シティバンク個人業務撤退報道の衝撃

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シティバンク横浜支店
去る8月20日の日経新聞朝刊1面に掲載された「シティバンクの個人業務からの撤退」のニュースは私にとってかなり衝撃的だった。

午後になってシティバンクの公式ウェブサイトには「シティバンク銀行が個人金融部門の売却を検討しているとの憶測の報道がありましたが、これはシティが発表したものではありません。」という記事が掲載されているが、いずれ個人業務から撤退する可能性は高い、という予測の元に行動した方がいいだろう。

唯一の救いは同日付で「シティバンク オンライン専用ファンド」の販売が開始されたことだが、いずれも引受先がありそうな銘柄だけに予断を許さない。

ところで、私がシティバンクに口座を開いたのは、1997年のシンガポール・マレーシア旅行の直前で、この時の旅行記の書き出しには、当時としては画期的だった海外ATMからの現金引出が可能なことと、他行引出手数料償還システムがあることが綴られている。

この2つは、未だに金融鎖国体制下の日本では特筆すべきサービスで、私はなぜ日本人がこうした便利なサービスを使わずに、平日の夕方の5時以降に、時間外引出手数料を気にしながら都銀などのATMに行列を作っているのか不思議でならない。

預金残高が少ない若年者はともかく、定収入のある中高年以上の世代であれば、他行引出手数料償還システムを利用するために、100万円の円預金を積むこと(あるいは100万円相当額の外貨預金や投資信託の残高を有すること)はそれほど困難ではないだろう。

私はこの担保として、設定来、ほぼ右肩上がりの値動きをしている「ジャナス・フレキシブル・インカム・ファンド」を購入しているが、為替相場がよほど大きく円高に振れない限り、100万円相当額を維持することはそれほど困難ではなく、将来的にはキャピタルゲインの楽しみもある。

また、これらに加え、登録先への海外送金がオンラインでできることも魅力の一つとしてあげられる。

つまり、シティバンクは内外の投資資金、及び生活のハブ口座として機能しているので、今や手放すことのできない基幹口座となっているのだ。
そのシティバンクが個人業務から撤退となると、ハブ口座として利用してきたものがすべて利用できなくなるので、それらを代替してくれる銀行を探さないとならない。

海外投資のハブ機能に関しての最有力候補は新生銀行、おそらくここが最善だと思うし、シティバンクの個人業務を引き継いでくれるなら、そのまま継続利用するだろう。

仮に、都銀が引き継ぐなら私としては利用は論外、ITのこともわからないような無能老人による「悪貨が良貨を駆逐する」の典型になることが見えているので、即刻解約し、場合によっては海外の金融機関に主要資産のすべてを流すだろう。

日経新聞の記事では「シティの顧客は邦銀に比べて富裕層が多い。首都圏での富裕層取引の強化につながるとして、関心を示す銀行が複数あるという。」と書かれているが、少なくとも都銀の役員には「己の銀行のサービスの悪さを正してから出直せ」と言いたい。

おそらく、都銀がシティバンクの個人業務を引き継ぐことになれば、富裕層取引の強化につながるどころか、かなりの人が海外銀行に逃げ出すだろう。
私にしたって、キャッシュカードを海外で利用できないような銀行では話にならない。

あと、国内利用に関して言えば、時間外引出手数料がかかるような銀行は論外だ。
できれば他行引出手数料も償還してくれる銀行がいいのだが、前述した新生銀行は提携のコンビニエンスストアからの引出は手数料無料になるようだ。

これでも十分なのだが、最近はこういったサービスをしてくれるところも増えていて、意外にも中央労働金庫(ろうきん)が無条件で他行ATM手数料キャッシュバックサービスをやっている。

もちろん、ここで資産を運用することはないだろうが、私が口座を持っている大和証券とリンクした大和ネクスト銀行は本人名義の口座への振込手数料が無料なので、ここから資金を振り分けて利用することが考えられるだろう。

こうしてみると、いざとなったときにスムーズに動けそうな気もしてきた。

シティバンクが個人業務から撤退するのは私にとっては相当に痛いが、対処方法があるので、それほど慌てずに済むだろう。
ただ、このことが日本の金融行政の鎖国強化の第一歩にならないことを祈るだけだ。

私はシティバンクと日系金融機関の双方で投資信託販売の現場を実体験しているだけに言うのだが、おぞましいばかりの二重行政なのだ。

シティバンクは金融庁から徹底したコンプライアンス重視を言われていて、投資信託や外貨預金を勧める場合も本人のリスク許容度をヒアリングしてからでないと売らないのだが、日系金融機関はそのようなことはまるで関係ない、という態度である。

特に邦銀は、高齢者相手に根負けするぐらいの電話攻勢をかけてくるし、窓口の販売スタッフの知識は素人の私にさえ劣る人も多い。
おそらく、シティバンクが同じことをやれば業務停止命令が下るが、邦銀は基本的にお咎めなしだ。

もしかすると、そういうことが続いて、シティバンクは堪忍袋の緒が切れたのではなかろうか、と邪推したくもなる。
もし、そうなら日本の金融市場は本当の意味で終わるだろう。

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米シティ銀、日本の個人業務売却 9行に打診 (2014.8.20 日経新聞)

