架空請求ハガキ再来、料金後納郵便を手掛かりに架空請求業者を逆告訴できるか

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詐欺のイメージ

2019年4月に送られてきた「民事訴訟最終通告書」に続いて、今度は「消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」が送られてきた。

この架空請求のはがきは、料金後納郵便で送られてきたのだが、この制度を利用するには、

  1. 取扱郵便局の事前承認
  2. 一カ月間に差し出す郵便物・荷物の料金等の概算額の2倍以上に相当する額の担保の提供

が必要となる。
料金後納の表示が偽物でなく、正規のものであれば、この二点から架空請求業者を割り出し、精神的苦痛を受けたとして、損害賠償請求(逆告訴)ができないだろうか。

消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ

架空請求ハガキ本文

「消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」で検索すると、架空請求はがきとしては、目新しいものではなく、すでに国民生活センターや、各地方自治体の警告が何件かヒットする。

実際のところ、国民生活センターのウェブサイトでは2018年4月2日付で確認したとして、「速報!架空請求の相談が急増しています-心当たりのないハガキやメール・SMSに反応しないで!-」というページでひな形を公表している。

また、2019年10月4日付で、神奈川県庁の「架空請求に関するハガキ等を送りつけてくる事業者名等一覧」にも公表されたので、神奈川県内では今月になって、昨年と同じ差出人を語った架空請求が流行りだしているのかもしれない。

双方の違いは、差出人の所在地と電話番号、昨年のものは「東京都千代田区霞が関2丁目6番1号 03-6386-7356」で、現在拡散しているのは、「東京都千代田区内幸町1丁目1-7 03-6812-1398」となっている。

手を変え品を変え、架空請求をやる輩が絶えないのは、それだけ詐欺の被害に遭う人(高齢者)が多いのだろう。

詐欺団でも利用しやすい料金後納郵便の制度

架空請求ハガキ宛名面

日本郵便のウェブサイトには料金後納について説明がされているが、各種約款というところから内国郵便約款を見ると、料金後納の定義は以下のようになっている。

(料金後納)

第49条 郵便物を毎月当社が別に定める通数以上差し出す者は、集配事業所又は当社が別に定める事業所の承認を受けてその差し出す郵便物(当社が別に定めるものを除きます。)を料金後納とすることができます。

2 前項の承認の請求は、当社が別に定めるところにより、これをしていただきます。
3 当社は、料金後納の取扱いを停止し、又は料金後納の承認を取り消すことがあります。

(注1) 第1項の当社が別に定める通数は、50通(当社が提供する郵便以外の送達役務に係る差出個数を含みます。)とします。
(注2) 第1項の当社が別に定める事業所は、支社が指定した事業所とします。
(注3) 第1項の当社が別に定めるものは、点字内容証明の取扱いをする郵便物とします。
(注4) 第2項の当社が別に定めるところは、当社所定の書面を料金後納とする郵便物を差し出そうとする事業所に提出していただくこととします。

つまり、特定の郵便物を料金後納とするためには、日本郵便の管轄事業所(いわゆる郵便局)の事前承認を経ないといけないことと、それが取り消されることもあることが明記されている。

後納郵便物の表示に差出事業所名(〇〇局)がなくても大丈夫

私が、この架空請求はがきを見て、何か変だと思ったのは、料金後納の表示の方法がおかしかったからで、それが元で、料金後納のことについて調べることにしたのだ。
通常は、料金後納郵便の文字の上に差出事業所名(〇〇局)という表示があるように思ったからだ。

〇〇局
料金後納郵便
 

しかし、これは「郵便物・荷物の外部に差出人の氏名、住所等を明瞭に記載した場合には、差出事業所名を省略できます。」とあるので、一応、偽物でないと推定できた。
偽物だったら、はがきを直接ポストへ投函するのだから、詐欺団がそんなことまでしないだろうと思ったのだ。

料金後納承認請求書に法人登記簿の添付は不要

私は、ざっと約款を見たときに、第49条から第53条の間に、法人登記簿という記述があったので、幽霊法人の料金後納承認請求をはねられるのかと思ったら、他局差出承認を受けようとする場合(内国郵便約款第53条第4項)など特別なことをしなければ、法人登記簿を添付する必要はないようだ。

事実、各種請求書類等様式集から内国郵便関係の「料金後納承認請求書」というものを開くと、「9 この請求書に、本人等確認書類を添えていただきます。」とあるものの、私が郵便局で確認したところでは、それほど厳格な審査が行われているようには感じなかった。

