ハンドキャリーによる現金の持ち出しもばれる税務当局間の自動的情報交換

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HSBC Hong Kong Ocean Centre Branch

昨日、田邊国際税務事務所代表の田邊政行さんによる「海外送金の1・2・3~」というセミナーがクロスコープ青山で行われた。

このセミナーの中で印象的だったのは、表題にもあるように「ハンドキャリーによる現金の持ち出しもばれる税務当局間の自動的情報交換」のことだった。

田邊さんは、最近になって「ハンドキャリーで持ち出した現金のことで税務署から『国外への送金(国外からの受領)に関するお尋ね』がきた」という相談があったと言う。

これについて彼は、税務当局間の情報交換が、従来型の要請に基づく情報交換から自動的情報交換に推移したことにより、日本国籍の人が外国の金融機関に口座を開き、資金を預け入れると、その情報が外国の税務当局から日本の国税庁に自動的にもたらされ、それによって税務署が情報を把握したのだろうと説明した。

ところで、私は去る3月11日のコラム「国外財産調書制度は脱税防止に役立つのか」を書いたとき、「外国の税務当局との情報交換は、高額の脱税が見込まれるケースに限ってやっているのだろうが、これに自己申告に基づく調書が加わったところでどれほど役に立つのだろうか。」としたが、このとき平成23年度における租税条約等に基づく情報交換事績の概要のうち、従来の要請型のことにしか触れなかったので、大したことはないだろうと思っていた。

しかし、今回のセミナーに触発されてあらためて確認したら、平成23年度に租税条約等に基づいて外国税務当局から国税庁に提供された「自動的情報交換」の件数は、約17万8千件とあった。

その中には私の米国や香港の口座情報も入っているのだろうか。(苦笑)

田邊さんは、このほとんどは米国とオーストラリアなのではないかと言う。
つまり、情報交換がギブ・アンド・テイクの関係である以上、今のところ日本国内で不動産などの資産を持つ自国民の情報を欲しがる外国税務当局は限定的で、巷で心配されるほど香港との間ではやり取りがないと推定できる、と説明した。

要するに日本が富裕な外国人の受け入れに積極的になると、税務情報の自動交換も活発化するというわけである。

ただ、それを補っているのが「自発的情報交換」で、相手から要請されることなしに相互に情報交換が行われており、中には公式なものでなく、相手国の銀行員が政府に情報を売ることもあり得ると田邊さんは言う。

いずれにせよ、最近では政府が外国政府との間に租税協定(所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための二国間協定)を次々に締結している(財務省-国際課税に関する資料)ので油断は禁物であろう。

最後に、田邊さんは国外財産調書制度における申告義務の5千万円相当額のラインは、相続税の基礎控除額と連動している可能性があり、それが2015年(平成27年)1月以降の相続分から引き下げられることになっているため、国外財産調書制度の申告ラインもいずれ下がることが考えられると言う。

私は、調書の制度がどの程度実効性を持つか、あるいは税務当局の事務負担が増えるかの検証なしには、申告ラインが下がることはないだろうと思うが、ターニングポイントは2016年(平成28年)1月から施行が予定されているマイナンバー(社会保障・税番号)制度(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)となろうか。

2度目の東京五輪に向けて国中がお祭り騒ぎに突入する中、地味な法律改定作業は密かに進行するのである。

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