な観光資源を持った日本で、ようやくそれを生かすための戦略を取ることに舵を切ったとも言えるが、自民党政権下では観光地へのアクセス(高速道路、新幹線、空港)の充実(利権!?)には熱心だったが、そこに集客できるか否かについては、ほとんど無策とも言えるものだったので、これも政権交代によってもたらされたものなのだろう。

もはや自動車産業を中心とする第二次産業が日本の基幹産業とはなり得ない時代になっている中で、観光産業を日本の基幹産業として育てていくとしたことは遅まきながら評価したいと思う。

橋下大阪府知事もシンガポールを視察して溝畑宏・観光庁長官にカジノ構想を訴えたそうだが、「シンガポールの政策を見習え(2005年3月27日2006年5月27日2007年1月8日2007年6月26日)」と書いてきた私もこの構想には賛成である。

ついでに言わせてもらえば、成田空港と関西空港周辺のトランジットホテルをカジノホテルにしたい、という構想を持っていればもっと良かったと思う。

ただ、シンガポールに見習えというには、日本の金融業界が、ETF 世界を舞台にした金融商品の著者、浅川夏樹氏曰く、未だに「前例がない」などと思考停止しているほどお粗末なので、今後はカジノと風俗産業で経済発展をはかるマカオに注目する方が日本には相応しいかと思う。

特に風俗産業における日本のホスピタリティは外国人にも相当評価が高いと聞くからだ。
いずれにせよ、カジノも風俗産業も日本の法律を変えない限り、日陰者の(犯罪として摘発の対象となり得る)存在なので、これらをどうするかが今後の課題とも言えよう。

ところで、1月27日付の朝日新聞の記事で「休暇ずらせば快適親子旅?観光庁、複数自治体で実験」というのがあり、この中で2009年12月21日に開催された観光庁の休暇分散化ワーキングチームの会合において、星野委員が提言した「休暇の分散化のメリット」が一部紹介されているが、彼の提言は至極もっともなことである。

今までもそういうことを言っている人はいたのだろうが、政府の中枢の会議で発言する機会がなかったのか、あっても記事にならなかったのであろう。
少なくとも自民党政権下では、アクセス(高速道路、新幹線、空港)さえよければいいみたいな風潮があり、それが地方の疲弊を招く一端になっていることは言うまでもない。

特に、「観光産業は夏休みやGWなどの休日100日は黒字だが、残りの265日は赤字。」という部分は日本の観光産業が抱える構造的な問題を示唆している。

つまり、日本の観光地で過ごすよりも海外旅行の方が割安に感じるのは、黒字日とされる100日で1年分の利益を稼ぎ出すための料金設定になっているということが大きいからだ。
その結果、観光産業に従事する人たちの賃金水準は相対的に低く、正規雇用もなかなか進まないということになっている。

一方で、教育現場からは「ほかと違うことをすることに抵抗感を持つ学校は多い」、経済界からは「欧米と違い、日本のサラリーマンは、みんなが働いているときに休みにくい」という声があがる、と記事には書かれている。

情けない限りだ。彼らはこの先も一生こんなことを言い続けるのだろうか。
それでいてこういう輩は政府へのおねだりだけは一人前だ。

この休暇分散化ワーキングチームに関して一応の結論が年度末には出されるようだが、2月に行われる経済界、労働界、教育界等からのヒアリングが芳しいものでなければ、この構想も頓挫することが予想される。

私に言わせれば、経済界に対する休暇取得促進の啓発など、バブル景気の余韻が残り、国家公務員や金融機関の週休2日制が始まった1990年代初頭でも頓挫したのだから、失われた20年、リーマンショック後の不況下の今やそんなことは夢物語であろう。

実際、国土交通省が2002年(平成14年)6月にやった「ゆとり休暇(有給休暇取得率向上)キャンペーン」も何ら効を奏していない。
それならば、まず官公庁の休日を、今の土日から日月にするなどとした方が「休暇の分散化」の第一歩が踏み出せる可能性が高い。

今や地方自治体に対しても土曜を開けてくれ、という声が多いようなので、いっそのこと休日をずらせばいいと思う。
ちなみに昨年11月11日にオリコンが発表した「24時間完全営業が求められている施設TOP10(オリコンモニターリサーチ会員の1000名を対象)」の中で役所(区役所・市役所)は堂々の2位だ。

私に言わせれば、このアンケートのランキングに入っているもので、24時間やっていないと「本当に困る」ものなど全くないが、実際問題として、お互いの休日をずらすことで解決することは多いだろう。

結局のところ、民間企業が土日休みを動かしたくない、そこに働くサラリーマンが休みなんか取れるかと言い続けるならば、反対に官公庁が日月休みに移行してみればいい。

そうすれば、今役所が言われている平日に行けないという苦情の大半はなくなるだろう。
それに、お互いの週末旅行もかなり楽になるはずだし、相対的に観光産業の収益も増えることになるだろう。

休暇ずらせば快適親子旅?観光庁、複数自治体で実験 (2010.1.27 朝日新聞)