米シティグループが日本国内の個人向け銀行業務を売却する方針を固めたことが19日、明らかになった。
すでに3メガバンクなど邦銀9行程度に営業譲渡を打診した。

低金利が続く日本では個人向け業務の収益を確保するのが難しいため、撤退を視野に入れている。
法人業務は継続するが、進出から100年を超す老舗外資が日本戦略を抜本的に見直すことになる。

法人向け特化

シティは事業の譲渡先を決める入札を9月にも始める予定。
3メガバンクを含む大手銀行や地方銀行などに売却の方針を伝えた。
シティの顧客は邦銀に比べて富裕層が多い。
首都圏での富裕層取引の強化につながるとして、関心を示す銀行が複数あるという。

シティは譲渡先が決まるまで支店などの営業は続ける。
営業譲渡後は引受先の銀行が業務を続け、現在と大きく変わらないサービスが受けられる見通し。

日本に進出する外国企業や日本企業向けの融資や決済といった法人業務に特化する。
1902年に日本に進出したシティは古参の外国銀行。首都圏を中心に個人向けに33拠点を構え、預金や住宅ローン、運用商品の販売などを幅広く手掛けている。

国内の預金量は約3兆6千億円と中堅地方銀行並みの規模を誇る。
外貨預金は国内有数の規模だ。
外貨預金や運用商品の販売などに強みを持っていたが、2004~11年にマネーロンダリング(資金洗浄)対策の不備や、投資信託の不適切な販売などで金融庁から3度の業務停止命令を受けた。

日本国内で低金利が長引くなか、銀行は預金に偏る個人向け業務では収益をあげにくくなっている。
そのため収益の伸びが見込める法人部門に集中することにした。

リーマン危機後、世界中で銀行業務全般を展開するモデルが曲がり角を迎えている潮流も背景にある。
シティは今年3月、米連邦準備理事会(FRB)の検査で資本計画が認められず、グローバルで事業の見直しに着手した。
すでに韓国やギリシャの個人向け業務からの撤退を決めた。

シティは法人業務ではグルーバルな拠点網を生かした決済ビジネスを得意としている。
日系企業の海外展開は今後も増える見通しで、資金管理の一元化といったサービスは成長の余地が大きいとみている。

シティ、撤退視野に-個人業務、外銀の日本離れ鮮明

米シティグループが日本の個人向け銀行業務の撤退も視野に、部門売却へ動き始めた。
2008年のリーマン・ショック後にシティは米国以外の不振事業を縮小しており、100年以上の実績のある日本事業も聖域視しなかった。
英HSBCや英スタンダードチャータードに続く日本ビジネスの縮小で、外銀の日本離れが鮮明になってきた。

シティの日本事業の曲がり角は2004年、金融庁から受けた一部業務の停止処分だ。
富裕層向け業務でマネーロンダリング(資金洗浄)が疑われ、厳罰を受けた。欧米のノウハウを持ち込んで拡大した富裕層向けプライベートバンキング事業から撤退する代償を払った。
さらに2009年、2011年にも資金洗浄や投資信託販売をめぐって行政処分を連発。

企業統治の体制を抜本的に立て直すため、三井住友銀行幹部を招いた。
しかし、今年に入ってその幹部が退任。新体制のシティ経営陣は個人部門の撤退を含めた大幅縮小を探っていた。

日本は豊富な個人資産と安定したビジネス環境を誇るが、他のアジア諸国ほどの成長は期待できず、長引く低金利で金融収益は低迷したままだ。
預金偏重の保守的な国民性はなかなか変わらず、米国流の手法で拡大するシナリオは描きにくい。

有力外銀では欧州最大のHSBCが2012年に富裕層向けサービス事業をクレディ・スイスに売却。
英スタンダードチャータードも新規口座の受け付けをやめて業務を終了した。

日本での個人業務に見切りをつけ、シンガポールなどに拠点を移す流れがある。
欧米大手の中では日本をよく知るシティの決断は、外銀にとっての日本の金融ビジネスの特殊性や困難さを物語っている。

関連英文記事:Financial Times on 20 Aug 2014 – Citi eyes exit from Japan retail banking business

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コメント

  1. たつさん より:

     こんにちは、初めてコメントさせて頂きます。いつも興味深く拝見しております。
     シティ撤退のニュース、私も大きな衝撃でした。そのような選択肢もあるだろうとは思いつつ、まさかそこまでは無いだろうと鷹をくくっていたのですが。
     ブログでお書きの点全てが、正に私が感じたことを代弁して頂いております。大和ネクスト銀行の情報も有り難うございました。
     20年以上利用していた身として個人的に不便になること以上に、シティにとって日本が、同時に撤退を決めた韓国やギリシャ程度の存在でしか無くなった、と思うと、それが最大のショックですね。
     引受先の行方を見ながら、どうするか私も頭を悩ましてみたいと思います。

  2. カルロス より:

    コメントありがとうございます。今日の産経に続報がありましたね。
    http://sankei.jp.msn.com/smp/economy/news/140823/fnc14082305000003-s.htm
    譲渡先が新生銀行なら良し、みずほや地銀なら即決で解約ですね。
    あと、シティが日本をネガティブに見ているというのは案外当たっているかも。

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