三密となった緊急事態宣言下のみずほ銀行で商品勧誘方針を憂う

この記事は約11分で読めます。

みずほ銀行横浜駅前支店

2020年5月15日、父の三十三回忌を終えた翌日に、私たちは、関東の一都三県の新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が未だに残る中で、母に帯同して金融機関巡りをすることになった。

どうしても避けられない用事だったとはいえ、平時なら金融機関が最も混雑する五十日(ごとうび)に行くのに、若干の懸念がなかったわけではなかった。

意外にスムーズに終わった「ゆうちょ銀行」

横浜駅西口郵便局

最初は、ゆうちょ銀行の窓口での手続きが最も難航するかと思われた。
何しろ、ここは官営時代からの悪しき名残で、手続きは印鑑を持って窓口に行かないと始まらないというイメージが強いからだ。

それに、「2014~18年度に売った18.3万件で顧客に不利益を与えた可能性があるとして郵政グループが調査を始め、2月末までに2170件の法令・社内規定違反が確定した」と報じられた「かんぽ生命の不適切販売問題」の被害を母も被ったのではないかと思われたほど、かんぽ生命の契約が多数あったからだ。

かんぽ生命の不適切販売問題(2020年3月24日 日経新聞)

郵便局で扱ったかんぽ生命保険の保険商品で、保険料の二重徴収や条件の悪い契約への乗り換えといった不適切販売が多数見つかった。

2014~18年度に売った18.3万件で顧客に不利益を与えた可能性があるとして郵政グループが調査を始め、2月末までに2170件の法令・社内規定違反が確定した。調査はまだ続いている。

金融庁と社外弁護士でつくる特別調査委員会は、過重な営業ノルマや企業統治(ガバナンス)の不全を原因に挙げた。
金融庁と総務省は2019年12月に3カ月間の業務停止を命じ、郵政の長門正貢社長らの引責辞任につながった。

郵便局は保険を含む大部分の金融商品の営業を2019年夏から自粛。かんぽの2019年4~12月の新規契約は前年同期から半減し、ゆうちょ銀行の投資信託も2割減った。

営業再開のめどは立っていない。

しかし、店舗内は意外なほど空いていて、気合いを入れて臨んだ私たちは少し拍子抜けするほどだった。

何しろ、私は昨年12月の負傷事故前は、eBayや、ヤフオクメルカリで売れたものを年中、郵便局に持ち込んでいたので、その当時と比べてもはるかに空いていた。(2020年5月9日-入院直後にeBay売れてた!どうするんだオレ

さすがに、緊急事態宣言で、不要不急の外出が自粛されているだけあると感じた。(参考:NHK 特設サイト 新型コロナウイルス-「緊急事態宣言」で暮らしはどうなる

とりあえず、かんぽ生命からは2020年4月27日付で「かんぽ生命のご契約調査の状況について」というのが出ているようだが、私たちは、それとは関係なしに粛々と手続きを進めて、店舗を後にした。

母がそれで納得した以上、私たちができることは、ほとんどなかったからだ。
せいぜい、過去の取引履歴をすべて通帳に印字してもらうようアドバイスすることだけだった。(参考:2018年5月8日 ゆうちょ銀行のお知らせ-「お取引履歴(通帳未記帳分)のご案内」の送付廃止

「三密」に突っ込みそうだった「みずほ銀行」

驚く外国人男性

緊急事態宣言下のみずほ銀行、只今2時間待ち

私たちがみずほ銀行に足を踏み入れた瞬間、目に飛び込んできたのは「只今、2時間待ちとなっております」の表示だった。

それにも増して、「新型コロナウイルス感染拡大防止へのご協力のお願い」で「混雑状況に応じて店舗外でお待ちいただく・・・」などとあったので、冗談ではないと思った。
自慢じゃないが、このときの私は、ようやく杖歩行ができる状態で、長時間立ったままいられるほど健康体ではなかったのだ。

