小泉・竹中コンビのペテンぶり

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レッドカードを出す女性

私は今回の選挙でも基本的には「政権を交代させるための選択肢」あるいは「ペテン師にお灸を据える選択肢」を軸に投票することを公言している。

それはどんなにいい政治家でも長期にわたって権力を維持すれば腐敗するという原則によるものだ。

そして、基本的に自民党の長期政権が官僚を堕落させ、政治・行政に緊張感を欠いたと信じているからこそ、鼻をつまみながらも「どうしようもないと言われる野党」に入れるのだ。

また、今回の選挙に関して私が危惧している一番大きなことは「ペテン師の戯言」を提灯メディアが増幅して国民に伝えていることで、彼らの弱者切捨て政策によって経済的に困窮させられていると思う者までペテン師たちに拍手し、歓声をあげていることだ。

8月19日付の「日本は半ば独裁国家と同じだ」で言及したように、一見市場経済論者の小泉・竹中コンビは、不正を取り締まり、市場の公正さを確保するための努力を一切しないし、口にも出さない。
それがペテン師以外の何者でもないということを書いた。

その実例をあげてみよう。
日本にも証券取引等監視委員会というのがあるのはご存知のことだろう。
この組織は単純に言えば、株式市場などが公正に運用されているかどうかのレフェリーだ。

下の記事を見て欲しい。
直近1年間に投資家から提供された情報件数に対する告発件数の比率だ。

当然ながら提供された情報に告発に値しないものやガセネタが含まれているとしても単純計算でたった0.002%だ。
この数字は円定期預金の金利などではない。

いったい何人で仕事をやっているのかを見ると、平成16年度末の総人員はたった237人だ。(平成17年度末には307人になる予定)
不正の摘発がたったこれだけで満足にできるわけがないというのは一般常識を持った人なら誰でもわかるだろう。

実際のところ寄せられた情報のウラを取るだけで終りという体制でしかないというのが私の見方だ。
これが香具師(やし)と揶揄される輩にかかると、何も仕事をやってない税金泥棒集団とか言われてこき下ろされることになる。

ちなみに本場アメリカのSEC (U.S. Securities and Exchange Commission)は10倍の3871人ものスタッフを擁していると言われる。
実のところ裁判所のスタッフの比率も同レベルということが過去に報道されたこともある。(社労士・森本かずひこ氏のサイト-司法改革

市場経済の本場でさえ、その公正さを維持するためにこれだけのコストをかけている。

人によっては月3ケタの残業を強いられ、裁判官がただ訴状を機械的に処理するだけで手一杯の日本とは雲泥の差なのだ。
これだけ取っても「日本は役人が多すぎる」という単純な発想がバカげていることがわかるだろう。

実際は、必要なところは足らなく、いらないところに多い、ということでこれが是正されて来なかったのは政治の怠慢、そして既得権擁護に走る幹部官僚自身の責任でもあるのだ。

証券監視委への情報提供、過去最多の4669件 (2005.8.26 読売新聞)

西武鉄道株の名義偽装事件や、フジテレビジョンとライブドアによるニッポン放送株争奪戦などで、証券市場に対する関心が高まったことを背景に、昨事務年度(2004年7月~2005年6月)、投資家らから証券取引等監視委員会に寄せられた情報件数が過去最多を記録し、監視委による告発件数も過去最も多かったことが26日、わかった。

監視委によると、提供された情報件数は前年度比45%増の4669件に達した。提供はインターネット経由が約7割を占めた。
一方、告発件数は11件。

対象は、1日に何度も売買を繰り返すデイトレーダーと呼ばれる個人投資家による株価操縦や、経済産業省のキャリア官僚が法令に基づいて入手した情報を利用して行ったインサイダー取引などだった。

そして、小泉首相の7月20日の神戸大丸前での街頭演説だ。

「今回は単純な選挙なんです。郵政民営化にイエスかノーかが争点です」
「郵政民営化はあらゆる改革につながる最も基本的な改革なんです」
「一番大事なことは公務員を減らすということ。みなさん賛成でしょ」

また公務員不祥事の火薬庫とされる関西を選んでこういう演説をするところが彼の策士ぶりを物語る。
大阪市役所のデタラメぶりに怒り心頭の市民を相手にこんな演説すれば拍手喝さいに決まっている。

しかし、真っ当な政治家なら以下のようになるはずだ。

「役所もリストラの対象となるのは当然です。しかし、リストラとは単純にクビを切ればいいということではなく、スクラップアンドビルドということです」
「一番大事なことは民間でできることは市場原理に任せ、それが公正に行なわれているかのチェックをこれからの役所は重点的に担わなければならないということです」
「単純に言えば、いらない役所をなくし、そこで余った人材を必要なところへ投入し、税金を効率的に使うことが我々政治家の使命です」

