日本は世界の高度人材(high-skilled talent)から見限られるのか

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驚く外国人男性

政府は、高い技術や知識を持つ外国人が日本に来やすい環境をつくり、経済成長につなげたいということで、高スキルを持った外国人の受け入れを促進しようとしている。(2017年4月25日 日経新聞-外国人の高度人材、在留資格とりやすく)(法務省-高度人材ポイント制による出入国管理上の優遇制度

2017年10月27日付の日経新聞にあるように、英人材大手のヘイズ(Hays)の調査によれば、日本は高度人材不足という実態があるからだ。

ところが、2017年11月21日付のブルームバーグは「日本はアジアで最下位、高度外国人材への魅力欠く-IMD」(原文:Japan Ranked Last Choice in Asia for Top Foreign Talent)(関連記事:Nikkei Asian Review on November 21 2017 – Hong Kong, Singapore are Asian stars in IMD talent ranking)という表題で、スイスのビジネススクールIMDが発表した2017年版世界人材ランキング(IMD World Talent Ranking 2017)によると、調査対象のアジア11カ国中、日本は高度外国人材にとって最も魅力がないという結果になったと書いている。

要は、一部の右派のブロガーが書いているような、日本に外国人の高度人材はいるとかいらないとか言う以前に、来てもらえない国に成り下がってしまっているということだ。

これについては、2017年12月2日付の「エストニア共和国から愛をこめて」の記事「高度技能外国人からの人気、日本は見事にアジアでビリッケツ」で相当に辛辣に書かれているのでお読みになるといいと思う。

そうであるならば、「日本の会社は日本人だけの力でやっていけば良い」と考える人は意外なほど多いだろう。

この出だしの文章、2017年9月3日付の弊サイトのブログ「電通女性社員過労自殺事件がもたらす日本の残酷な未来」と同じになってしまうが、日本の国内企業は、高スキルを持った日本人を引き留める魅力があるのだろうか。

答えは、2017年8月21日付の経済産業省の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」と、2017年8月27日付の日経新聞「役員給与、アジア勢が上 中国4000万円・日本2700万円」、さらには、2017年10月7日付の日経新聞「トップ技術者1000人流出-中韓電機、1970年代から引き抜き 監視強化で国益死守は限界」に出ている。

もはや、高スキルを持った人にとって、日本の国内企業で働いても報われることはなくなりつつあるというのが、これらの記事を読んだ私の率直な感想だ。

つまり、10月27日付の日経新聞の最後の一節にある「複数の言語能力や、IT(情報技術)などの専門知識を持つ高度人材の給与についても、日本は中国などに劣り、人材を引き寄せられていないとしている。」というのは、8月27日付の記事と密接に関係するわけで、そこに国籍の違いなどなく、高度人材は国境を越えて、自分を最も評価してくれるところへ行ってしまうわけである。

それに輪をかけて高度人材の国外流出(来日拒絶)を招きそうなのが、高収入サラリーマンに対する所得税増税案(2017年12月11日 産経新聞-増税「850万円超」合意 自公、年収水準引き上げ 所得税改革が事実上決着)で、一見すると庶民に優しい税制改革に見えるが、実質的には高度人材の国外流出(来日拒絶)促進税制になる可能性が高い。

政府や財界を始め、一般庶民(有権者)に至るまで、なぜノーベル賞などを取る日本人は国外在住者が多いのかということを真剣に考えた方がいいだろう。
そこには、ノーベル賞万歳、日本万歳と喜んでばかりいられない現実が垣間見えるに違いないからだ。

今から6年前、2011年3月11日の東日本大震災からしばらくたった頃、海外投資を楽しむ会の掲示板で「この国の行く末は、遅かれ早かれ、三人国家(老人、病人、貧乏人)でしょうね。」と書いた人がいた。

ずいぶんだな~とそのときは思ったが、今や、日本はそこに向かって突き進んでいくような気がしている。

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日本は高度人材不足 33カ国中ワースト3位 (2017.10.27 日経新聞)

英人材大手のヘイズは27日、グローバルの人材需給調査を発表した。
企業などで必要とされるスキルを持った人材と、労働市場で実際に供給される人材の需給を示す「人材ミスマッチ」で日本は33カ国中、下から3番目だった。

ビッグデータ分析や人工知能(AI)開発など高度な人材が不足しており、人材獲得や生産性向上に向けて、企業や政府の取り組みが必要になりそうだ。

経済協力開発機構(OECD)などの国際機関や各国政府が出した失業率や教育水準などの統計をもとに、米中英など33カ国で調査を実施した。
人材ミスマッチの項目で日本の順位は同率最下位だったスペイン、ルクセンブルクに次ぐ低さだった。

ヘイズ日本法人マネージング・ディレクターのマーク・ブラジ(Marc Burrage)氏は「日本の失業率の低さは各国の羨望の的だが、必要とされる高度な技能を持った人材が供給されておらず、生産性の高さにつながっていない」と話した。

複数の言語能力や、IT(情報技術)などの専門知識を持つ高度人材の給与についても、日本は中国などに劣り、人材を引き寄せられていないとしている。

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