南アフリカの経済成長を押し下げるHIV患者蔓延のリスク

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落ち込む男性

今月の11日からワールドカップの南アフリカ大会(2010 FIFA World Cup South Africa)が始まった。

私も俄かファンとしてここ10年くらい興味を持ってワールドカップを観戦しているが、はっきり言って今回の大会は仮に時間と金があったとしても現地には行かなかったであろう。

何しろリスク(risk)でなくデンジャー(danger)の方の危険という二文字が常にあるような国、こんなところでワールドカップをやろうとしたFIFAの理事たちは気でも狂ったのかと言うようなところである。

FIFA会長であるジョセフ・ブラッター(Joseph Blatter)が提唱した2010年大会と2014年大会に適用されるワールドカップ持ち回りシステム(ローテーションシステム)」によって、今回の大会は南アフリカとモロッコ、エジプト以外の国で開催される可能性がなかったわけだが、それにしても・・・である。

ところで、去る7日の夕刊紙の記事に「南アフリカでは処女とセックスするとエイズが治る」という神話(myth)が信じられており、それによって少女姦が頻繁にあるということが載っていた。

一見、信じられないことのようだが、英語の検索エンジンにSouth Africa HIV virgin mythと入れるとかなりヒットするところをみると、どうやら本当のようだ。

また、2006年12月25日付の日経ビジネスの記事に「“ポストBRICs”南アフリカが抱える悩み-エイズの蔓延が経済成長を押し下げている」というものがあり、コンドームを配る配らないで政府とカトリック教会との間に対立があって、それがHIV蔓延の一因であると書かれていた。

一般的に「神は人間を救う」というのが定説なのだが、どうやら南アフリカでは違うようだ。

一方、去る今月の6日、NHKの特集で「アフリカンドリーム 第3回 移民パワーが未来を変える」として、経済破綻した隣国のジンバブエからの「安価で良質の移民」により南アフリカはさらなる経済成長を遂げていると報じられていた。

同じ番組の中で、南アフリカ内務省(Department of Home Affairs)のギガバ副大臣(Deputy Minister, Mr. Malusi Gigaba)は、移民なくば経済成長なし、ということを言っていたが、彼の表向きのメッセージとは裏腹に、南アフリカ人の賃金水準が上がったことはもとより、HIVに感染して死亡する若者が多く、労働力を自国だけで調達するにはリスクが大きいからと言えなくもない。

いずれにしろ、平均寿命が縮まっていくと推測されている南アフリカには、少子高齢化で悩む先進国と同じように購買力低下のリスクがある。

今のところ、それを押し返すだけの移民歓迎政策が効を奏しているようだが、「リアル北斗の拳」とまで言われる治安の悪さ、HIV患者の蔓延、これらが改善されない限り、南アフリカの経済成長はいずれ行き詰まるのではなかろうか。

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【とんでも南ア仰天!ニュース】 危険すぎる“処女神話”HIV恐怖にさらされる少女 (2010.6.7 夕刊フジ)

処女とセックスすることでエイズが治る-。こんな迷信が南アフリカに存在し、広く信じられている。
この迷信が、南ア国内でのエイズ患者による少女への暴行を助長し、エイズの蔓延(まんえん)の一因となっているという見方もある。

アフリカでは宗教的な儀式で病気を浄化できるとする考え方がある。
処女とのセックスでエイズが洗い流せるというのだが、もちろん、医学的根拠はない。

10年前で30%程度、現在でも15-20%の国民がこの迷信を信じているという関係団体の調査結果もある。
実際に、HIV感染者の少女レイプ犯が、この迷信を信じていたと供述する事件も起きている。
「エイズ患者が少女をレイプするのは犯罪にならない」などという妄言も、はびこっている。

少女への暴行事件は増加し続けており、この“処女神話”は、単なる迷信として片付けるにはあまりにも影響力が大きい。
国民の4-5人に1人がHIV感染者といわれる南アだけに、少女たちは常に危険にさらされていることになる。

関連記事

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人口の30%以上がHIV感染者、毎年増加の傾向 – 南アフリカ (2006.7.24 AFPBB News)

【ヨハネスブルグ/南アフリカ 21日 AFP】 南アフリカ保健省(Department of Health)が、2005年のHIV(HIV/AIDS)感染者数に関する報告書を発表した。
2005年度のHIV感染率は30.2%。2004年の29.5%とほぼ同じ水準であったが、HIV感染率は着実に上昇している。南アフリカは、世界でもHIV感染率が最も高い国とされている。

年齢別では、20歳代から30歳代前半までの感染率が最も高かった。
10歳代の感染率は2005年は15.9%と、2004年度の16.1%と同じ水準。
同省の推計では、15歳から49歳までは18.8%、推定490万人がHIVに感染しているとみられている。14歳以下では23万5060人。
HIV感染者の合計人数は554万人に達し、国連(UN)の感染者最大550万人の予想とほぼ等しい。

保健省の推計は、州立病院399か所の妊婦1万6510人に対して実施された調査をもとに、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、世界保健機関(WHO)のモデルを用いて算出したもの。

報告書には、「今後も分析を続けて、様々な被検グループで感染率の予測を行い、将来的に感染率の低下につながるようなモデルを作成したい」と書かれてあり、既に開始されているHIV感染防止研究が、HIV感染率の抑制およびHIVの伝染病学の発展に重要な役割を果たすものと期待されている。

一方、政府と市民団体、特に「治療行動キャンペーン(Treatment Action Campaign)」とは、HIV感染予防策をめぐりしばしば対立しているのが現状だ。
なお、HIVと梅毒の感染率調査は1990年から毎年実施されている。

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