結局、こうした詐欺団の料金後納承認請求書が誰の名前でされているのかわからないが、法務省というだけで、スルーで申請を通していることは、さすがにないと信じたい。
もし、そうでないならば、このような役所の名前を語るような怪しげな団体でもできるというのは、審査マニュアルに欠陥があるとしか言いようがない。

従って、おそらくは、登記簿謄本等の添付が不要なので、仮の法人名で申請しているに違いない
詐欺団は証拠や足跡を残すのを嫌うので、いくら形式審査とは言え、本人等確認書類が必要な個人名での申請は避けると思われるが、日本の場合、顔写真が付いていない書類でも本人確認書類になるので、詐欺団なら、そういった点は大いに利用(悪用)するだろう。

それに、どの場合に料金後納の承認が取り消されるかは書かれていないが、おそらく郵便料金を期日までに支払わなかったなどの理由しかないのかもしれない。

料金後納ができなくなっても、彼らは痛くも痒くもないのだろうが、個人の申請で本人等確認書類を要求しているならば、法人の申請であれば、少なくとも、法人登記簿などの証明の提示は必要なのではないだろうか。

後納ポストインが悪用されているのか

後納ポストインとは、2011年8月1日からスタートした、郵便局が無償で貸し出す専用ケースに、後納郵便物等差出票と、対象となる郵便物を入れて、近くのポストに投函できるサービスだ。(2011年7月15日-後納郵便物等の郵便差出箱による引受け(後納ポストイン)の実施

このサービスは、24時間利用可能で、郵便局に並ばずとも済むものなので、多くの事業者にとって良い制度なのだが、郵便局員に顔を見られないという点で、詐欺団にとっても素晴らしい制度だ。

普通の人なら、後納郵便物等差出票に書く差出人氏名と、郵便物の差出人が違ったらどうしようと悩むこともあるだろうが、詐欺団はそんなことに頓着しないと思う。

郵便局の窓口で郵便物を差し出すなら、差出人の違いを郵便局員に咎められ、顔を覚えられる可能性もゼロではないが、ポストに入れてしまえば、後は配達のルーチンワークに乗せられるだけだ。
つまり、料金後納承認請求書が承認されたら、差出人が郵便料金を払うか払わないか以外のことは問題にされない。

詐欺だと思われるはがきを配達するのかってお怒りになる方もいると思うが、郵便法第7条と第8条の規定で、どんな郵便物であろうと、中身を見ずに(はがきは見ていないことにして)、配達しなければならないのだ。

第7条(検閲の禁止) 郵便物の検閲は、これをしてはならない。
第8条(秘密の確保) 会社の取扱中に係る信書の秘密は、これを侵してはならない。

あえて言うならば、郵便法第31条に、郵便の引受けを拒否できる場合が挙げられているが、郵便物の中身が、郵便法令や日本郵便の定める約款に抵触したときの規定なので、はがきの場合や、封書の中身が書類のときには、基本的に該当しない。

逆告訴は困難か

東京弁護士会

私が架空請求業者に対する逆告訴を思いついたのは、2005年3月23日付で掲載した「架空請求の対抗手段となるか?」で紹介した朝日新聞の記事のことが頭にあったからだ。

このときは、簡易裁判所を使った少額訴訟で架空請求を行ったために、業者に足が付いて損害賠償請求ができたのだが、今回は、料金後納制度があまりにもザル過ぎて、手掛かりが掴めそうもない。

要は、郵便料金を前払いするか後払いするかの違いなので、厳格な本人確認を行う必要がないからだと思う。
しかしながら、料金後納制度が、ここまで広範に詐欺団に使われているのであれば、少しくらいは約款を見直すことをすればいいと思うのは私だけなのだろうか。

ただ、捜査当局が日本郵便(郵便局)に対して情報開示を求め、それを手掛かりに詐欺団が捕まるようなことがあれば、少しは違ってくるかもしれない。

結局のところは

結局のところ、こうした架空請求が来たときは、各公共団体が警告しているように「無視」するしか方法がないようだ。

もっとも、架空請求業者に電話して突っ込みを入れてみたり、動画を撮ってやり取りを晒してみたりする強者もいないわけではないが、その一方で、騙されてお金を払ってしまう高齢者が後を絶たない。

私も前回は架空請求業者に電話してみたが、今回はシカト(無視)することにした。
暇なら動画を撮ってみようかとも思ったが、あいにくと、そこまで暇はなかったのだ。

えええ、こんなブログ書いているのにって?
そう、今回は逆告訴がテーマだったからね。
でも民事訴訟はお金も時間もかかるし、相手から金が取れそうもないので・・・

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