みずほプレミアムクラブは銀行サービスに何の特典もないのか

フロアにいた案内係は、母にキャッシュカードを持っているか、通帳があるかとか聞いた割には、ほかのお客さんと同じように「お待ちください」と言う。

母の持っているみずほプレミアムクラブの会員の特典は、香港の銀行とまでは言わないまでも、SMBC信託銀行(旧シティバンク)のPrestia Goldくらいのサービスはあるべきではないか。

公式サイトは非会員向けには何の案内もないので、個人のブログなどを見ると、要は、銀行本体のサービスでなく、提携デパートなどのサービスが充実しているらしい。

つまり、専用ブースでの受付を含めた、銀行サービスの優遇ではないので、何の価値もないではないかと、怒りがこみ上げそうになってきた。
ここに来ざるを得なかったとはいえ、このようなコロナ禍の時期に、「三密」状態の銀行で待つことなどできないと、私たちは帰ろうとした。

形骸化している日系金融機関の金融商品勧誘方針

そうこうしているうちに、母を担当しているというMさんという行員が、専用ブースへ私たちを案内してくれた。
おお、やっぱり、そういう優遇があるのかと感心していたら、母が、Mさんの勧誘商品(みずほ銀行の仲介する外貨建て保険商品)をたくさん買わされているだけのようだった。

これについて、私たちに得々と説明するMさんに対し、私や弟は冷めた視線を送っていた。
私が仕事に行って留守にしていたときに、彼女は自宅に来て、いろいろな商品を母に売りつけていたのだ。

SMBC信託銀行(旧シティバンク)は、金融商品の説明が理解し難くなっている後期高齢者には、家族の同席をと言ってくるが、日系金融機関で、そんなことを言ってきたところは一つもない。

みずほ銀行のみならず、どこの金融機関のウェブサイトにも、金融庁がひな形を作った「金融商品勧誘方針」があるが、これを厳密に遵守していると、日系金融機関の顧客の主力たる高齢者には商品が勧誘できないので、実質的に、形骸化しているのだろう。

私は2012年12月22日付で掲載した正月は家族と一緒に資産運用と未来の人生について語ろう」で引用したブログのことが、時間の経過とともに、モロに降りかかっていたことに暗澹たる気持ちになった。

ただ、私たちのこの日の本題は、これに文句を言いに来たのでなく、いろいろな手続きをしに来たので、Mさんの差し出す書類の山と格闘し終わった母を連れて、次に行くことにしたのだった。

ちなみに、ゆうちょ銀行でも依頼した、過去の未記帳分の取引履歴の印字は、みずほ銀行では、預金取引明細表(普通預金)として、2019年10月1日から各種帳票発行手数料(1通あたり)が220円かかるようになっていた。

ビジネスライクに終始した「りそな銀行」口座の解約

相談する女性

私たちが昼食も休憩も取っていないにもかかわらず、りそな銀行の店頭に着いたのは、午後2時前だった。
朝の9時過ぎから動いて、前の二つの銀行の手続きが比較的スムーズにいったとはいえ、すでに正味4時間以上を経過していた。

他の金融機関でも同じようなものがあったが、「新型コロナウイルス感染症への対応ならびにお客さまへのお願いについて」ということを、自行のサービスと照らして載せているのだろうか。

おそらく、5月13日付の全国銀行協会の指針「銀⾏をご利⽤のお客さまへ(新型コロナウイルス感染防⽌と経済⽀援策等について)」を丸写ししただけに過ぎないのだろうが、例えば、私たちの要件であった口座解約は、本人が窓口に行く以外に、郵送して手続きできるなら結構だし、私が母の代理でできるなら(これはさすがに無理だろうが)いいだろう。

どちらもできないのに、手続きを控えろと言うのは、私に言わせれば、傲慢極まりないとしか言いようがない。
むしろ、普通預金の入出金や、通帳やカードの再発行こそ、代替策があるのだから、窓口手続きを控えろとすべきだろう。

幸いに、私たちは、銀行に行った時間が良かったのか、何事もなく、ビジネスライクに事が運んだので、スムーズに手続きができたが、私の友人の一人は「日系銀行は高齢者が口座解約と言うと揉める」とか言っていた。

