義父母の介護者などに朗報、相続法制の改正試案にパブリックコメントを出そう

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リタイア世代の夫婦

2016年の夏は政治の季節なのか、去る10日に行われた参議院議員選挙のほかにも、東京都民の方は31日に都知事選挙もあり、いろいろと考えさせられる年となっている。

ところで、大型選挙の陰でひっそりと目立たないように報道されているが、私たちに大きな影響のある相続関連の法改正が実施されようとしている。
とりわけ私たち中高年世代は、親が年齢的に鬼籍に入る方もいて、相続という二文字が頭の中にちらつく年代でもある。

また、親世代が要介護状態にある場合、彼らの面倒を見るのが女性であることが多く、実の親の場合はともかく、配偶者側(義理)の親の場合、その貢献が相続の際には金銭的に評価されないといった法的不備が是正される予定になっている。

そして、この法制審議会の民法(相続関係)部会の出した試案については、「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」に関する意見募集として、今年の9月末までパブリックコメントを募集している。

参考までに、遺産相続の手続きの簡素化に関するパブリックコメントは現時点で募集がされていないが、日経新聞の記事によれば、年内実施とのことなので、近々実施されることだろう。

ちなみに、このパブリックコメントについては、出しても無駄ではないかという意見もあるが、2013年2月11日付の「紺色の人」のコラム「出すのはムダなの!?『コピペでパブリックコメント』の問題点」や、2013年2月18日付のohira-y氏のコラム「パブリックコメントは形式的に行われるだけなのか?」にも書かれているように、あながち無駄とは言えないようだ。

実際のところ、2013年2月27日付の「電子申告(e-Tax)による所得税の確定申告終了」で紹介したように、きちんとした意見を政府機関に出せば、実施されるかどうかは別として回答を得ることもできるので、パブリックコメントも一度くらいは国民の権利として出してみてもいいと思う。

自分にとって直接関係する法案が出されることなどあまりないので、コメントするしないは別にして改正試案の内容を見ると勉強になるだろう。
慣れないことで頭が痛くなる人も多いだろうが、たまには違う脳みそを使ってみようではないか。

配偶者の遺産相続拡大 「義父母の介護」などに金銭的考慮 法制審が中間試案 (2016.6.21 産経新聞)

法制審議会(法相の諮問機関)の民法(相続関係)部会は21日、配偶者の遺産相続を拡大するなどの民法改正について中間試案をまとめた。
遺産分割について、婚姻後に一定期間が経過した場合に配偶者の法定相続分を増やすなどの案が盛り込まれた。

法務省は今後、パブリックコメント(意見公募)を実施した上で、平成29年中に改正法案の国会提出を目指す。
相続に関する規定の見直しは平成27年2月、当時の上川陽子法相が法制審に諮問。

高齢化社会の進行で相続をめぐるトラブルの増加が予想されることから、国民の意識や実情に即して相続法制を見直す必要があると判断していた。
配偶者相続に関する民法改正は、昭和55年に3分の1から2分の1に引き上げられて以来、行われていない。

試案ではまず、婚姻期間が長く、財産形成に配偶者の貢献が大きいと考えられる場合は、配偶者の相続分を増やす見直しが盛り込まれた。
現行法では婚姻期間の長短にかかわらず、法定相続分は一定だ。
試案には、相続財産が婚姻後に一定割合以上増加した場合、配偶者の相続分を増やす。

婚姻後一定期間(20年または30年)が経過した場合、法定相続分を増やす-など複数案が記された。
また、相続人以外の人が介護などで献身的な貢献をした場合、相続人に金銭の請求ができる案も盛り込まれた。

現状では、例えば長男の妻が義父母の介護をしても妻は義父母の財産を相続する権利はない。
こうした場合、妻が相続人である長男らに対して金銭の請求ができるようにする。

金額が協議で決まらない場合は家庭裁判所が決める。
妻の請求金額については、各相続人が法定相続分に応じて責任を負うものとしている。

ただ、この見直し案では死去した人に関わる全ての人の「貢献」を考慮しなければならず、請求が“乱発”される恐れもあり、相続の紛争が複雑・長期化するとの指摘もある。

また、試案では、相続による権利の変動で、配偶者がこれまで住んでいた建物から即時退去を迫られるケースに対応する方策も記された。

配偶者の居住権保護の観点から、遺産分割終了時まで(例えば6カ月)住み続けることができる「短期居住権」の設定や、終身・一定期間などの「長期居住権」を設け、遺産分割時に選択肢の一つとすることなどが盛り込まれた。

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遺産相続の手続き簡素化 法務省、戸籍情報を証明書1通に (2016.7.6 日経新聞)

法務省は5日、遺産相続の手続きを簡素化するため、相続人全員の氏名や本籍地などの戸籍関係の情報が記載された証明書を来春から発行すると発表した。

これまでは不動産や預金などを相続する場合、地方の法務局や銀行にそれぞれ全員分の戸籍関連の書類を提出しなくてはならなかった。
今後は必要書類を一度集めて法務局に提出すれば、証明書1通で済む。

法務省は年内にパブリックコメント(意見公募)を実施した上で、今年度中に不動産登記規則を改正し、2017年度の運用開始を目指す。

新たに導入する簡素化に向けた制度では、相続が発生した場合、まず相続人の一人が全員分の本籍や住所、生年月日などを記載した申請書類をつくり、相続人全員分の戸籍と亡くなった人の戸籍をそろえて法務局に提出する。

この書類をもとに法務局が証明書をつくる。書類を精査し、内容を確認すれば、公的な証明書として保管する。
相続人には証明書の「写し」が交付される。
証明書は別の法務局でも使えるため、地方の不動産などを相続する場合、負担軽減につながる。

法務省は各金融機関でも相続申請時に証明書を活用できるよう調整する。
預貯金などの遺産も相続人は金融機関ごとに大量の書類を用意する必要があるうえ、金融機関側でも審査に多大な手間がかかっている。

書類の確認作業を一度にして、証明書を様々な所で使えるようにすれば、相続人と金融機関の双方の利便性が高まるとみている。
相続時に価値の小さい山林などの不動産相続が放置される事例は多く、社会問題になった例もある。

東日本大震災時には住宅地の高台移転事業の際、既に死亡した人の名義のままで現在の所有者が分からない土地が多くあり、自治体の用地買収が難航し、復興工事の遅れにつながった。

法務省は煩雑な相続手続きがこうした問題の一因だとみて対策を検討していた。
相続のあり方の見直しを巡っては、今回の見直しとは別に法制審議会(法相の諮問機関)の民法部会が6月に中間試案をまとめた。

結婚期間が長期にわたる場合に配偶者の法定相続分を2分の1から3分の2に引き上げることなどが柱で、様々な論点で見直しの検討が進んでいる。

▼遺産相続

不動産を遺産相続する場合、死亡した人と相続する人の双方を確定するために書類の準備が必要だ。

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本がいるほか、転籍や婚姻をしている場合は除籍謄本も必要になる。
相続人全員の戸籍謄本や住民票、遺産分割協議で相続した場合は遺産分割協議書や印鑑証明書もそろえなければならない。

現行制度では複数の地域での不動産相続や金融機関の預貯金の相続を申請するたびに書類一式が必要だ。
法務省が来春始める新制度では最初に申請する法務局で証明書をもらえば、次の場所ではその証明書のみで申請できる。

現行では書類に不備があると再提出が求められ、手続きの遅れにつながる。
複数の金融機関の遺産を相続する際には、1人の被相続人について各金融機関が別々に確認作業に追われ、無駄な労力を費やしているとの指摘もある。

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