黄昏のアベノミクス相場、放ったらかし投資家にお勧めな日経平均ベアETF(1580)

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知床五胡
歴史的なBrexit(英国のEU離脱)が決まった英国国民投票(The UK’s EU referendum)から2週間、日本市場にとっては日経平均株価が1,286円の急落を演じた2016年6月24日(2016年6月25日 日経新聞-英EU離脱、内外で市場大荒れ 日経平均1286円安)はセリング・クライマックス(selling climax)になるどころか、暗く長いトンネルの入り口になるのではないかという懸念が浮上している。(2016年7月6日 日経新聞-株大幅続落、待ち受ける暗く長いトンネル

実際のところ、Brexitのあった日の翌営業日(6月27日)から7月4日まで日経平均株価が今年初めて6日続伸し(2016年7月4日 日経新聞-東証大引け、6日続伸 急落からの買い戻し、売買は3番目の低水準)、株価が回復の様相を呈したのにかかわらず、7月5日から今日まで4日続落し、結局のところ、6月24日の終値(14,952.02円)と比べて、わずか154.96円高いだけの15,106.98円で引けた。

今年の日本市場は、メッキの剥がれた黄昏のアベノミクス相場と言えるだろう。
ところで、2016年6月26日号の日経ヴェリタスは、主要国の株式市場の6月第4週の週間騰落率で、震源地のイギリス(FTSE 100種)が+1.95%だったにもかかわらず、日本(日経平均:-4.15%)とイタリア(FTSE MIB:-7:09%)の下げが突出していると書いている。(各国・地域の株価指数週間騰落率

さて、仮に、6月24日の引け値で日経平均株価の下落に対して上昇する日経平均ベア上場投信(1580)(10株単位で投資可)に投資したとすると、この日の終値(7,360円)と比べて、今日の終値が7,240円と、わずか120円安いだけのレベルにまで回復している。

参考までに、日経225連動型上場投資信託(1321)(1株単位で投資可)は6月24日の終値15,450円に対し、今日の終値は15,390円、空売り(ショート)していた場合、含み損が解消して、何とプラスになっている。

つまり、私が「英国国民投票(The UK’s EU referendum)でギャンブルするならショートポジションがベターか(2016年6月19日)」で書いた「今年のトレンドは円高株安、ロングポジションの含み損は解消不能だが、ショートポジションの含み損は2週間程度で解消可能なのが今年の上半期の流れ・・・」というのが7月になっても未だに継続中であることがわかる。

それと、前出のコラムで紹介した川口一晃氏の「今までの例で言えば、1月相場が下がった年は4月が危ない。4月もダメなら6月、8月と危なく、10月が最も危ない。」というのが今年も当てはまるとすれば、今年の秋までは日経平均ベア上場投信(1580)を買って放置しておくのが、初級投資家や面倒くさがり屋さんにはピッタリの投資法と言えるだろう。

ちなみに、信用取引口座を持っている方は、日銀のマイナス金利政策で業績悪化が表面化している銀行株の空売り(ショート)が儲けやすいと思う。(2016年7月7日 日経新聞-銀行株安、日米に波及 欧州不良債権問題や金利低下も重荷
そこで分水嶺になりそうなのが、7月28日、29日の日銀の金融政策決定会合なのだが、ここでは市場が熱望する追加緩和策が出るのではないかと期待されている。(2016年7月7日 日経新聞-初の「サプライズ感なき追加緩和」 黒田日銀決めるか

それゆえ、ここで何も出なかった(現状維持の)場合は、4月28日の後場のようなネガティブサプライズとなって、日経平均株価は暴落するだろう。
一方、期待通りに緩和策が出ても、記事によれば、市場には緩和観測が既に広がっているので、サプライズ感が出にくいとあるため、それほど株価の上昇には繋がらない可能性もある。

つまり、これから7月下旬にかけて日経平均株価が上がったとしても、緩和策によって、より一層の上昇があるよりも、今年は毎月恒例とも言える月初の株価暴落に備えた利益確定売りが出やすくなるかもしれない。

要するに、どちらに転んでも8月上旬の日本市場は「ナ・ダ・レ(雪崩)」になりそうな予感が芽生える。
まさに、今年の相場は「熊(bear)の咆哮、2016年の投資のキーワードは戻り売り(sell on rally)」なのだ。
私の見立てでは日経平均株価は秋口には13,000円台まで下落する感じもあるので、証券投資セミナーでよくある買い時トークは今年に限っては論外と言えるだろう。