間違っても小泉・竹中コンビの口からそんな言葉が出ることはないだろう。
かといって民主党の岡田党首から出るとも思えないが、「誰が日本経済を腐らせたか」の著者でもある金子勝氏(慶大教授)によれば、竹中大臣は1990年代にバブル紳士の訴追を策を弄して実質的に妨害し、彼らを時効の壁の向こう側に追いやったA級戦犯の1人であるという。

例えば、1995年~1996年の住専問題の時には「銀行(貸し手)のせいではなく、農協の既得権益の問題」と言って、腐りきったバブル時代の銀行経営者の逃げ切り(訴追時効が5年)を許し、1998年の経済戦略会議ではまさに銀行経営者の責任を棚上げした提言を行なった委員の1人である。

短期経済政策への緊急提言(1998.10.14)

■金融システムの早期安定化
景気低迷とデフレ進行による不良債権の急増、株価急落に伴う含み損の拡大などにより、銀行の自己資本比率は著しく低下している。
このまま放置すれば、中小企業を中心に貸し渋りや資金回収が一層加速し、デフレが深刻化するだけでなく、マーケット主導の金融恐慌への道をたどる可能性なしとしない。

この状況を回避するには、最長3年という期限を区切って、存続可能と判断される銀行に対して、政府の積極的な主導の下に大胆かつ速やかに数十兆円の公的資金を投入し、自己資本比率を大幅に引き上げる措置が早急に必要である。

金融監督庁の検査結果により、公的資金を受け入れざるを得ない銀行の経営者責任が問われるべきことは当然である。
ただし、責任論については、事態の緊急性に鑑み公的資金投入問題とは切り離して考えるべきである。

また、公的資金を受け入れた金融機関は、早急に自主的経営改善計画を策定・実行すべきであるが、3年後に顕著な経営改善を達成できなかった場合には、経営責任を明確にする必要がある。

まさにタチの悪さは一級品だ。
3年後(2002年まで)に顕著な経営改善を達成できなかったいずれの銀行経営者も何ら経営責任を明確しなかったのは言うまでもない。

ついでながらこの委員の中には奥田碩経団連会長もいたことを追記しておく。
つまり、こんな彼らを改革の旗手とあがめている小泉首相はペテン師の最たるものと言わざるを得ない。

そもそも郵政民営化の原点は特殊法人を始めとするデタラメな組織に無駄金を流さないということだったハズだ。

しかし、その特殊法人改革は単なる看板の架け替えで終わり(故石井紘基衆議院議員が命を賭けた官僚総支配体制の打破)、道路公団の民営化もほとんど骨抜きにされた。

これだと、現在郵政公社が引き受けさせられている国債や財投債も、民営化すれば何の歯止めもなく引き受け続けさせられ、さらにはハゲタカファンド(外資)でも買うとは言わないような、不良債権や大量の地方債、財投債を抱え、ニッチもサッチもいかないボロ銀行の救済(合併の受け皿)に使われることもあり得る。

そして、ここが重要なのだが、そうしたことでますます資産内容が劣化した民営郵貯は、表向き民営だから国は株主責任以外は何も負わなくていいということになるのだ。

もし、ボロ銀行の救済を国営郵貯が行なえば国の直接責任とされるが、民営郵貯は株主(国)が代表取締役(傀儡の民間トップ)を株主総会においてすげ替えれば法的責任の追及は終わる。

最後にペテン師どもは「改革者」という美名のもとに濡れ手に粟の錬金術を駆使し、「私の役目は終わった」などとほざきながら退場するというスケジュールになるだろう。

要するに、郵政民営化の実態は、国民のためではなく、今までの政治の失態のすべてを傀儡の民間トップと残されたスタッフに押し付けて逃げ切るためのものとも言える。

郵政民営化が実現すれば、表向きの消費者向けサービスはよくなるだろう。
しかし、それを支えるスタッフはJRの運転士、あるいは長距離トラックの運転手のような条件のもとで働かされ、いつ事故が起こってもおかしくないといった環境に陥ることは想像に難くない。

今でさえ、トヨタ方式の実験モデル局となっている埼玉の越谷郵便局では、かえって顧客サービスが低下し、スタッフの疲労は増加の一途を辿っているという。

2005年1月10日号の日経ビジネスの特集「ゆうパックが届かない」でも外部委託費の削減で超繁忙期を前に配送業者が逃げ出し、アルバイトは低賃金を敬遠して集まらない、そして遅配や苦情が相次ぐということが書かれていた。

