宙に浮いた年金記録が5000万件などという数字に何の根拠があるのか政治家もマスコミも検証しないのか、というのはさておいて、朝日新聞(年金、入力ミス2割-都内の台帳対象に調査)によると、東京都下に限った調査だそうだが、社会保険庁のオンラインシステムで見つからなかった年金の記録が紙台帳では見つかったというのが約2割もあったそうだ。
社会保険庁で年金記録がオンライン化されたのは1988年(昭和63年)だそうだが、その移行期に紙台帳からの移し漏れがないかどうかをダブルチェックするのは、どんな仕事でも基本中の基本ではなかろうか。
おそらく、スタートの期日ありきで、そういう基本的なことをやらなかったのだろう。
2002年(平成14年)4月のみずほ銀行のシステムトラブルがあったときも、現場の最終チェックをという声を幹部が無視して顧客が大迷惑を被ったと言われるが、これもそれと同じ図式ではないか。
それに、1988年(昭和63年)当時なら今よりも役所も財政に余裕があっただろうし、市町村と連携して記録を整備しようと言う人が幹部にいなかったのか。
要するに、当時の社会保険庁の幹部は、それこそ怠慢というより刑務所へ行くべきレベルのミスを犯していると言っても過言ではないだろう。
それがノウノウと高額の退職金と年金を手にしているのだから国民はいっそうやり切れないと思う。
一方で私が思うに、完全にこれらがクリアされていても当時の制度からして宙に浮いた年金記録というのは多数存在したのは間違いない。
要するに、基礎年金制度導入前は、厚生年金と国民年金のデータが同一人かどうかチェックできるキーが、氏名と生年月日しかなく、それだけでもって同一人とは確定できないからだ。
つまり、厚生年金のデータには住所が入っていないからで、従って、本人からの申告がなければ、それまでとなる。
この問題が発覚して以降、「社会保険庁の調査でもってすべてをやれ」と政治家やマスコミは言うが、どう考えてもそれは不可能だ。
簡単に言えば、これについては社会保険庁だけを一方的に非難しても問題は解決しない。
ちなみに、社会保険庁の怠慢でなしに年金記録が宙に浮く典型的なケースはこういったものだと思う。
- 受給資格が得られなかった人が加入していた年金
- 1996年(平成8年)12月以前に厚生年金と国民年金の双方に加入したことがある人が、1997年(平成9年)1月の基礎年金番号制度導入により社会保険庁から送られてきた「基礎年金番号等照会(回答)について」という調査票に回答していない場合
- 1971年(昭和46年)4月以降に生まれた人で、1991年(平成3年)4月以降の学生強制加入開始に伴い、親が代理で加入手続きした国民年金
- 転職歴が多いサラリーマンの厚生年金
- 給与などの事務がいい加減な会社に勤めたことのある人(氏名や生年月日の社会保険事務所への誤申告があり得る)
- 主婦が独身時代に勤めた会社で加入した厚生年金
- 主婦がアルバイト感覚でやった生保レディの経験者(厚生年金加入を知らない)
- 短期滞在の外国人が日本出国時に脱退一時金をもらっていない場合
おそらく、社会保険庁としても紙台帳と電子データの再照合以外にできることは、基礎年金番号導入後にやったような、「複数の番号を持っている人は申告を、あるいは職歴や引越しの履歴を書いてくれ」というレベルの調査を再度するしか手がないだろう。
もはやこれは一つの役所の問題でないのだから、安倍首相が過去の役人の怠慢の責任を取らせ(これこそ時効をなくすべきだろう)、この調査のための人員を官民問わず早急に手当てすべきだろう。
少なくとも紙台帳と電子データの再照合は人海戦術以外に方法がないのだから。
そうしなければ、普通の国なら暴動が起きていても不思議ではないのだ。
さらに言うならば、こういう事態が発覚しなくても社会保険事務所の窓口は大混雑と聞く。
2002年(平成14年)3月までは市町村の窓口でもやっていた年金の仕事を社会保険事務所に一極集中させたのだから当然と言えば当然なのだが、恒常的に混雑しているということは絶対的に人手が足らないのであろう。
私は日本の政治家やマスコミは、なぜこれほどまでにフレキシビリティ(考え方の柔軟性)が欠けているのか、と思うときが多いが、一つの方向性、要は今の時世は人減らしの時代とか、が決まるとそれに従わないのは悪と決め付ける傾向が強い。
社会保険庁の不祥事で、不必要な備品を大量に買っていたというのがあったが、そんな無駄金を使うなら窓口スタッフの充実に振り向ければいいと思うのは私だけではあるまい。
要は不要な部署の人間や予算を必要な部署に振り向ければいいだけの話だが、マスコミがそんなことを言うのを私はほとんど見たことがないし、まして政治家が実行する気配もない。
もし、それが国民の声だというなら国民自身がバカなだけである。
ちなみに、朝日新聞の記事(年金はどう確認するか-名前の読み方誤登録に注意)にある「夫婦の場合は、配偶者の年金に入っていた場合があるので、2人分の略歴を作っておく。」というのは大嘘だ。
おそらく、国民年金の第3号被保険者のことを言っているのだろうが、「配偶者の年金に入る」制度ではないからだ。
正しく言うならば、「配偶者の転職による手続き漏れがあるかどうかの確認のために」だろう。
これで、また意味のない問い合わせの電話が増えれば、迷惑を被るのは国民なのだ。
かつての社会保険庁の幹部の怠慢は犯罪とも言うべきだが、マスコミが問い合わせ電話や社会保険事務所の窓口の混雑に輪をかけるような嘘を書くのもやめてもらいたいものだ。
日本人は新聞の言っていることが未だに「すべて」正しいと信じきっている人も多いのだから。
もっとも小泉内閣の「100年安心プラン」などと銘打った年金改革よりは信用できるけどね。
コメント
5,000万件というと国民の2人に1人は記録が消えているということになる。
ひどすぎる。
そんな仕事、あるか??
>そんな仕事、あるか??
今日発売の週刊誌などには、わざと消したという記事になってます。
当ブログのリンクにある「Yahhoo! japan News—>棒に怒る日本人」というブログも同じようなこと書いてますね。
十分あり得る、話というのが恐ろしいですが、私は誰がこれを公にしたか、にも興味があります。
だって突然湧いて出る話ではないからね。
たぶん社会保険庁をやめた元役人かという気もしますが、いずれにしろ、これで年金払うヤツはどんどんいなくなりますね。
日本の年金制度には多くの問題がありますが、年金保険料は払っておいた方がいいですよ。
年金が無くなることは無いんだし、せいぜい、給付水準が低下する程度でしょう。
年金保険料を支払わない若者がかなり増加していますが、将来老人になって、惨めな老後が待つことになりますよ。
老人になったら、金なんて稼げないんだから。
年金保険料を支払わない若者が、自分で個人年金を積み立てていればいいんだが、ほとんどの若者は、何もしていないのが実情だ。
CR-Vさん、初めまして
確かにおっしゃる通りですが、そのように冷静になれる人がどの程度いるのかとは思います。
社会保険庁が徴収率うんぬんと言っている中には、保険料を免除してもらっている人や第3号被保険者という実質無料加入者もいるわけです。
従って、被保険者○○人で老人××人を支えるという論理はもっとシビアに見ないといけないのも事実ですね。