海上保安庁から流出した尖閣衝突事件のビデオに関して国を挙げての大騒動が繰り広げられている。
媚中政権の要と揶揄される菅直人首相と仙石由人官房長官が、中国を刺激しないがために、特定の国会議員に対してのみ限定公開に踏み切ったビデオが、義憤にかられたとされる一人の海上保安官(ハンドルネーム:sengoku38)によってyoutubeにアップロードされ、それが次々に転載(6-1・6-2・6-3・6-4・6-5・6-6)されて、全面公開同様になってしまったからだ。
世論は、国民の英雄を罰するな、あるいは逆に、公務員としてどうなのか、とカンカンガクガクの大騒ぎである。
テレビを始めとするメディアも首謀者とされる海上保安官の周りで騒然と取材を繰り返し、まるで政治家の大疑獄事件なみである。
その中で首謀者とされる海上保安官がホンネとは思えないヤラセの詫び状を書かされたのは、プライドをずたずたにされた小心者のイラ菅こと菅直人首相のご機嫌取りに走る霞ヶ関の官僚の意向を、出先の上司が察して本人を説得してのことだろう。
そう考えると、最初は威勢がよかった彼が急にシュンとなった理由も想像がつくというものだ。
そもそもこのビデオは最初から機密になっていたわけではなく、事件からしばらくの間は海上保安庁の職員なら誰でも見れたし、私的に保存することも十分に可能だったようで、IT時代の情報セキュリティをアナログ時代のまま放置した挙句、それを基に機密漏洩だとか言っているのは笑止千万だ。
それに、こういう既存メディアを使っての世論操作はお手のものの霞ヶ関、尖閣ビデオ流出事件で、大阪地検の「厚生労働省の郵便不正事件をめぐる証拠改ざん」や警視庁の「テロ情報流出事件」はすっかり霞んでしまったようだ。
これら3つのうち、どれが重大かと言えば、国際的には警視庁の事件、国内的には大阪地検の事件だ。
警視庁の「テロ情報流出事件」に関して言えば、ただでさえ、国家間の機密情報を「ここだけの話」としたり顔で漏らす日本の政治家に不信感を抱いて、まともな治安情報が米国から日本へ来なくなったと言われているのに、今度は治安当局の大失態である。
これで各国の情報機関や治安当局が警視庁を国際捜査機関のカウンターパートとして見なくなっても不思議ではあるまい。
それに今回の流出事件で警察に協力した人間の生命が脅かされる可能性も否定できない。
しかもネット上で晒された情報に関して、警察の協力者たちは、公に訴え出ることもできないのだ。
これらの不祥事を起こす職場に共通しているのは、各省庁の財政・会計担当幹部のIT音痴ぶりだ。
今時、職場に私用のパソコンを持ち込まないといけないと仕事にならない状況を放置しているのは、彼らの職務怠慢以外の何物でもない。
彼らは役所の中では最高権力者(事務次官)に近い存在だから誰もそんなことを指摘できないし、大臣(政治家)は基本的に高齢のIT音痴ばかりだから、これまた話にならない。
私が思うに、情報漏洩事件を起こすような職場は、パソコンが1人1人に配備されているわけでもなく、割り当てが職場に数台、しかも旧式のものだったりするので、仕方なく私用のパソコンを持ち込んで仕事をせざるを得ない状況に追い込まれているのだろう。
つまり、それを改善することなしに、私用パソコン禁止などと言っても現場の士気が下がるだけで、またもや同じ不祥事が別のところで繰り返されるのだ。
厚生労働省の郵便不正事件で、証拠のFD(フロッピーディスク)の改ざんと、メディアの報道にあったのを覚えているだろうか。
今時、フロッピーディスクドライブを備えたパソコンがどのくらいあるのか、いかに役所が旧式のものを使っているのか想像がつくというものだ。
これで情報セキュリティ云々を言われても素直に信用できるだろうか。
