去る10月7日の午後11時前、千葉県北西部を震源とするマグニチュード 5.9の地震が発生し、居間で寛いでいた私は、10年前の東日本大震災を思い出すほどの揺れを感じていた。
携帯電話のアラームが鳴り響き、テレビでは速報が流れていた。
しばらくすると、首都圏の電車が止まったことが報じられたが、私が驚いたのは帰宅難民と呼ばれた人の多さだった。
私はテレビで流れる地震速報を見ながら、
コロナ禍前と何も変わっていないんだ。
テレワークできない(しない)人がこんなに溢れているのか。
と感じた。
10月1日に全国的に緊急事態宣言が解除されたとはいえ、東京都下の飲食店の営業は、リバウンド防止措置によって、午後9時までに制限されていたからで、掟破りの店があることを差し引いても、あまりにもサラリーマン風の人が多いように思えたからだ。
私がそれにも増して驚いたのは、翌日の朝に流れた「JRの駅で通勤時間帯に長蛇の列 地震影響で入場制限も」という記事で、出勤前のテレビでも延々と電車を待つ人の列が放映されていたことだ。
私はターミナル駅(横浜)を経由しないルートで出勤したので、そんなことに巻き込まれることはなかったが、iPhoneで映し出される映像では、溢れるばかりの人たちが、酷暑の中でマスクを付け、何時間もかけて出勤しようとしていた。
私がそれに巻き込まれていたら、有給休暇が残っていないにもかかわらず、問答無用で自宅へ引き返したと思うが、報道を見て思い出しのが、9年前に掲載した「雪で休みのローマ、交通マヒでも出勤の東京」だった。
多くの日本のサラリーマンは、大災害に見舞われようが、疫病が大流行しようが、そこまでして出勤しなければならないのか。
それこそテレワークができる人なら在宅勤務、有給休暇が取れるサラリーマンなら休めばいいと思うのは私だけなのだろうか。
2021年2月18日付で掲載された「エクスペディア 世界16地域 有給休暇・国際比較調査 2020発表!」(ITメディアビジネスオンライン-2020年、世界的に有給休暇の取得が減少 日本は?)では、日本人の有給休暇取得率の低い理由のトップが、「緊急時のために取っておく」で、これは毎年のように上位に来るのだが、大災害で電車が止まったときは、彼らにとって緊急時ではないのか。
何が彼らを突き動かしているのだろうか。
2017年10月4日付のダイヤモンドオンラインで、橘玲氏は「日本人は『会社が大嫌い』で『会社のことを信用していない』」という記事を掲載しているが、これが事実だとすれば、信じられないことだ。
第一、そこまでして出勤したところで、仕事のパフォーマンスは決して上がらないし、下手すれば、会社へ行くだけで、ぐったりと疲れて、ただ単に自宅と職場を往復するだけになる。
それとも、彼らは周囲(職場の同僚)に迷惑がかかるのではないかという思い込みだけで、コロナ禍で禁忌とされる三密の状況下にもかかわらず、自分の命を賭けて出勤しているのか。
彼らは職場の迷惑(他人の感情)よりも、自分や家族の健康に思いを巡らせることはないのだろうか。
2021年9月29日付のプレジデントで、中川淳一郎氏は「他人の目を気にする『忖度マスク』がはびこる限り、日本のコロナ騒動は絶対に終わらない」と寄稿しているが、今回のことは、さしずめ「忖度出勤」、サービス残業は「忖度残業」と定義すれば、日本人が意味のない他人への忖度を続ける限り、自分や家族が幸せになることは永遠にないだろう。
日本では、他人に忖度をすることは、一見すると「思いやりがある」などと美談になりがちだが、それが真意でないことは、自分以外の第三者にも強要する人間が後を絶たないことでも証明されている。
「俺がこんなに(苦労して)やっているのに・・・お前は何だ」と言わんばかりの態度を取る人間が、周囲にまき散らす負の連鎖が日本中を覆っている。
それが日本の暗部たる同調圧力の正体であることを知るべきなのだ。
そう、ノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎氏が言った「日本に戻りたくない理由の一つは、周囲に同調して生きる能力がないからです。(So that is one reason why I don’t want to go back to Japan. Because I’m not capable of living harmoniously.)」(2021年10月8日 The Asahi Shimbun Globe+)という発言は、日本に蔓延る同調圧力への痛烈な皮肉なのだ。
コメント
夜の地震に続いてJRの停電、それでも行列して電車を待つ人々の映像を見てまったく同じことを考えていました。
皆さんまじめと言うか、頭の配線が「とにかく会社に行かなきゃ」と固定されちゃってるんでしょうね。まさに社畜。
それをテレビで見ていられる幸せ、と言っても現役時代でもたぶん私は出勤しなかったと思いますけど。
こんばんは
>それをテレビで見ていられる幸せ、と言っても現役時代でもたぶん私は出勤しなかったと思いますけど。
そこで思い留まれるか、どうしても行かないといけないなら、午後から出るとか考えないといけないですよね。
たぶん、あそこにいても出社は昼休みの頃、いや~大変でしたよ、という言葉を言いたいがために行くようなもの、日本ではそれが尊ばれるんですがね。