単純外国人労働者も日本を敬遠、未来の日本の職場は高齢者が支えるのか

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外国人ビジネスマン

2019年9月27日付の読売新聞は、「外国人材 『特定技能』取得271人 受け入れ拡大半年 最大見込みの0.5%」という表題で、「新たな在留資格『特定技能』には今月13日現在、1283人の外国人から申請があり、271人が資格を得たが、外国人労働者の今年度の受け入れ見込み数最大4万7550人のわずか0.5%にとどまる。」という内容のショッキングなニュースを報じていた。

「笛吹けど踊らず」の外国人労働者受け入れ拡大政策

私に言わせれば、2019年4月からの単純外国人労働者の受け入れ拡大ということで、蓋を開けてみたら、「笛吹けど踊らず」という状況は驚きに値しないが、彼らを使って人手不足解消を目論んでいる経済界の人たちにしてみれば、出鼻をくじかれた思いだろう。

私がかつて掲載した「日本は2019年版外国人が働きたい国ランキングでブービーに(2019年7月11日)」と、「日本の労働環境、20-40時間のサービス残業付、過労死さえも by Wikipedia英語版(2019年3月15日)」にあるように、もはや、日本は外国人労働者にとって、働きたい国に選ばれなくても不思議でも何でもない。

私が思うに、外国人にとって、日本が働きたくない国に成り下がってしまった最大の転換点は、2016年に電通の高橋まつりさんが過労自殺したことが、世界中の英字メディアで報じられ、日本の労働環境がおよそ先進国とは思えないことが、外国人にも大きく認知されたことだろう。

近い将来、日本の職場は誰が支えるのか?

このままいけば、近い将来、日本の職場は誰が支えるのだろうか。

2019年6月4日付の東洋経済の記事「人手不足を嘆く地方の組織が陥る『4つの矛盾』」を読むと、そもそも単純外国人労働者の受け入れ拡大政策は、地方の経済界の「日本人が来ないなら外国人を」という、半ば不純な動機が大きいように思える。

自分たちの雇用環境を全く改善せずに、平成時代の30年間、労働者の善意に頼った経営をしてきたことが、人手不足の原因なのに、まだわからないのだろうか。

日本人の若者が来ないから外国人を入れようと言って、その彼らにそっぽを向かれたら、日本の企業経営者たちはどうするつもりなのか。
政府が仕事をしない、日本人の若者の根性がないと言って、外国に飛び出すのか。
しかしながら、海外進出先の居住者(外国人)は、そうした日系企業を就職先に選ばない可能性が高いと思うのだが、それをどうやってクリアするつもりなのか。

読売新聞の記事によれば、出入国在留管理庁の佐々木聖子長官は、単純外国人労働者の受け入れを拡大して、半年経過しても、受け入れ見込み数最大4万7550人のわずか0.5%しか特定技能資格を得た外国人がいないことに対して、「申請書類の準備に時間がかかるケースがあり、制度を円滑に活用できる環境を整えていく」と述べたらしいが、もはや申請書類の問題だけが原因とは思えないほどの少なさだ。

仮に、日本で働きたい外国人労働者の特定技能資格の申請希望者が溢れていて、出入国在留管理庁の役人が、このペースで仕事をやっていたら、もっと違った新聞記事が出てくるからだ。

外国人が驚く日本のサラリーマンの紹介動画

去る10月2日付のキャリコネニュースの記事「『見ているだけで憂鬱になる』日本のサラリーマンに密着した動画に海外から驚きのコメント多数」で紹介されていた、日本のサラリーマンの働き方を英語で紹介した動画「【密着シリーズ】日本のサラリーマンの1日に完全密着!(Day in the life of an Average Japanese Salaryman in Tokyo)」が、国内外を問わず、多くの人の注目を集めているらしいが、このような動画の拡散によって、ますます外国人労働者の日本離れに拍車がかかるだろう。

また、私が7月11日付で掲載したコラムと元ネタ(HSBC Expat Explorer – Expat 2019 Global Report)が同じ記事が、9月27日付のITmediaビジネスオンラインでも見つかった。
経済評論家の加谷珪一氏による「『外国人が働きたい国』で日本が33カ国中32位--この国の“真に深刻な問題”とは」という記事だ。

この最後の締めの一節をご覧になって貴方はどう思うだろうか。

安倍政権は、深刻な人手不足に対応するため、外国人労働者の本格的な受け入れをスタートしており、日本は事実上の移民政策に舵を切った。日本企業が求めているのは安価に雇える外国人労働者であり、具体的にはフィリピン、インドネシア、ベトナムといった国からの来日を想定している。

だが、外国人にとって日本はこれら3国よりも魅力のない国となっており、このままでは、外国人労働者すら来てくれない可能性もある。このHSBCのランキングは、あくまで駐在員を対象としたものであり、単純労働者にアンケートを取ったものではないが、マクロ的には同じ傾向を示すと考えてよいだろう。

下手をすると、日本は外国人労働者を受け入れるのではなく、外国に出稼ぎに行くことすら求められる可能性も出てきたといってよいだろう。

海外移住と文化の交流センター

歴史は繰り返すのか?

日本に残る企業は高齢者が主な支え手とならざるを得なくなり、それでは困るという企業は外国へ逃げ出す。
優秀な若者は、国際比較で低賃金職場しか残らなくなった日本を見限り、アセアン諸国など外国に就職口を求める。

私は半年前の神戸オフのときに立ち寄った、海外移住と文化の交流センターの展示室にいたときの記憶が走馬灯のように思い出された。
そこには、1世紀ほど前の日本が貧しかった頃に、南米への移住に賭けた人たちのことが掲載されていたからだ。

果たして、令和時代の日本は、太平洋戦争前のような経済状態に先祖帰りするのだろうか。

「下手をすると、日本は外国人労働者を受け入れるのではなく、外国に出稼ぎに行くことすら求められる可能性も出てきたといってよいだろう。」という加谷珪一氏のコラムの一節からは、今は、歴史の1ページとなった「からゆきさん(19世紀後半に、東アジア・東南アジアに渡って、娼婦として働いた日本人女性のこと)」という言葉が、亡霊のように蘇るかもしれないことを示唆している。

外国人材 「特定技能」取得271人 受け入れ拡大半年 最大見込みの0.5% (2019.9.27 読売新聞)

外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理・難民認定法が4月1日に施行されてからまもなく半年となる。
新たな在留資格「特定技能」には今月13日現在、1283人の外国人から申請があり、271人が資格を得たが、今年度の受け入れ見込み数最大4万7550人のわずか0.5%にとどまる。

出入国在留管理庁の佐々木聖子長官は読売新聞のインタビューで、現状について「半年間の人数で評価すべきではない」としつつ、「申請書類の準備に時間がかかるケースがあり、制度を円滑に活用できる環境を整えていく」と述べた。

同庁によると、国内に在留する外国人からの申請は547人で資格変更を認められたのは114人。
海外からは736人が申請し、157人が資格を得た。

2年10か月以上の実習経験がある外国人技能実習生は、同じ職種なら無試験で特定技能に移行できるため、大半が実習生からの「移行組」とみられる。特定技能の対象14業種の一つち、「介護」「宿泊」「外食」の3業種で資格を得るための技能試験が実施され、2000人以上が合格した。ほかの11業種でも今年度中に試験が行われる見通しだ。

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