もし、口座の解約を引き留めるなどというのが、銀行マンの成績に繋がっているのだとしたら、そこが令和時代に生き残るのは難しいのではなかろうか。

住宅街の銀行の支店はヤバイ空間

頭を抱えるビジネスマン

私が、今回の母親帯同の銀行巡りが、五十日(ごとうび)だったとはいえ、「緊急事態宣言下のみずほ銀行2時間待ち」という異常事態に直面した結果、何があったのか調べてみた。

私自身は、退院後も歩行が困難なので、今年になってからは、通院ついでにATMでお金を下ろす程度、専らキャッシュレス経済に移行したので、銀行の店舗に用事があることなど、ほとんどなかったからびっくりしたのだ。

そして、今回の珍事のことは、2020年4月28日付の朝日新聞「『3密』リスク、銀行ビクビク 窓口混雑、目立つ不急の用件」と、4月30日付のブルームバーグ「銀行窓口の『不急業務』、住宅街で増加-全銀協が事例示し自粛協力要請」という記事が見つかった。

これは私の想像だが、コロナ禍でスポーツジムも図書館もやっていない、病院は最もアブナイで、あぶれた高齢者の行き着く先が、自分の年金振込先となっている銀行だったというわけかもしれない。

朝日新聞の記事にある「東京都内の信用金庫も、最近は通常より2~3割増えた。来店して『スーパーにも行きにくくなった。長話をしたかった』と告げる人も。『銀行は通常通りの営業で、スーパーと同じ感覚で来られる方もいる。銀行側から不急の用件と思えても、顧客との間で温度差がある』。大手行の支店長はこう打ち明ける。」というのは何を言わんかであろうか。

「3密」リスク、銀行ビクビク 窓口混雑、目立つ不急の用件(2020年4月28日 朝日新聞

銀行が支店窓口の混雑に頭を痛めている。
在宅勤務が広がり、住宅地の店は顧客が急増。
「古い口座の解約を」など不急の用件も目立つという。
連休中は谷間の平日や直後が混みやすく、5月以降は国民への10万円支給などもある。支店の機能を滞らせないよう、全国銀行協会は不急業務を例示して顧客へ協力を呼びかけることを考えている。

窓口はアクリル板と透明シートで覆われ、店内では女性行員がフェースガードと手袋をつけて案内する。
東京都内の三菱UFJ銀行東中野支店は27日午後、小雨の中でもひっきりなしに顧客が訪れ混雑していた。

銀行の支店は防犯上、窓がないなど気密性の高いつくりが多い。
月末や年金支給日、五十日(ごとおび)(5日、10日、15日など)に利用者が集中しやすく、窓口では顧客と行員が対面のやりとり。
密閉、密集、密接の「3密」が生じやすい空間だ。

東中野支店は普段、多い日に200人ほどが訪れる。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が緊急事態宣言を7日に出して外出自粛を呼びかけた後も人数は減らない。
行員が感染して店を閉める事態を防ぐため、窓口の数を7から5へ減らし、出勤者を3分の2ほどに絞った。行員1人ずつの業務量が増え、待ち時間が長くなりがちだ。

窓口での用件は通常、積み立てや資産運用の相談が多い。
最近は外出自粛で家の片づけをする人が増えたのか、「古いお札が見つかったので交換を」「古い口座の解約に来た」など不急の内容も目立つ。
待合スペースの椅子13脚に来店客が座りきれないこともある。

他の金融機関も状況は似ている。
三井住友銀行は2月から4月にかけて、1日の来店者が全体で15%ほど減った一方で、住宅地の支店などは増加。
川崎市内の郊外の店は2月より約3割増えていた。

東京都内の信用金庫も、最近は通常より2~3割増えた。
来店して「スーパーにも行きにくくなった。長話をしたかった」と告げる人も。「銀行は通常通りの営業で、スーパーと同じ感覚で来られる方もいる。銀行側から不急の用件と思えても、顧客との間で温度差がある」。
大手行の支店長はこう打ち明ける。

5月から民間金融機関による中小企業向け実質無利子融資や、政府による1人10万円の給付も始まる。
ゴールデンウィーク以降、さらに窓口の混雑が予想される。
「本当に必要な人へサービスを提供できないリスクもある」(地方銀行関係者)との声が出ている。