一方の大阪地検の「厚生労働省の郵便不正事件をめぐる証拠改ざん」は呆れてものが言えないほど酷いものである。
これを見て私は、元北海道・沖縄開発庁長官で新党大地・代表の鈴木宗男氏が「北方領土特命交渉」という著書の中で「一部の外務官僚が元最高裁判事の園部逸男氏を抱きこみ園部レポート(鈴木宗男の圧力によって対ロ政策、北方領土に対する支援事業がねじ曲げられた)という謀略文書をつくり上げ、その筋書きに沿って私は逮捕された。」と書かれているのを思い出した。
彼に対する疑惑は一つだけではないので、これだけをもって政治的謀略で政治生命を絶たれたと論ずるのは不適切かもしれないが、大阪地検による証拠改ざんを見せつけられると、鈴木宗男氏の事件のみならず、最近になって逮捕・起訴された政治家は官僚にとって都合の悪い人物だったのではないか、という疑念を抱かざるを得ない。
何しろこういうときのメディアは検察情報の垂れ流ししかしないので真相を知ることが非常に困難だ。
しかし、今度の事件で元大阪地検特捜部主任検事・前田恒彦容疑者があれだけ大それたことをやった理由は容易に想像がつく。
10月11日付の読売新聞で報じられている、彼が言ったとされる「立証上の唯一の傷、消したかった」というのは、日本の刑事裁判における99%以上の有罪率という神話を守れなければ、今後の立身出世の妨げになるという恐怖からくるものだ。
まして、彼は検察のホープと期待されていたこともあって、余計にそうなったのであろう。
2005年1月15日付のコラム「中村氏の裁判に見る日本の司法の現実」で私はこう書いた。
「日本の司法制度は独裁国家でしかあり得ないことが平然と行なわれている。」と・・・
作家のカレル・ヴァン・ウォルフレン(Karel Van Wolferen)は、憲法上は独立しているように見える最高裁判所でさえ、実質的に法務省の官僚の支配下にあると言う。
まして、検察庁の検事は行政組織上もそうなのだから、人事権を持った官僚の意向を忖度するのが有能な人たる評価を受けるのは当然のことだろう。
民主党の公約の一つに「取り調べの録画・録音による可視化(刑事訴訟法の改正)」がある。
この政策は、参議院で民主党が多数野党だった時代の2007年12月(第168回臨時会)、2009年4月(第171回常会)に提出し、2009年の衆議院選挙のマニフェストには「取り調べの可視化で冤罪を防止する」と盛り込まれたものだ。
しかし、私に言わせれば「冤罪」は、過去はともかく、今は現場の暴走でなく「上層部」の無知によってもたらされていると言っても過言でなく、それを改善することなしに司法改革はできないとさえ思える。
役所の上層部が指示する「○○率の向上」というのは実現困難な目標も多く、それが現場の暴走や不正を生む温床になることが往々にしてあるのだ。
特に日本の場合はキャリア(上層部)とノンキャリア(現場)の意識の乖離が大きいだけになおさらである。
今や野党時代の公約が実現不可能な夢物語ばかりと揶揄される民主党政権、「取り調べの可視化」というのもその一つであると言えなくもない。
それゆえ、2010年の参議院選挙のマニフェストでは、「取り調べの可視化」という公約が外されたのだろうか。
なぜなら、世間知らずと揶揄される裁判官に、狡猾な犯罪者に対して取調べを担当する警察官が声を荒らげただけで「被疑者に対して威圧的な取調べをしている」などと判断されては治安当局者はたまったものではない。
確かに、暴走検事、暴走刑事もいるだろうが、それにも増して狡猾な犯罪者や彼らに入れ知恵する人権派と呼ばれる弁護士によって、今や犯罪者が大手を振って町を歩いているとも言われているのだ。
あながち法務省の懸念が自己保身によるものだけとも思えない。
