高速道路無料化実験に見る日本の将来

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日本地図とビジネスマン

読売新聞の「高速無料化『死活問題』、国道も商店もガラガラ」という記事は、何だか日本の将来を暗示するようなニュースである。

昨年の6月14日に書いた「1000円高速で得をしたのは誰か」の中で、「民主党が主張するように高速道路をフリーウェイにすべきだろう。」ということを言ったが、どうやらこれも大きな政策的リスクが存在するようだ。

中長期的には、自民党の道路族の利権の消滅、官僚の天下り国策民間会社(要は高速道路各社)などが不要になるというメリットはあるものの、その前に日本の地方経済が死滅しかねない事態に陥ってしまうだろう。

こうしてみると、民主党政権が実験結果を踏まえて、高速道路を元通りに有料道路に戻せば、作った高速道路の利用率が減りコストパフォーマンスが悪くなる。
公約だからと高速道路の無料化を強行すれば、従来の国道沿いの町は、新幹線によって在来線の特急・急行が通らなくなった地方都市のような末路を辿る。

結局のところ、日本で最初の高速道路である東名高速道路ができたとき、その建設費用を償還するため有料とするが、それが済んだら無料にするというのが、そもそもの約束だったはずだが、自民党の道路族の利権を維持するために、「全国料金プール制により、高速道路ネットワーク全体について償還が完了した時点で、全路線を無料開放する」という詭弁を弄し続けた結果、制度上は高速道路がいずれ無料になるというリスクを国民が共有できなかったことが最大の原因であろう。

国土交通省は今後も様々なシミュレーションをしながら実験を続けるとは言うが、最終的には政治決断となるだろう。
このとき担当大臣(今は前原誠司国土交通大臣)がババを引くことを承知で無料化を強行するか、極めて日本的な決断で先祖帰りをするかはわからないが、私が思うに、より国民の反発の少ない後者の結末となる可能性が高い。

なぜならば、私が就職してしばらくたった頃、当時の上司が私に言った言葉があるからだ。
「日本人(有権者)は公務員が変革を望まない、あるいはできないと言って悪し様に非難しているが、当の日本人(有権者)がそもそも変革なんざ望んでいない。変革とは先輩のやってきたことを変えることであり、そんなことができるヤツは今の日本にはほとんどいない。」

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高速無料化「死活問題」、国道も商店もガラガラ (2010.8.28 読売新聞)

全国37路線50区間の高速道路で無料化の社会実験が始まって、28日で2か月が経過した。
高速道路の通行量が軒並み増える一方で、並行する国道では激減して商店の売り上げが半減するなど、「死活問題だ」と悲痛な声も上がっている。

国土交通省によると、実験の対象区間では、1か月間の通行量が平均で約2倍に増える一方、並行する国道では2割減少した。
最も明暗を分けたのは、県内の高速道路の9割が無料化された山形県。

県を横断する山形自動車道は通行量が2~4倍に増えた。日本海側の庄内地方には観光客が押し寄せ、山形道の寒河江サービスエリアの売店も「来客数は1~2割増」。しかし、山形道と並行する国道112号(西川~月山)の休日の通行量は全国最大の53%も落ち込んだ。山形道は未開通区間もあるため、高速を敬遠して国道を走る車も多かったが、無料化で一気に高速に流れ、売り上げが10分の1に減った飲食店もあるという。

町が素通りされていることに危機感を強めた西川町商工会などは緊急対策会議を設置した。山形道のサービスエリアにも乗り込み、特産の山菜そばの割引券付きパンフレットを配布。商工会の木村寿和さん(58)は「お盆は帰省客で少し回復したが、今後がまた心配」と、追加対策を検討する予定だ。

全線が無料化された北海道の道東自動車道。追分町~夕張間で休日の通行量が7割増え、道東道出入り口に近い道の駅は7月の利用者が約3.4倍に激増したが、並行する国道274号の通行量は3割減。沿線にある日高町の道の駅では利用者が55%も減った。

国道を使うトラックの9割が高速に転じたといい、ドライブイン「日高ウエスタンファーム」も売り上げが半減。和田永雄社長(54)は「もはや企業努力ではいかんともしがたい」と嘆く。
町議会も5日の臨時会で、実験の即時中止を求める異例の意見書を全会一致で採択。首相や国交相あてに送った。

無料化前に比べ通行量が激減した国道(休日調べ)
減少率 国道(県名) 並行する高速道路
53% 112号(山形) 山形自動車道(西川-月山)
50% 56号(高知) 高知自動車道(土佐PAスマート-須崎東)
49% 201号(福岡) 八木山バイパス(篠栗-筑穂)
48% 13号(秋田) 湯沢横手道路(十文字-横手)
47% 31号(広島) 広島呉道路(呉-天応東)
40% 10号(宮崎) 延岡南道路(延岡南-門川)
39% 9号(島根) 山陰自動車道(宍道-松江玉造)
37% 13号(山形) 米沢南陽道路(米沢北-南陽高畠)
35% 56号(愛媛) 松山自動車道(西予宇和-大洲北只)
35% 10号(大分) 東九州自動車道(津久見-佐伯)

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