安倍首相と岸田外相、稲田防衛相は尖閣諸島を守る気があるのか

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ブルーインパルスの編隊

リオデジャネイロ・オリンピックで日本の選手がメダルラッシュとなって国中が沸き返っているが、沖縄の尖閣諸島(Senkaku Islands/釣魚臺列嶼)では日本の領土喪失の危機が迫っている。

8月5日以降、多数の中国漁船が中国公船(中国政府に所属する船舶)とともに、尖閣諸島海域で日本の領海への侵入を繰り返し、示威行動を続けているからだ。(海上保安庁-尖閣諸島周辺海域における中国公船及び中国漁船の活動状況について 外務省-我が国尖閣諸島周辺海域における中国公船の確認等 Ministry of Foreign Affairs of Japan – Confirmation of Chinese government vessels in Japan’s maritime areas surrounding the Senkaku Islands

また、この中国漁船に乗り込んでいたのは訓練を受けた多数の海上民兵のようで、これに対峙していたのは主として国土交通省の外局である海上保安庁だ。(2016年8月17日 産経新聞-「海の人民戦争だ」中国漁船に乗り込んだ海上民兵の実態とは 100人超動員、日本への憎しみ教育受ける

ちなみに、こういったことを日本のメディアはほとんど報じないので国民はほとんど危機感を持っていないし、翁長沖縄県知事や、地元の沖縄メディアは中国共産党のスパイではないかという巷の噂が事実かのように、日米両国政府に対するのと全く違って、中国政府に対して抗議や批判すらしない。

おそらく、中国側は8月3日発足の第3次安倍第2次改造内閣によって就任した稲田防衛相のお手並み拝見という意図もあったのだろう。
安倍首相は、尖閣諸島周辺での中国公船航行問題で「毅然とした対応」を指示(2016年8月8日 産経新聞)とあるが、どこまで稲田防衛相や自衛隊のトップに具体的な指示をしたのだろうか。

彼女は、「わが国固有の領土、領海、領空を断固として守り抜く。(2016年8月8日 産経新聞)」と記者会見での威勢は良かったのだが、具体的には「海上保安庁に情報提供するなど連携して対応している。」では拍子抜けではなかろうか。

せめて、自衛隊法第82条(海上における警備行動)の規定によって、海上自衛隊の艦船を出動させ、中国を威嚇するくらいの意気込みを見せるべきだったと思う。

おまけに、防衛省のウェブサイトでは今回の尖閣諸島海域での中国船舶による示威行動のことがまるで掲載されておらず、本気で国土を防衛する気があるのかと言いたい。

一方、外交の方はどうかというと、岸田外相を始めとして外務省幹部が中国政府に対し、連日抗議をしているが、相手方の態度は馬耳東風である。
何度抗議しようが、彼らは懲りずに領海侵入を繰り返すので、実力行使を伴うならともかく、もはや口先の抗議など無意味であろう。

第一、オランダのハーグ(Den Haag)にある常設仲裁裁判所(Permanent Court of Arbitration)において、中国が南シナ海の広い範囲に独自に設定した「九段線(Nine-Dash Line)」には「法的根拠はない(China has no legal basis to claim historic rights to the bulk of the South China Sea.)」と認定するフィリピン勝訴の裁定結果が出たが(PCA Press Release – The South China Sea Arbitration 2016年7月12日 産経新聞-中国の南シナ海支配認めず 仲裁裁判所「法的根拠なし」と初判断 CNN on July 12, 2016 – South China Sea: Court rules in favor of Philippines over China)、中国は裁定に従うつもりはないと一蹴したほどの国(2016年7月13日 ロイター-南シナ海の仲裁判断を中国は拒否、大使「争い激化させる」 The Guardian on 12 July 2016 – Beijing rejects tribunal’s ruling in South China Sea case)、その政府を相手にするのに話し合いでケリがつくわけがない。

少なくとも、日本を愛するアメリカ人、ケント・ギルバート(Kent Sidney Gilbert)氏が、2016年8月14日付のブログで主張するように、「中国船集結は軍事行動に等しい」という認識を安倍首相や稲田防衛相、岸田外相以下、外務省幹部は持つべきだ。

国防に関しては最も真剣に対峙していると思われている安倍内閣でさえ、中国に対して何をびくついているのかわからないが、インドネシアのスシ・プジアストゥティ海洋・水産相(Indonesian Fisheries Minister Susi Pudjiastuti)のように、領海侵犯した中国漁船を片っ端から拿捕して処罰したらどうなのだろうか。(2016年6月2日 産経新聞-インドネシアの刺青大臣 南シナ海で中国監視船を撃退 駆逐艦で警告発砲も BBC on 20 June 2016 – Indonesian navy fires on Chinese fishing boat in disputed waters

また、2016年8月11日付の北野幸伯氏のコラム「中国が尖閣に上陸した場合、安倍政権が最もやってはいけないこと」に、有事に対処するためには、「領土を守るという国民的コンセンサスと、それを実現するためのメカニズム、つまり、首相が電話をとって自衛隊に尖閣奪回を指示できる仕組みの両方が必要になる。」と書かれているが、今回の安倍内閣の姿勢からは、私がそれを感じ取ることはできなかった。

これらの際、自衛官や海上保安官の行動を束縛しそうなものが、武器の使用に関する規定(自衛隊法第93条、海上保安庁法第20条=いずれも警察官職務執行法第7条を準用)で、相手が武力攻撃するか否かわからないときに制圧する手段が限定されることが命取りになってくることだろう。

この警察官職務執行法第7条(武器の使用)の行き過ぎた弊害が最も顕著に出た事件が、私が書いた2007年5月20日付のコラム「あほ~な奴らがキチガイをのさばらす」に掲載したものだ。

私は、有事に対処するための法案が国会に出されたとき、少なくとも第189回常会で成立した安全保障関連法の一つである平和安全法制整備法(我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律)で、こういった平時の武器使用規定は是正されているものと思っていただけに驚きを通り越して呆れている。

いずれにせよ、このまま日本が我慢や配慮ばかりしていると叩きのめされることになるだろう。

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