小泉内閣が推し進めた郵政民営化の影響がさっそく出てきたようだ。
私は、ここで「光と影」と書いたが、光の方はあくまでも限定条件付き、影の方は良識がある人なら誰が考えてもそうなるだろうと予想できたことだ。
今日付の朝日新聞「個人国債、鈍る販売 郵政公社、計画の6割」という記事の中で、
日本郵政公社の個人向け国債の販売額が今年に入り、計画を下回っている。
4月発行分は初めて2種類ある個人国債のいずれも計画に届かず、販売額は計画の約6割にとどまった。
郵政公社が今年秋の民営化を控え、国債よりも手数料収入が高い投資信託の販売に力を入れていることが背景にある。
国債を販売してほしい財務省には不満がたまりつつある。
要は国債が売れないのならこれを機に本気で無駄遣いをやめる方向に進むというのであれば、このニュースは決して悪いものではない。
ただ、郵政民営化の議論のときも小泉政権によるインチキなすり替え(2005年8月27日「小泉・竹中コンビのペテンぶり」)が行なわれて、結局、国民が望んだ無駄遣いの権化たる独立行政法人(旧特殊法人)や公益法人はノウノウと生き延びていることからも、国債の売れ行き悪化が財政規律の見直しにつながる可能性はあまりないだろう。
むしろ、国債の海外販売を強化するために金利を上げざるを得なくなる可能性の方が高い。
そうなると、団塊世代の退職ラッシュに見舞われる借金まみれの国や地方自治体は言うに及ばず、国債の含み損を抱えることが予想される金融機関、変動金利で住宅ローンを組んでいる人にとっても多大な負担増になる。
最悪の場合、第二の夕張、山一、拓銀が現れ、金融パニックは想像を絶するものになるだろう。
一方で、すでに民営化の弊害も出ている。
職員の「投信の販売目標」は月約1000万円。
郵政公社は「ノルマではない」としているが、職員は「上司からは、達成しないとクビだと言われている」。
職員は客に対し、元本割れのリスクがあることを丁寧に説明しているつもりだ。
しかし「客が完全には理解していないと思いつつ、ノルマを達成するために投信を売ることがある」と告白する。
まるで、一昔前の証券会社のノルマ営業みたいな光景だ。
2005年10月から郵便局での窓口販売が開始されて1年半、従来のイメージしか持っていない私には驚くとしか言いようがない。
そもそも、証券会社と違って郵便局にお金を預けている人はリスク商品に投資するためではなかろう。
あくまで生活費、あるいはリスクを嫌うからこそ預けているのだ。
もともとそういうことをやっていなかった銀行でも1998年12月から投資信託販売が解禁され、今では当たり前のように売っているから郵便局もそのうちそうなる、という人もいるだろう。
しかし、私に言わせれば郵便局は高齢者比率が銀行に比べれば相当高いように思うし、最後の安全の砦と感じている人も多いように思えるのだ。。
また、機械操作の苦手な高齢者にとっては、窓口で応対してくれることが一種の安心感を与えているのも事実だ。
それが、これか・・・と、やり切れない気持ちだ。
このままいくと、かつて地方の郵便局員が一人暮らしのお年寄りの安全確認も兼ねて郵便配達をし、ときには世間話の相手になってやっていた、などという心安らぐニュースもあった郵便局の情景は早々になくなるだろう。
それどころかノルマ達成のために詐欺まがいのセールストークで個別営業をかける職員も出てきて社会問題化するのではなかろうか。
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