顧客だけでなく行員の感染の恐れもある。
三菱UFJ、三井住友、みずほの3メガ銀行では2月以降、少なくとも計9支店で行員の感染が確認された。
ある大手行の都内支店はマスクなしの顧客が目立つという。
窓口担当者は「給料日の月末は顧客がさらに増えるだろう。感染リスクが高まるので、かなり不安です」。(鈴木友里子、箱谷真司、笠井哲也)

■混みやすい「五十日・月初・月末」は避けて 全銀協が呼びかけ

新型コロナの影響が長引くなか、支店の営業を安全に円滑にどう続けるか。
全国銀行協会は窓口での「不急業務」を例示した指針を打ち出し、利用客の理解を求めることを考えている。

関係者によると、

  • 定期預金の口座開設
  • 記念硬貨の両替
  • 保険や運用商品の購入など15項目ほどを想定しているという。
地方銀行など全国の金融機関は指針を受け、不急用件に対する窓口業務を縮小するかどうかなどをそれぞれ考える。
住所変更や口座開設、振り込みなどはインターネットやスマホのアプリでもできる。
大手行はネットバンキングの利用を呼びかけている。
全銀協の例示を参考に、店頭のポスターやホームページ上での来店自粛呼びかけも検討中だ。

ただ、不急かどうかは顧客の事情で異なる。
ネットやスマホの操作に慣れておらず、窓口が頼りという人はいる。
10万円の給付金受け取りなどのために口座を開きたいといったケースも考えられ、支店の現場で個別に判断を迫られそうだ。

銀行は社会機能の維持に不可欠なインフラとして業務継続を求められ、簡単に店を閉められない。
内閣総理大臣へ届け出て利用客へ周知すれば、一部業務の停止なども考えられるが、各金融機関は店舗で特定業務を一切受け付けないといった対応を避ける方針だ。

■全国銀行協会が顧客へ訴えている内容

  • 来店時はマスクを着用してほしい
  • 店内では顧客同士が適度な間隔を保ってほしい
  • 発熱や風邪の症状があれば来店を控えてほしい
  • 混雑を避けるように来店日を考えてほしい(五十日や月初、月末などは混みやすい)
  • ATMやネットバンクを積極的に使ってほしい

最後に

去る5月25日に、緊急事態宣言が全国で解除されたが、これからワクチンなどもできて、経済活動が正常化されるに従って、高齢者のところに来る金融機関の営業マンが戻るかもしれない。

そういったときに老親の財産をいかに健全なものに持っていくかは、家族との密な接触しかないと思えたのが教訓の一つだった。

コロナ禍の中での三密は避けることが推奨されたが、家族との密な接触は、今後ともしないといけないのだ。
とりあえず、これ以外にも対処方法が浮かんでいるのだが、考えがまとまったら公開していきたいと思う。

それにしても、2月7日付の日経新聞の記事「高齢者への金融商品販売、認知能力も基準」、今でさえ、守られていない感じの勧誘ルールなのに、それを緩和してどうするのだろうか。

80歳を過ぎたら資産形成は必要ないのだがね・・・

金融庁は高齢者向けの金融商品の勧誘・販売ルールを見直す検討に入った。

現在は75歳以上だと商品の販売には支店の課長など役職者による事前承認が必要で、80歳以上なら翌日以降にしか契約できない。

新しいルールでは個々人の認知能力に応じて柔軟に対応し、例えば80歳以上でも当日に契約できるようにする。長寿化が進むなか、「年齢」が一律に投資のハードルになっている現状を改め、高齢者の資産形成を後押しする。

現在のルールは2013年にできた。
日本証券業協会の自主規制と金融庁の監督指針では高齢者向けの勧誘・販売ルールを設け、これに沿って証券会社や銀行などが社内規定を作っている。

75歳以上の顧客には商品販売にあたって営業担当者だけでなく支店の課長などの事前承認を義務付けるなど慎重な対応を求めている。
記憶力や理解力が低下した高齢者が金融商品のリスクを十分に理解せずに購入するといったトラブルを防ぐためだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました