最近では、民間企業のサラリーマンの長時間労働や過労死などブラック労働環境のニュースが多く流れているが、それに負けず劣らず、公立学校教員の労働環境がブラックだという記事も多くなってきた。
そこで、私が2017年10月10日に書いた「憲法違反のサービス残業、不払い賃金は民法の不当利得返還請求で取り戻せるか」に続いて、公立学校教員の労働環境がブラックだということについて調べていると、日本は労働関係法規が全く守られていないトンデモない国だということがよくわかる。
実際のところ、日本政府は国際労働機関(ILO/International Labour Organization)が批准を求める条約のうち、労働時間に関するものは一つも批准していないし(2017年1月30日 弁護士ドットコムニュース-日本、労働時間に関する「ILO条約」批准ゼロ・・・労働問題の「遅れている国」なのか?)、八つある基本労働条約のうち、批准していないものが二つもあるという。(2015年1月14日 東京新聞-ILO基本条約と日本 二つが未批准、問われる姿勢)
もっとも、このことだけをもって日本が遅れているとは言えないだろうが、2016年8月10日付のピコシム氏のブログ「国連から是正勧告 日本の長時間労働と奴隷状態の29万人の存在」にあるように、政府が労働者の人権をあまり重要視していないというのは事実だろう。
ところで、2017年9月11日付の東洋経済は「中学教師の何とも過酷で報われない労働現場」という記事を掲載しているが、この記事の中で、「部活動問題で深刻なのは長時間労働の一因になったり、休みが取れなかったりすることだけでない。『公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法』(給特法)によって、時間外勤務手当や休日給は支給されないこととなっている。教員には学校外の教育活動や夏休みなど長期の学校休業期間などがあり、また『勤務時間の管理が困難』という理由から。その代わりに給料月額4%分の教職調整額が支給されている。」というくだりがある。
私はこういうとき、必ずその法律がどうなっているのか当たってから記事を書くことにしているので、調べてみると、公立学校教員の部活顧問強制は違法という結論になる。
なぜなら、公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)第6条第1項と、公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令によって、教員に時間外勤務を命ずるときは、臨時又は緊急やむを得ない場合に限るとあるので、恒常的に時間外勤務となるような仕事(部活顧問など)を命じることは違法なのだ。
そもそも公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)第2条第2項の「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。」というのが、労働基準法などの法規と照らして適正な条文なのか大いに疑問に思うが、これであるがゆえに、原則として教員に残業や休日出勤はさせないという規定になっているのであろう。
それにもかかわらず、名古屋大学大学院教育発達科学研究科・内田良准教授の「拡がる教員の部活指導義務 『全員顧問制度』の拡大とその背景に迫る(2017年6月18日)」といった記事が配信されているところをみると、文部科学省、各地方自治体の教育委員会、そして日本教職員組合(日教組)の不作為によって、現場の教員が苦しめられているとしか言いようがない。
もし、現行法によって公立学校の教員を働かせ続けるなら、日野瑛太郎氏の2016年9月10日付の脱社畜ブログにあるように「『教員は勉強を教えるだけの職業』でいいんじゃないの?」というのを徹底すべきだろう。
2017年2月8日付の東洋経済では「働かせ放題の『みなし残業』など(法的に)存在しない」という記事があるが、臨時という名の恒常的時間外労働を行わせて、法的に働かせ放題が存在しているのが、公立学校の教員の世界だ。(2016年9月10日 お前ら、社畜で人生楽しいか?-みなし残業(固定残業制度)を導入してる会社はブラック企業と断言する!)