いっそのこと「郵政事業を今のまま民営化する」のではなく、郵政公社の廃止、事業の全面撤退を謳い、ほかの民間会社間で競争をさせる方がマシかもしれない。

それを言わないのは小泉・竹中コンビの裏戦略のためであり、国民のためにやっている政策ではないからだ。
最後に日刊ゲンダイ(2005.4.27)の記事を紹介して締めとしよう。

■郵政民営化も今回の尼崎の惨事以上の事態を招く

小泉首相が内政、外交の重要課題を放り出して血道を上げている郵政民営化もJR西日本惨事のような恐ろしい事態を招くのは必死だ。
郵政事業の民営化はニュージーランドでもドイツでも失敗。
両国政府はズタズタになったシステム修復膨大なエネルギーを使っているのが実情だからだ。

ニュージーランドでは民営化でガタ減りした郵便局を再び増やしている。
また、郵便貯金は大半が外資系の手に落ち、低額預金者から高い口座管理料を取ったため社会問題に発展、国が出資して新しい形で郵貯を復活させている。

民営化前に3万局あった郵便局が1万局まで減ったドイツも、国民の批判を受けて1万2000局の設置を義務づける法律を制定し、不便の解消に努めている。

「民営化路線が叫ばれた当初、よく例に挙げられたニュージーランドは郵便のほか鉄道、航空事業を民営化しています。しかし、ことごとく失敗に終わり、今は国営に戻っています。

郵便貯金や航空事業が外資に買われてしまった。
民営化、とりわけ外資が入れば、儲らない部分は容赦なく切り捨てられる。

そもそも山の中の一軒家にも配達するユニバーサルサーピスを国際条約で義務付けられている郵便事業を民営化するのには無理がある。

それを小泉内閣は郵便、郵貯、保険とセットで民営化、3分野ともユニパーサルサービスを義務付けるとしているのだから支離滅裂です。

これでは国営のコングロマリットをつくるだけで、民営化する意味がまったくありません」(帝京大教授・降旗節雄氏=経済学)
小泉内閣はなぜ、自民党と妥協に妥協を重ねながら、デタラメな郵政民営化を強行しようとしているのか。

■”民営化でよくなる”は根拠のない風説

小泉が何が何でも民営化にこだわる理由は2つある。
1つは郵貯等の特別会計が抱える49兆円の”隠れ借金”を公社化で国民負担に付け替えたことを民営化で完全に隠蔽することが目的で、財務省官僚との合作シナリオだ。

そしてもう1つは、民営化で郵貯・簡保が持つ350兆円の庶民のカネを外資に開放することだ。
米国では郵便事業は国営を維持している。(The United States Postal Service)

その米国が郵政民営化の早期実現を迫っているのは、このカネが狙いだからだ。(2004.10.14 日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書)(Annual Reform Recommendations from the Government of the United States to the Government of Japan under the U.S.-Japan Regulatory Reform and Competition Policy Initiative)

田中康夫・長野県知事は本紙コラムで「郵政民営化後に株式も放出すれば、ハゲタカファンドを始めとする外資が競い合って買い求める。一般市民の”虎の子”は、白い肌をした輩の運用下に置かれるのです。(中略)国を売り渡す。これぞ愛国者・純ちゃんが思い描く『構造改革』なのでしょう」。

日本ではこれまでJR(旧国鉄)のほかNTT(旧電電公社)、JT(旧専売公社)が民営化されたが、国民のメリットはほとんどない。

旧公社時代より窓口サービスが良くなったといってもそんなことは民営化しなくてもやれる。
JRの民営化で旧国鉄債務は減らず、国の負担分22.7兆円は増える一方。

NTTも電話料金は下がったが、IT時代にもかかわらず過疎地でなくてもADSLも光ファイバーも使えない地域がワンサカある。
JTもたばこ税が政府の赤字補填に使われ、たばこ代は上がり続けている。

「海外でも民営化は成功どころか惨憺たる結果を招いているケースがほとんど。民営化すれば良くなるというのは全く根拠がありません」(帝京大教授・降旗節雄氏=経済学)
郵政民営化は庶民のカネをアメリカに渡す危険なたくらみ。
直ちに潰すことが国会議員の務めである。

コメント

  1. 選挙前に知っておくべきこと:リメンバー石井こうき事件!(前の記事にイラストがあります。)

     今われわれは今後4年間の国の代表を選ぼうとしている。小泉さんはいよいよ舞台の上で舞い上がり、早くも勝利宣言しているような状態に??黷?黷ヘ首をかしげる・・・。
     何か判ぜんとしない日本の選挙。いつも自民党が勝ち続けて60余年。自民党の一党独裁が生んだ日…

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