私が懸念しているのは、海外市場が本格的に崩れることによって、日本市場の低迷が今年で終わらず、来年以降も引きずる可能性があることだ。
そうなった場合、企業業績や雇用情勢への影響は避けられず、それこそ日本経済は再び暗いトンネルへと入っていくことになるからだ。

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株大幅続落、待ち受ける暗く長いトンネル 証券部 宮川克也 (2016.7.6 日経新聞)

6日の東京株式市場で日経平均株価は大幅に続落し、下げ幅は一時500円を超えた。
英国の欧州連合(EU)離脱決定で1286円下げた後、4日まで823円戻していた流れを断ち切るかのような値動きに、市場関係者の嘆きは深まる。

Brexitは暗く長いトンネルの入り口にすぎないのではないか-。市場の関心は今後待ち受ける不透明要因に集まる。
5日に続き、株価の重荷になったのは欧州経済の変調だ。
イタリアの銀行は不良債権比率が高止まりしており、事態を重視した欧州中央銀行(ECB)は不良債権の処理を求める書簡を送った。

だが、銀行問題の解決が一筋縄ではいかないことは日本ならずとも経験済みだ。
ある銀行アナリストは「同じ南欧でも、2010年頃からの欧州危機で銀行部門の改革に着手したスペインと異なり、イタリアの対応は手ぬるかった」と指摘する。

英国のEU離脱が決定して以来、「欧州経済などに不透明感が強まるきっかけがあると、世界的にリスク回避の動きに傾きやすい」(三井住友アセットマネジメントの吉川雅幸チーフマクロストラテジスト)。

7月中にはイタリアの銀行部門の現状をチェックするストレステストの結果が判明するとされ、市場は当面、イタリアの動向に左右されやすくなる。

英国の不動産ファンドで解約を停止する動きが相次いでいるのも不安を増幅した。
ポンド売りを起点にした円買いの動きが強まり、円相場が1ドル=100円台に突入。

輸出企業の業績悪化が再び意識された。
東証1部の約8割が値下がりするなか、マツダが6%安、JFEホールディングスが5%安となった。

今週末に控える2つのイベントを見極めようとする動きも広がっている。
まずは8日に発表される6月の米雇用統計だ。

5月の米雇用統計は就業者数が市場予想を大幅に下回る内容だった。
「米国は既に完全雇用に近く、次回も就業者数の大幅な伸びは期待しづらい」(日興アセットマネジメントの神山直樹チーフ・ストラテジスト)という。
もともと7月の利上げはほぼないというのが市場の見方だったが、次回の雇用統計も内容が悪ければ利上げ時期は一段と後退しかねない。

日米金利差拡大への期待が剥落すれば円相場の高止まりが続き、海外で稼ぐ日本企業にとって打撃となる。
国内に目を転じると、さらに根深い問題が意識され始めている。10日の参院選だ。

日本経済新聞など各紙朝刊は6日、参院選を前に世論調査の結果を公表した。
自民党は非改選と合わせて単独過半数をうかがう情勢で、憲法改正に前向きな「改憲勢力」は国会発議に必要な3分の2に迫る。
「改憲機運が高まれば経済政策がおろそかになるのではないか」。市場ではこんな不安がくすぶり始めている。

年初から日経平均が19%下がっているものの、与党勢力は衰える兆しがない。
与党内に「株安でも選挙で勝てる」との意識が広がれば政権運営のベクトルは安倍晋三首相の念願である憲法改正に向かう。

急激に冷え込んだ今日の日本株相場が象徴するように、市場は先々のリスク要因に身構えている。
トンネルはいずれ抜けるとしても、その先の光明はまだみえない。

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コメント

  1. 南浜 より:

    相場の予想はつくずく難しいものですね。
    日本株は11日・12日の2日間で1000円も上昇しました。
    為替もあっという間に104円台に逆戻りとなりました。
    NYダウは史上最高値に進んでいます。
    6月24日の13,800円を一番底とすれば、今回のリバウンドの後で、8月下旬ごろに、2番底が来そうですが、どうなりますか?

  2. カルロス より:

    相場は難しいですね。(苦笑)
    7月12日のコラムで少し触れました。ご参考までに
    http://carlos.cocolog-nifty.com/today/2016/07/post-6d72.html

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