サラリーマン・ポイ捨て時代の報酬

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ドバイ

近年、社員の発明に対して高額の報償金の支払いを命ずる判決が目につくようになってきた。

私に言わせれば日本の企業の多くが言う「実績主義」など人件費を体よく削るための方便でしかないのだから本当に実力のある人は力ずくで報償をもぎ取るしかない。

「こんなに欲張って請求をしなくても」という人はいるだろう。
しかしながら、企業が自分の発明を使って多額の利益を上げたということに対する自分の貢献を認めて欲しいという欲求のほかに、私は一つの重大な理由が隠れていると思っている。

それは、「争いごと」を嫌う日本の社会風土だ。
ともすれば、こうした裁判に訴えた人間を毛嫌いするサラリーマンは多い。
不当なリストラで解雇された社員が法的手段でもって会社を訴えない理由もそこにあると私は思う。

つまり「たとえ裁判で勝ったとしても元の職場に居ずらくなるのは変わらないし、かと言って再就職もかえって難しくなる。」という脅迫観念を社員が持つからだ。

従って、訴える社員(OB含む)からすれば、億単位、少なくともしばらくの間は無職であっても家族が安心して暮らしていけるだけの報償を求めるのは至極当然のことと思えるのだ。

日本のサラリーマン社会から「終身雇用神話」が崩れだして数年が経過した。
あるとき突然ヒットした製品が2年後には在庫の塊となって会社経営を圧迫することもザラにあるようになってきた。

そして、そのヒット商品のおかげで会社は莫大な利益をあげた場合、開発した社員の報酬が従来のように「金一封」レベルではすまなくなった、というのが今の流れだ。

それは当然だ。
いつ会社が潰れたり、自分が「過去の人」になって低レベルの給料に甘んじてもおかしくない時代なのだから、そのときそのときの貢献に見合う報酬を社員が要求するのは当たり前なのだ。

貢献したときはたいした報償を与えず、ちょっとその社員が「過去の人」になったら「お前は不要だ」とばかりに「ポイ捨て」する企業があまりにも多すぎる。

「サラリーマン受難の時代」、私のように平凡なサラリーマンにとっては生き難い時代だが、成功すれば多額の報酬を手に出来るチャンスがある、という希望があるのとないのとでは全く違ってくる。

もし、本当に日本が変わるとすれば、そうした企業が増えてきたときだろう。
でも私は待てない。
だから自分の資産運用のレベルではそうした考えを取り入れているのだ。

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元社員に1億5千万円支払いで和解 味の素甘味料発明対価訴訟 (2004.11.19 産経新聞)

清涼飲料水などに広く使われる人工甘味料「アスパルテーム」の製造法を発明した「味の素」(東京)(2802)の元中央研究所プロセス開発研究所長、成瀬昌芳さん(63)が、会社に特許権譲渡の対価の一部として約6億9000万円の支払いを求めた訴訟は19日、味の素が和解金1億5000万円を支払うことを条件に、東京高裁(北山元章裁判長)で和解した。

成瀬さん側の弁護士によると、特許権対価をめぐる大型訴訟で和解は初めて。特許権訴訟で確定した支払額としては過去最高となった。

2004年1月には青色発光ダイオード(LED)の特許権対価をめぐる訴訟の判決で、東京地裁が会社側に200億円の支払いを命じており(会社側が控訴)、社員の発明に対する企業側の対応に大きな影響を与えそうだ。

一審東京地裁は2月、発明で味の素が得た利益を約79億7000万円と算定。
成瀬さんの貢献度は2.5%と評価し、受け取り済みの報償金を差し引いた約1億8900万円の支払いを味の素に命じた。

味の素と成瀬さんの双方が控訴したが、東京高裁が10月「1億5000万円を支払う」とする和解案を提示したのを受け、4回の協議を重ねていた。

和解の理由について、成瀬さん側の弁護士は「味の素の主張よりも貢献度が認められ、大きな成果があったほか、健康上の不安から訴訟の継続が難しいため」と説明。
味の素は「一審判決で主張がほぼ認められているほか、同種訴訟では控訴審で減額された例がないため」としている。

成瀬さんは1982年、良質なアスパルテームの効率的な製造法を同僚と発明。
味の素は2001年までに成瀬さんらに報償金計1200万円を支給し、成瀬さんがうち1000万円を受け取った。

アスパルテームは砂糖の約200倍の甘みがある低カロリー甘味料で、味の素は「パルスイート」の商品名で小売りしたり、他メーカーとのライセンス契約などで高収益を上げている。

■≪主な特許権対価訴訟≫ 最近の主な特許権対価訴訟は次の通り。

  • 2003年4月22日、オリンパス光学工業(7733)のビデオディスク関連特許訴訟で、最高裁が「発明社員は社内規定を超える対価を請求できる」と認める初判断。約230万円の支払いを命じた一、二審判決が確定

  • 2004年1月29日、光ディスク関連技術の特許訴訟控訴審で、東京高裁が日立製作所(6501)に約1億6300万円の支払いを命令、日立側が上告

  • 2004年1月30日、青色発光ダイオード特許訴訟で、東京地裁が中村修二・米大学教授の発明対価は約604億円と算定し、日亜化学工業に請求全額の200億円の支払いを命令、日亜側が控訴(★パテントサロン★ トピック「青色LED」紛争

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