夏休みやゴールデンウイーク(GW)をずらして休み、のんびり旅に出よう-。
観光庁は今年、全国数カ所の自治体で、こんな実験を行う。
休みを分散すれば渋滞が減り、ホテルや飛行機も安く利用できるというのが狙いだ。

小中学校の長期休暇をずらし、親が勤める企業などにも参加を呼びかける。
「家族の時間が増える」と同庁はアピールするが、うまくいくだろうか。

「観光産業は夏休みやGWなどの休日100日は黒字だが、残りの265日は赤字。解消するために、たとえばGWを埼玉は5月の1週目、 神奈川は2週目、千葉は3週目、東京は4週目・・・とずらしてはどうか」

昨年12月の政府の観光立国推進本部の会合。
温泉旅館の再生などを手がける星野リゾート(長野県軽井沢町)の星野佳路(よしはる)社長はこうプレゼンテーションし、長期休暇をずらすメリットを説明した。

日本では長期休暇がほぼ全国一律なので旅行需要も一時期に集中する。
宿泊費や航空運賃なども高く設定されがち。渋滞も起きる。これを嫌って旅行を控える人が出てくるという悪循環にある、との問題意識から生まれた発想だ。

観光庁によると、フランスでは国を三つのゾーンに分け、学校の冬休みと春休みをずらして取得させている。ドイツでは州ごとに夏休みの時期が違う。

これでリゾート地の混雑は抑えられ、年間を通して需要を喚起できるという。
繁閑の差がなくなれば旅館などの観光施設は安定した雇用をしやすくなり、サービス向上にもつながる。
もてなしの質が上がれば、外国人の観光客も増えると期待される。

そこで観光庁は新年度予算に、休暇分散化を検討する委員会の設置費などとして2800万円を計上した。
分散化に協力してくれる自治体を都市部と地方部から数カ所募り、小中学校の夏休みの一部を秋に移す実験をする。

実施後のアンケートで渋滞状況や経済効果などを検証する。
すでに複数の自治体と交渉を進めているという。
親が子どもと一緒に休暇を取れなければ意味がないので、企業や商工会議所にも協力を呼びかける。

だが、不安要素もある。
教育現場からは「ほかと違うことをすることに抵抗感を持つ学校は多い」「インフルエンザの影響で授業日程が厳しい中、新たな休暇を学校が設定できるか」との声があがる。

経済界からは「欧米と違い、日本のサラリーマンは、みんなが働いているときに休みにくい」との指摘もある。
観光庁は、「旅行喚起だけでなく、家族の時間を増やし、国際的に低いと言われる有給取得率の向上も考えてほしい」と話す。
前原誠司国土交通相は「観光はこれからの日本経済を引っ張っていく。まずは社会実験で休みをずらすことに慣れてもらいたい」と話している。(佐々木学)

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橋下知事、観光庁長官にカジノ構想訴える (2010.1.29 朝日新聞)

橋下知事は28日、府庁を訪れた溝畑宏・観光庁長官と会談し、大阪のカジノ構想をアピールした。
シンガポールでカジノを視察した知事は「カジノは稼ぐエンジン。所得再分配機能も担う。都市部に置いて稼ぎ、福祉や地方に回せばいい」と持論を展開。カジノ設置に必要な法案の早期制定を求めた。
溝畑長官は「頭から否定ではない。成長戦略会議のテーマにも上がっている。いろいろな角度から吟味する」と述べた。

コメント

  1. mustafa より:

    自民政権が観光に関してアクセス整備以外関心がなかったような書き方は大いに異議ありですが、それは置いておいてハッピーマンデーのように既にあるものをずらせば済むという話はまだまだ「できる」事だと思います。
    クールビズのように、本気で導入を推進すれば(有給休暇消費率70%以上を人に優しい企業認定するとか)できる可能性は高いと思うのですがね。(ただ日本の公休日は多すぎる気はします)
    ただ役所を土曜日も開けるだけならともかく日月休みにずらしただけでは関連業務ができる日が減ってしまうので現実的ではないかなとも思います。
    あと子供がいなければ職場の話だけで済みますが子供がいるとどうしても休みは統一的に休まないと上は休みだけど下は休みでなくて結局行けないということになりかねないですね。

  2. カルロス より:

    mustafaさん、コメントありがとうございます。
    >クールビズのように、本気で導入を推進すれば(有給休暇消費率70%以上を人に優しい企業認定するとか)できる可能性は高いと思うのですがね。
    これについては私はかなり懐疑的ですよ。
    今まで20年間、政府は何もやってなかったわけではなく、サラリーマンに休暇を取らせるための政策はそれになりに立案していたと思います。でも実行までに至るまでに、できない理由が経済界から延々と出てきて、結果的にキャンペーンしかできなかったと見ています。
    >あと子供がいなければ職場の話だけで済みますが子供がいるとどうしても休みは統一的に休まないと上は休みだけど下は休みでなくて結局行けないということになりかねないですね。
    これは今でも「家族団らん」のためには親子で休んでいい日が何日かあるようですよ。
    もちろん1週間連続とかではないですが・・・

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