23日のロイターニュースで、米国政府と国連によって課されている金融制裁(financial sanction)によって、原油取引から得られる利益を米ドルで受け取ることが困難になっているイラン政府が、欧州向けの原油取引をユーロからUAEディルハムに変えようとしていることが報じられた。
ラヒミ第1副大統領(First Vice President Mohammad Reza Rahimi)は、原油決済通貨を米ドルとユーロでなくすことが重要であると言っているようだが、現時点においてUAEディルハムは米ドルにペッグしているし、しかもUAEは親米国である。
一方で、かつての構想としてあったGCC加盟国共通通貨(GCC Unified Currency)は、当初の予定では2010年1月1日までに導入される計画だったが、昨年の10月の段階ではサウジアラビア、クウェート、カタールとバーレーンの4カ国による単一通貨構想に4~5年の遅れが見込まれると報じられている。
この単一通貨構想、確か2年前のときはUAEとオマーンを含めた6カ国によるものだったが、ここから2カ国が抜け落ちて現在に至っているのは私にとっては意外である。
こうしたことは同床異夢がもたらしたGCC諸国間の見解の相違(divergence of views)によるものなのか。
いずれにせよ、ここで反米を旗幟にしているイランが表に立ち、彼らが原油の決済にUAEディルハムを使いたいというアドバルーンを上げたということは、UAEがドルペッグ制を捨てて中東の基軸通貨としての地位を確立しようというのだろうか。
それとも単にイランがブラフをかけているだけなのだろうか。
イラン、原油取引でユーロやドル以外の通貨使用へ-第1副大統領 (2010.7.23 ロイター)
【テヘラン 23日 ロイター】 イランは、原油取引で使用する通貨をユーロやドルから他通貨に変える方針。準国営通信社Mehrがラヒミ第1副大統領の発言として伝えた。
ラヒミ第1副大統領は「原油輸出のためにどの通貨を選ぼうとわれわれの自由で、この問題はイランの利益次第だ。重要なことは、ユーロとドルを排除することだ」と述べ「ユーロとドルから他通貨へシフトする」と述べた。国連と米国によるイランへの追加金融制裁により、イランは、ユーロやドルでの取引が一段と難しくなる見通しで、他通貨へのシフトを検討している。
英文記事:Iran Avoids Taking Dollars, Euros for Oil Payments, Vice President Says
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