一筋の光明として、来年度から非常勤の事務補助スタッフを付けるということだが、部活顧問も外部人材を採用するか、地域のクラブなどに活動自体を委ねるべきだろう。(2017年7月18日 ニューズウイーク-アメリカの部活動は、なぜ「ブラック化」しないのか 2017年8月24日 産経新聞-教員事務、支援員を配置へ 来年度、公立小中の負担軽減)
また、教員の労働環境がブラックになっているのを助長しているのがモンスターペアレントと呼ばれるクレーマーで(2015年12月16日-異常な土下座要求にNO! 「モンスターペアレント」の”とんでもクレーム” 弁護士の大ヒット対処マニュアルは万能か)、もはや、モンスターペアレントに対応するために残業させられた場合に、時間外手当を支給しないというのは時代遅れであるどころか、今や教師側が彼らに対して慰謝料を請求してもいいくらいのレベルになっているのではなかろうか。
こうした環境の中で、過労死を防ぐためにはハッキリとNO!と言う勇気を持つことだ!(2017年1月8日 お前ら、社畜で人生楽しいか?)というのは正しいのだが、地方議会の議員や保護者(モンスターペアレント)、心ないネット住民やメディアのバッシングで、正論を認めてもらえないのが公立学校の教員の世界に思える。
例えば、毎日4時間もタダ働きさせられるなら部活顧問などやりたくないという正論を吐いても、認めてもらえないばかりか、ディスられたり(dis=けなす)、人格攻撃されたりするので、精神異常をきたすか、過労で倒れるかの二択になるだろう。
最も端的な例は、私が2013年2月10日付で書いた「政治家と幹部公務員の自己保身、記者クラブメディアの無能に翻弄された現場の悲劇」で、責任のすべてが政治家や幹部公務員とメディアにあるのに、口汚く罵られたのは末端公務員という図式だ。
そうなると、優秀な人ほど最初から教員という職業を選択しないようになり、ますます公立学校の教員のレベルは落ちるという負のスパイラルになるだろう。
「教育は国家百年の大計」というが、それを蔑ろにした日本に未来はあるのだろうか。(2011年10月17日-日本人愚民化教育の成れの果て)
最近になって、私は、インターネット署名サイトのchange.orgで行われている「教職員の時間外労働にも上限規制を設けて下さい!!」や、「部活がブラックすぎて倒れそう・・・ 教師に部活の顧問をする・しないの選択権を下さい!」といったキャンペーンに賛同して署名を行った。
本来なら、こういう活動は教員有志がやるものでなくて、日教組が主導して然るべきものだろう。
憲法9条を守れと叫ぶのでなく、教員の労働条件や健康、生命を守れと要求するのが、あなた方の仕事ではないのか。
それに、法令を守らせるべき立場の文部科学省や各地方自治体の教育委員会は何をやっているのだろうか。
それとも、任意という名で実質的に強制する日本の労働環境に頬かむりして、教員の部活顧問は強制ではないし、時間外労働も命じていないと強弁し続けるつもりだろうか。
日本が未批准のILO条約の中に第151号(1978年の労働関係(公務)条約)がある。
これは、公の機関に雇用される「公的被用者」を対象として、団結権の保護、公的被用者団体への便宜供与、雇用条件決定手続、紛争の解決、市民的、政治的権利のそれぞれについて規定しているものだが、日教組がまともな労働組合としての活動をしないで、日本の仮想敵国(中国、韓国、北朝鮮)を利する行為ばかりをしているうちに、今や、彼らが何を言っても国民は聞く耳を持たなくなってしまった。
自民党が公約にしている憲法改正、その改正草案の第28条(勤労者の団結権等)第2項に、「公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなければならない。」が加わることになっている。
今でさえ、労働関係法規が全く守られていないトンデモない国である日本の教員にとって、ILO条約第151号が半永久的に批准されることがないばかりか、労働条件を改善するための最後の頼みの綱も断ち切られようとしている。
そして、そのことは憲法改正推進派の怒涛のような勢いと、憲法9条を守れの大合唱の中で、誰にも顧みられることはなく忘れ去られていくだろう。
今から15年前、2002年の第155回国会(臨時会)で「裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律」が可決成立し、彼らの報酬が減額されることになったとき、野党の中では反対の論陣を張った人もいたが(2002年11月13日-衆議院法務委員会 2002年11月19日-参議院法務委員会)、9条問題では政府に噛み付くマスコミや、「憲法を守れ」と主張する市民団体は全くの音なしだった。
そればかりか、衆議院法務委員会の席上、山本庸幸内閣法制局第二部長と、山崎敏充最高裁判所事務総局人事局長は、「裁判官の報酬については、司法権の独立を担保するため、憲法79条6項と80条2項で減額できない旨規定されているが、2002年9月4日の最高裁判所裁判官会議においては、『国家財政上の理由などで、やむを得ず立法、行政の公務員も減額される場合、裁判官報酬の減額は身分保障などの侵害には当たらず許される』との見解が出されており、学界において合憲説も主張されていることも踏まえ、現下の社会の諸情況に照らし、今回の引き下げは容認、政府案に賛成の旨報告され了承された。」と答弁した。
実際のところ、前出のとおり、裁判官報酬減額法は違憲なのだが(自民党の憲法改正草案では合憲)、日本では末端公務員の人権は憲法でも守られないほど軽いものなのだ。
その公務員に労働基準法違反事件を裁いて欲しいと言うサラリーマンはどんな気持ちを持つだろうか。
公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法 | |
第2条(定義) | |
1 | この法律において、「義務教育諸学校等」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する公立の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校又は幼稚園をいう。 |
