2019年7月12日付の八重山毎日新聞で「人気ラーメン店『日本人観光客お断り』」という記事が配信されている。
「日本人観光客のマナーは年々悪くなっている」。店長の有馬明男さん(42)は現在、バイトは採用しておらず1人で切り盛り。日本人観光客がルール違反することに我慢の限界を超えた。
「日本人は『お客様は神様』だと思っている。マナーの悪い観光客に迷惑を受けている人は多いので、こういうアクションを起こしてもいいと思った」と決断の理由を語り、「常連客には申し訳ないと思う。売り上げも減るが、精神的、体力的にも限界だ」と理解を求めている。
日本の店なのに日本人お断りとした店に炎上気味の反応
日本人の多くは、中国大陸からの観光客のマナーに眉を顰めているが、石垣市にある「麺屋 八重山style」の有馬明男さんは、それを上回る日本人客のカスタマーハラスメントに我慢がならなかったようだ。
店主曰く、日本人お断りの期間は7月から9月ということだが、おそらく10月になっても、地元客を除けば、日本人の客足が戻ることはないと思う。
そういったリスクを覚悟でやるからには、余程の決断をされたのだろう。
インターネット上の意見は賛否両論というより、どちらかと言うと炎上気味なのだが、少なくとも、「日本人お断り」としたことは、SNS全盛時代の経営戦略としては、リスクが大きすぎると言わざわるを得ないだろう。
逆に言うならば、そこまで追い詰められていたということなのか。
どちらかと言うと、看板を英語のみにして、店内のメニューは英語が主、日本語が従という感じで、外国人顧客を主体にするような経営戦略を押し出した方が、ソフトにいったような気がしないでもない。
東南アジアの旅行会社などはそうやっているのだから違和感がないだろう。
それと、店員を雇う場合は外国人にして、英語ができれば、日本語は基本的に話せなくても不問にする。
その方が簡単に雇えるはずだし、2008年10月4日のそれゆけ個人旅同好会のオフ会で使ったネフェルティティというエジプトレストランは、店員が全然日本語ができなくて、私たちが英語で注文していたので、ラーメン店でありながらも、そういうスタイルにした方が良かったような気がする。(笑)
もちろん、英語ができればマナーが良い人ばかりかと言えば、そうでもない人もいるが、少なくとも店主の意図することは実現できたのではないかと思う。
私の経験では、世界中で物議を醸している中国本土からの観光客でさえ、英語ができる人の方がそうでない人に比べて、ブラック顧客度ははるかに低いという感じがするからだ。
タイでも日本人観光客の評判が落ちているようだが
ちなみに、「八重山style 日本人お断り」で検索すると、炎上気味の意見をご覧になることができるが、それに同調したいとお思いの方は、「タイ 不人気 日本人」でも検索するといいだろう。
「アジア格安ひとり旅ナビ助」の2016年6月27日付の記事「タイで人気の『日本』と不人気の『中高年日本人』」にはこう書かれている。
タイのチェンマイにある日本人オーナーのゲストハウスには、英語と日本語で18歳以下、40歳以上お断りと大きく書かれています。
近年、暮らしやすいタイに増加中の日本のオジサンたちが、居心地の良いゲストハウスに長期滞在して若者バックパッカーたちから煙たがられているのです。
私はこれにはモロに抵触するので、調べてみたらスローハウス(Slow House)というところだった。
何でそうなっているのかの説明はないが、Q&Aに20歳から40歳までと書かれているので、間違いないだろう。
それと、2019年1月23日付のTABLOの記事「微笑みの国・タイで日本人の評判が急降下中!? 人気の旅行先でいったい何が起きているのか?」だ。
私もできればこういう記事を引用したくないのだが、有馬氏の決断を頭ごなしに非難する人は、「日本人はマナーがいいはずだ。マナーの悪い客は外国人の成りすましだろう。ラーメン店主が日本人ではないのだろう。」などと書いている人が多いから、最近では、そうではないことも多いということを言っておきたいのだ。
職場をホワイトにするためにはブラック顧客(乞客)は不要
私もカスタマーハラスメントに関しては、6月30日付の「カスタマーハラスメントは窮屈な「べからず社会」のストレスの捌け口」で触れているが、日本の企業の中にも積極的にそういった対策をしているところが見受けられる。
2017年11月10日付の現代ビジネスで、ブラック企業アナリストの新田龍氏が「ホワイト企業を目指すなら、まずは『ブラック顧客』を切りなさい」という記事を掲載しているが、その中で、ITシステム開発を手掛ける株式会社アクシアの米村歩社長はこう言っている。
「残業ゼロになって従業員の生産性は高まり、自主的に勉強するようになり、優秀な従業員も増えた。『残業やらないでお客さんから怒られることはないの?』と聞かれることもあるが、ほとんどの顧客は怒るどころか共感して褒めてくれる。稀に、定時後や休日の対応を強要してこようとする会社もあるが、そういう会社は社内の従業員に対しても同じようなことをやっているブラック企業なのだ」
そういった流れの中で、「麺屋 八重山style」の有馬明男さんは、夏季営業期間(7月から9月)は「日本人お断り」という究極の選択をされた。
私は日本人の一人として、日本にある店が「日本人お断り」というのは複雑な気持ちであるが、カスタマーハラスメント(ブラック顧客・乞客)対策として、こういう手段を取らざるを得なかった店主の気持ちもわかるような気がした。
最後に
有馬明男さんのやっていることは、カスタマーハラスメント(ブラック顧客・乞客)が蔓延る日本を変えるかもしれない大きな賭けだ。
やり方は相当に過激だが、私は一概に彼を非難する気にはなれない。
ブラック顧客(乞客)が減らない限り、サービス業の人手不足も生産性の向上も望めないからだ。
最後になるが、私は前出の米村歩社長のブログ記事「理不尽な顧客(乞客)の時代の終焉」(2019年2月6日)に拍手を送りたい。
こういう会社が増えれば、日本の人手不足も労働環境も生産性も大きく変わるだろう。
ついでながら石原明氏の「イヤな客には売るな」をお読みいただければ、令和時代のサービス業のあり方のヒントになるだろう。
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