「尖閣ビデオ流出騒動にほくそ笑む霞ヶ関の官僚たち」という題名は、関係省庁で人事・財政の権限を持った官僚たちがいつまでも安泰であることを意味している。
現場が叩かれれば、叩かれるほど、彼らは待ってましたとばかりにトカゲの尻尾切りに精を出す。
残念なことに、政治主導を公約にした民主党政権でさえ、それを変えることはできないだろう。
まして首相は霞ヶ関の愛玩犬とも言われる菅直人なのだ。
いかにも小心者の彼は、横浜で開催されているAPECにおいて、米中両国首脳の形ばかりの笑顔に胸を撫で下ろし、国民の期待とは裏腹に、石にかじりついても任期満了まで首相をやり遂げることだろう。
このトップ2人のトンズラを許すな
-海保騒動よりも重大な「警視庁テロ情報流出事件」と「検察庁大阪地検特捜部腐敗事件」-(2010.11.12 日刊ゲンダイ)尖閣ビデオ流出で、すっかりかすんでしまった警視庁公安部のテロ情報流出事件。
こちらは捜査の進展がまったく聞こえてこない。尖閣ビデオについて、仙谷官房長官は「公務員が故意に流出させたとすれば、明らかに国家公務員法違反だ」とカリカリ。
政府の徹底捜査指示で事件は急展開を見せたが、テロ情報流出も構図はまったく同じ。むしろ、尖閣ビデオより深刻で悪質なくらいなのに、警視庁は、よその役所の流出は捜査して、身内の流出事件には消極的だから許せない。
「警視庁は頭を抱えているでしょう。官邸の指示で海保の捜査を担当することになったようですが、ホンネではやりたくなかったかもしれません。尖閣ビデオの流出犯を逮捕する以上は、警視庁の資料流出も犯人が分かれば捕まえるのがスジです。警視庁の文書を流出させたのは内部の人間で、すでに犯人を特定できたという情報もある。しかし、犯人を挙げれば、流出文書が本物だと認めることになる。認めてもいい一部資料についてのみ刑事事件にすることを検討しているといろ話もありますが、そんな子供だましが通用するはずもない。本音ではウヤムヤに終わらせたいのでしょうが、そうもいかなくなってしまう可能性が強いですから。もっとも、今はAPECの大警備でテンヤワンヤ状態だというから、これを口実に問題を先延ばしする可憐性はあります」(ジャーリスト・青木理氏)
時間の経過とともに事件のインパクトが薄れ、世間から忘れ去られるのを待つ。
これは警察組織の常套手段だ。臭いものにフタをして、都合の悪い事実は闇に葬る。
結局、誰も責任を取らない。この悪しき体質は、検察組織と共通のものだ。検察庁は、尖閣ビデオ流出騒ぎに「これ幸い」とほくそ笑んでいるに違いない。
大阪地検特捜部の証拠改ざん事件で一斉に向けられた批判の矛先が、検察から横にそれた。新聞テレビでヤリ玉に挙げられる機会もめっきり減ったからだ。
「もともと、検察のストーリーでは、大坪前特捜部長らの逮捕・起訴で一件落着。捜査を終了させるつもりでいた。しかし、それで世論の反発が収まらなければ、上級庁や検事総長の責任問題に発展していたかもしれない。世論やマスコミの追及が緩み、とりあえずクビの皮がつながった大林検事総長は胸をなで下ろしていることでしょう」(司法ジャーナリスト)尖閣ビデオ流出犯逮捕が、結果として2大腐敗組織を助けるとしたらブラックジョーク・陰謀の類いである。
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特捜事件に限定した可視化法案提出へ・・・民主議連
(2010.11.5 読売新聞)民主党の「取調べの全面可視化を実現する議員連盟」(川内博史会長)は5日、国会内で会合を開き、主に地検特捜部が手がける事件を対象に、犯罪捜査の取り調べの録音・録画(可視化)を行うよう定めた刑事訴訟法の特例法案を、議員立法で今国会に提出する方針を決めた。
来週中にも骨子案をまとめ、党内手続きに入る。