2 | この法律において、「教育職員」とは、義務教育諸学校等の校長(園長を含む。次条第一項において同じ。)、副校長(副園長を含む。同項において同じ。)、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、養護助教諭、講師(常時勤務の者及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第二十八条の五第一項に規定する短時間勤務の職を占める者に限る。)、実習助手及び寄宿舎指導員をいう。 |
第3条(教育職員の教職調整額の支給等) | |
1 | 教育職員(校長、副校長及び教頭を除く。以下この条において同じ。)には、その者の給料月額の百分の四に相当する額を基準として、条例で定めるところにより、教職調整額を支給しなければならない。 |
2 | 教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない |
3 | 第一項の教職調整額の支給を受ける者の給与に関し、次の各号に掲げる場合においては、当該各号に定める内容を条例で定めるものとする |
一 | 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四条第二項に規定する地域手当、特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。)、期末手当、勤勉手当、定時制通信教育手当、産業教育手当又は退職手当について給料をその算定の基礎とする場合 当該給料の額に教職調整額の額を加えた額を算定の基礎とすること |
二 | 休職の期間中に給料が支給される場合 当該給料の額に教職調整額の額を加えた額を支給すること。 |
三 | 外国の地方公共団体の機遣される一般職の地方公務員の処遇等に関する法律(昭和六十二年法律第七十八号)第二条第一項の規定により派遣された者に給料が支給される場合 当該給料の額に教職調整額の額を加えた額を支給すること。 |
4 | 公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律(平成十二年法律第五十号)第二条第一項の規定により派遣された者に給料が支給される場合 当該給料の額に教職調整額の額を加えた額を支給すること。 |
第6条(教育職員の正規の勤務時間を超える勤務等) | |
1 | 教育職員(管理職手当を受ける者を除く。以下この条において同じ。)を正規の勤務時間(一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成六年法律第三十三号)第五条から第八条まで、第十一条及び第十二条の規定に相当する条例の規定による勤務時間をいう。第三項において同じ。)を超えて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限るものとする。 |
2 | 前項の政令を定める場合においては、教育職員の健康と福祉を害することとならないよう勤務の実情について十分な配慮がされなければならない。 |
3 | 第一項の規定は、次に掲げる日において教育職員を正規の勤務時間中に勤務させる場合について準用する。 |
一 | 一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律第十四条に規定する祝日法による休日及び年末年始の休日に相当する日 |
二 | 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二十五年法律第九十五号)第十七条の規定に相当する条例の規定により休日勤務手当が一般の職員に対して支給される日(前号に掲げる日を除く。) |
公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令 | |
公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(以下「法」という。)第六条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)の政令で定める基準は、次のとおりとする。 | |
一 | 教育職員(法第六条第一項に規定する教育職員をいう。次号において同じ。)については、正規の勤務時間(同項に規定する正規の勤務時間をいう。以下同じ。)の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務(正規の勤務時間を超えて勤務することをいい、同条第三項各号に掲げる日において正規の勤務時間中に勤務することを含む。次号において同じ。)を命じないものとすること |
二 | 教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限るものとすること。 |
イ | 校外実習その他生徒の実習に関する業務 |
ロ | 修学旅行その他学校の行事に関する業務 |
ハ | 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務 |
二 | 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務 |
コメント
あちらでのお問い合わせ有難うございました!
向こうで返すとキリが無いのでこちらで返させて頂きます
ほんと教師に限らず日本の労働環境は異常としか思えませんね・・・
Atusi@ソラノカケラさん
コメントありがとうございます。
>日本の労働環境は異常としか思えませんね・・・
私もセミナーの関係でこのことを調べて痛切に感じました。
役所の処罰を期待するだけでなく、サラリーマン自身が対処する気持ちを持たないとどうにもならないところにいますね。
日教組はアメリカが作りました
日本を破壊するためです
国歌を教えない国は日本ぐらいでしょうね
特に沖縄は日教組の影響が強いので国歌を知らないそうです
信じられません
>日教組はアメリカが作りました、
当時の占領軍はアメリカだからそうかもしれないですね。
国防意識がないのも、英語が話せないのも、アメリカに歯向かった日本を二度と立ち上がらせないようにしたという話もありますね。