欧州旅行が大変なのは円安ユーロ高のせいだけなのか

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フランクフルト中央駅

このゴールデンウイークに欧州旅行へ行った人も多いだろうが、最近の円安ユーロ高のせいで、帰国後はことさら懐が寂しくなることだろう。


それもそのはず、去る4月29日にOANDAによる円の対ユーロレートが、1998年10月4日に付けた162.9円(当時はエキュ/XEU)を9年ぶりに更新し、それ以降は163円台で一進一退の状況が続いている。

さらに同じ欧州通貨のイギリスポンドも9年ぶりの安値更新は秒読み段階に入っている。

長期のチャート分析から言えば、ここが円サイドから見てのダブルボトム、ここから反転するか否かというところだが今年の1月21日の「円安は進むか、中国バブルの崩壊まで」でも触れたように、BRICs発の暴落相場に端を発する円キャリートレードの手仕舞いでもない限り、円高を期待できる状況にはないようだ。

国際ニュースバリューとしては、1998年6月24日号のNewsweek Japanの特集記事で「円暴落」のことが書かれた時の方がよほど強かったが、当時は「日本発の世界不況を防止せよ」などと言われていた時代、今ではそんなことを言う海外の経済閣僚やエコノミストは一人もいないだろう。

それだけ日本の国際影響力も少なくなったということだろうか。
ところで、9年前にも同じくらい円安であったにもかかわらず、なぜ今回の円安の方が国民へのインパクトが強い感じがするのだろうか。

おそらく当時は円安とか円暴落とか言われても、一部のビジネスマンや海外旅行客以外は、それがどうしたの、というレベルだったからか。
それに今のように外貨投資がポピュラーでなかったし、インターネットによる海外商取引も一部のマニアがやっている程度だったからか。

あるいは可処分所得が少なくなる一方の庶民にとって、円安のニュースはますます世の中が悪くなることへの想像をかきたてるからであろうか。
ユーロという単一通貨がもたらす効果が、特に通貨が弱かった国、例えばスペイン、イタリア、ギリシャ、ポルトガルといった国にとって相当大きいのは事実だろう。

かつて欧州旅行をしたときは、国境を越えるたびに両替が必要で、通貨が強い国はやはり物価が高く、弱い国は物価が安いように感じたものだった。
それが通貨統合のおかげで一変したような気がするのだ。

試しに、1998年のスペイン・オランダ旅行で泊まったホテルの値段をユーロに換算してみたいと思う。

ちなみに当時スペインで泊まったホテルはすべて中級レベルのところばかりだ。
まず最初に欧州中央銀行(ECB/European Central Bank)の旧通貨の両替から旧スペインペセタ(Spanish Peseta/ESP)とユーロの交換レートを見てみると、1EUR=166.386pta (Spanish pesetas)とわかる。

これを例えば、マジョルカ島の中級ホテルであるHorizonteで比較してみよう。
1998年7月当時の値段は、空港の観光案内所を通じた予約レートで、1泊朝食付ダブル(ツイン)ルームで8500ペセタ、これをユーロ換算すると、約51ユーロといったところだ。

そして、昨年夏(7月~9月)のスタンダードダブルは76ユーロとなっている。
これを単純に円換算すると、1998年7月当時は約7800円(1ペセタ=0.92円、ルームチャージ:51ユーロ)、昨年7月1日現在で換算すると約10600円(1ユーロ=140円、ルームチャージ:76ユーロ)、今のレベルだと約12400円(1ユーロ=163円、ルームチャージ:76ユーロ)となる。

この10年間、スペイン経済は好調でそのおかげで物価が上がったとも言えるが、それでもユーロベースでのルームチャージが約1.5倍になっているのは暴騰のレベルだ。

デフレ不況が続いた日本以外ではあまり考えられないが、もし、ルームチャージが9年前と変わってないとすれば、今の為替レートで円換算しても、9年前とあまり変わらないというのがわかるだろう。

これはスペインの一ホテルを例に取っただけだが、もともと通貨が弱かったイタリアやギリシャ、ポルトガルなど、興味があったら比べてみるといいだろう。

私の場合、1990年代は欧州に行っていたことが多く、当時のホテル代や交通費などは旅行記に明示してあるのでそれを参考にするといいだろう。

一昔前に比べて欧州旅行にかかる費用が増えたのは必ずしも円安ユーロ高のせいだけではないかもしれないからだ。
要は通貨の弱かった国の悪く言えば「ユーロ統合による便乗値上げ」かもしれないね。

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