同日に示された骨子素案は、警察などの捜査を経ずに検察が直接捜査する事件に限り、容疑者と参考人への取り調べでの録音・録画を義務づける内容だ。違反した場合、供述調書を証拠と認定しないとしている。
同議連は当初、来年の通常国会で、政府提出法案による法改正を目指していたが、大阪地検特捜部の証拠品改ざん・犯人隠避事件を受けて方針転換した。
ただ、法務省では慎重意見が強く、調整は難航も予想される。*************************************
「立証上の唯一の傷、消したかった」前田検事
(2010.10.11 読売新聞)郵便不正事件の証拠品のフロッピーディスク(FD)を改ざんしたとして、最高検は11日、大阪地検特捜部主任検事・前田恒彦容疑者(43)を証拠隠滅罪で大阪地裁に起訴する。
捜査関係者によると、前田容疑者は容疑を認め、改ざんの動機について「立証上の唯一の傷を消したかった」などと供述しているという。法務省は同日、前田容疑者を懲戒免職処分とする方針。
調べによると、前田容疑者は厚生労働省元係長・上村勉被告(41)(公判中)が発行した偽の証明書を巡り、昨年7月13日、FDに記録されていた偽証明書のデータの最終更新日時を「2004年6月1日」から、特捜部が描いていた事件の構図に沿う「2004年6月8日」に書き換えた疑いが持たれている。**************************************
全面可視化「すべての事件対象は現実的でない」 法務省
(2010.6.18 朝日新聞)法務省は18日、取り調べの全事件、全過程を録音・録画する「全面可視化」について、「すべての事件を対象とするのは現実的ではない」とする中間報告を明らかにした。
全過程についても「事件関係者や捜査手法に与える影響を踏まえ、さらに検討する」とした。来年6月以降に意見をまとめる。
同省によると、検察庁が1年間で受理する刑事事件は約200万件。
可視化のための機材購入の費用負担などを考慮すると、対象事件を絞り込むべきだと結論づけた。今後、すでに一部の事件で実施している録音・録画の実効性を調査するほか、可視化を制度化している外国に検事約20人を派遣して、運用状況を調べるという。
対象事件の範囲については、千葉景子法相が3月、必ずしも全事件の可視化にこだわらない姿勢を示していた。17日には民主党内の「取り調べの全面可視化を実現する議員連盟」の国会議員3人が千葉法相を訪れ、「まず裁判員裁判対象事件から実現し、段階的に進めるべきだ」と申し入れた。
日本弁護士連合会の宇都宮健児会長は「取り調べの全過程の録画が不可欠なのは、足利事件などの冤罪事件から見ても明らかで、同省の方針は可視化を後退させる議論だ。速やかに立法作業を開始すべきだ」とする声明を出した。
コメント
こんばんは
この事件の後始末は、国家(役人)不利情報の隠ぺいを助長する法律が出来て、国民はなにも知らなくていいと言うことになる気がします。
そうなると、役人は不正し放題・・・今の民主党政権が続くと、日本リセットまで加速して突っ走りそうです。
まあ、早めのリセットの方が損害は少ないとは思いますが、すでに遅しかもしれません。
リセットするときに一番被害が大きい人は、貧乏な若者なんでしょうけど。金持ちはすでに対策済み・・・
>そうなると、役人は不正し放題・・・今の民主党政権が続くと、日本リセットまで加速して突っ走りそうです。
橋本内閣のときの厚生大臣をやっていたときの菅直人氏と今の彼とは180度違いますね。
最初、彼を支持した人は厚相時代の面影が強かったからでしょうね。
いったい何が彼をあそこまで変えたのか。それとも巷のうわさのように厚相時代も誰かが影で支えていたのか?