退職金による春の投資デビューがリスキーな統計的理由

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日本地図とビジネスマン

官公庁や安定した上場企業に勤務するサラリーマンで、この3月で定年退職をされる方は、ゴールデンウイーク前にはかなりまとまった退職金が振り込まれることだろう。

私も早期リタイアによって割増退職金が支給されるので、彼らと同様の立場になるのだが、昨今の社会情勢(参考:特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢の引上げについて)では定年退職後も何らかの形で働く方も多いと思う。

それに加えて、アベノミクス相場が活況を呈している(2015年2月23日-ブルームバーグ:アベノミクス相場2幕、大型株が小型圧倒-クジラの好物影響)のを見て、退職金の一部を投資に回して、小遣い稼ぎを目論む方もいるだろう。

しかしながら、私はこうした退職金による投資デビューをしようとするサラリーマンは金融機関からすればカモでしかないことを書いたし(2014年10月18日-公務員や教員、専業主婦も投資の世界へ)、実際に、国民生活センターに寄せられる投資関連の苦情相談の約80%が60歳以上の高齢者で、購入ルートも対面の証券会社や銀行が9割以上、とのことらしい。(2012年12月22日-正月は家族と一緒に資産運用と未来の人生について語ろう

今まで投資とは縁のなかった人たちには、ファイナンシャル・リテラシー(financial literacy)が不足していることが明らかであり、彼らが退職金などのまとまったお金が入ったことによって、投資デビューをすることがいかにリスキーであるかは論を待たないが、それ以外にも統計的に彼らが損をする確率が高いことがわかった。

昨日、ワールドインベスターズの仲間から誘われてパンローリング主催の投資戦略フェアEXPO2015に行ってきたのだが、その講演の中に西山孝四郎氏の「現役ファンドマネージャーの日米市場のアウトルック」というのがあった。

そこでは、主として「世界的な傾向として、アクティブ運用の投信やファンドの3分の2はインデックス運用に負けている。」「過去60年の相場では、日経平均やNYダウのインデックスに投資するなら、10月末に買って4月末に売った場合(冬相場)のリターンが最も大きい。逆に4月末で買って10月末に売るとすると(夏相場の)損失が最も大きい。」ということを述べていた。

言われてみれば、9月、10月は経済史上に残るような大暴落が多い季節なので、漠然とその後に投資すればいいのでは、と思っていたが、数字を出して説明されれば納得である。

ちなみに、彼が言う、夏相場と冬相場のことは、TriAuto FX公式サイトの西山孝四郎の為替相場予報「FX市場のテクニカル分析(8)株とクロス円の投資をするのに最適な半年間投資(2014年7月15日)」でも触れられているので参考にするといいだろう。

これらを総合すれば、退職金による春の投資デビューは最悪の選択と言ってもいいだろう。

まさに、夏相場に突入する最も勝つ確率が低い時期に買いを入れ、その商品は金融機関にとって儲かる(投資家は損する)キャンペーン商品とくれば、買って数ヵ月後には評価(含み)損を計上、仮に秋に株式市場の暴落があれば、怒りに任せて投げ売りし、「二度と投資などやるか」と叫ぶ図式すら見える。

この悲劇を招くような銀行の営業電話を避けるために、退職金に振込先を今までのメインバンク(給与振込口座)と違えるくらいの慎重さがあってもいいと思う。

ところで、私は今回、退職するにあたって、即時の完全リタイアをしなかったのは、健康保険料対策と、退職金の投資機会にバリエーションを持たせるためだと書いた。(2015年1月8日-宮崎の地鶏で新年会 with 美魔女軍団

この、退職金の投資機会にバリエーションを持たせる(遅らせる)ということが、統計的にも正しいことがわかったというわけである。
なぜなら、即時リタイアをしたとすれば、それこそ退職金による投資デビューのサラリーマンと同じ悲哀を味わいかねないからだ。

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