紺碧の摩周湖で歴史的なBrexit(英国のEU離脱)を予感

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ニューズウイーク2016年7月4日号

2016年6月23日に実施された英国国民投票(The UK’s EU referendum)で、ほとんどの人が予想していなかった英国のEU離脱という結果に終わった。(2016年6月24日 BBC Japan-【英国民投票】 キャメロン首相辞意表明 EU離脱支持の勝利で

日経ヴェリタス 2016年6月26日~7月2日号

そのため、開票速報とともに相場が進行した日本では、10時から12時にかけて、残留派優勢と離脱派優勢の速報が入り乱れて、日経平均株価も為替相場も乱高下、結果的に離脱派が徐々に優勢になって、正午過ぎにはドル円相場が100円割れ、後場の寄り付きと同時に大方の銘柄は暴落して、ロングポジションを持ったまま昼休みを迎えた個人投資家は、多額の損失(含み損)を出すことになったようだ。

6月24日の日本市場が開くまでは残留派優勢の予測の元に、6月第3週の世界株安の痛手から回復傾向にあったため、ほとんどの投資家は、このようなドンデン返しがあるとは思いもしなかったのだろう。

ただ、こういうことがあるので、6月18日のアメジスト香港特別セミナー「明日の世界マーケットはこう動く」で登壇した酒匂隆雄氏は「40年間為替の世界にいた私から言わせてもらえれば、個人投資家がギャンブルするのはおやめなさい。結果がどちらになっても為替は大きく動くだろうからリスクが大きすぎる。」と言われたのであろう。

特に、一般的なシフトのサラリーマン(休憩時間が12時から13時)の場合、2016年6月24日のYahoo!ファイナンスダイジェストを見てもわかる通り、10時過ぎ、あるいは11時過ぎの異変に対処できないと思われるので、ことさらリスクが大きいと言わざるを得ない。

実のところ、ロングポジションを持った投資家にとっての、「前場天国、後場地獄」は、4月28日に開催された日銀の金融政策決定会合で現状維持声明が出された後にもあったことで、これで今年は2回目の梯子外しというわけだ。

つまり、二度あることは三度あるので、今年に限って言えば、サラリーマン投資家は重要な政治・経済イベント前にはポジションを縮小するスタンスで臨んだ方がいいだろう。

ところで、私はどうだったかと言うと、去る19日のコラム「英国国民投票(The UK’s EU referendum)でギャンブルするならショートポジションがベターか」で書いたように、若干のショートポジションを残して、というか含み損を抱えたまま、24日の朝を迎えたのだ。(苦笑)

当然ながら、このときは世論調査の結果が残留派優勢の中で大方の株価は上昇中、ショートポジションの銘柄は東京市場の脆弱さから、しばらく含み損のまま放置しても大丈夫と判断し、ほかの銘柄でロングポジションを取りながら均衡を図るつもりでいた。

ただ、私が世論調査というもので気になっていたのが、The Economist’s “Brexit” poll-trackerで貧困層(Poor)と熟年者(Old)に焦点を合わせると、EU離脱派(Leave)が大きくリードしていたことだった。

ドンデン返しがあるとすれば、橘玲氏が2015年6月8日付で掲載した「大阪都構想の住民投票が教えてくれた“単純な事実”」と同じ構図、要するに、BBC Japanが掲載した「離脱派が勝った8つの理由」の中にあるシルバーパワーが侮れないということだった。

摩周湖

大人の休日倶楽部パスで行く北海道・東北の旅」の途上、私は釧路から摩周湖と屈斜路湖に遠征することにした。
釧路で迎えた24日の朝はどんよりと曇っており、これから行く摩周湖もロンドンと同じように「霧」で有名なところなので、果たして湖面が見られるかどうか、宿泊先のラビスタ釧路川のスタッフ曰く、6月の釧路はほとんど太陽が出ていないということだったので期待薄であった。

ところが、釧路から列車に乗って摩周駅に下り立ったとき、そこには一面の青空が広がり、摩周湖第1展望台へ行く阿寒バスのドライバーが笑みを浮かべて、「今日のお客さんはついているよ。真っ青な摩周湖がくっきりと見えるよ。今月初めてじゃないかな。」と言ってきた。

午前10時過ぎ、私は列車からバスに乗り継ぐまでの間、フト思い立ってYahoo!ファイナンスのアプリを開いてニュースをチェックすると、そこには信じられない記事が刻々と配信されていた。

「日経平均は433円安、下げ転換に1万5900円割れ (10時13分配信 モーニングスター):買い一巡後は、伸び悩み、株価指数先物にまとまった売り物が出たのをきっかけに下げに転じ、軟調に推移している。」

こうは書いてあっても、明らかに利益確定売りとは違うと思った私は、前出のThe UK’s EU referendumに繋ぐと、EU離脱派が予想外に善戦していることがわかった。
私はここで勝負に出た。
自分にツキがあると信じて、ショートポジションを膨らませたのだ。

初めて見た摩周湖は、どこまでも蒼く、吸い込まれそうな色合いだった。
気温も釧路とは比べ物にならないくらい暖かく、サイクリングでもしたら気持ちいいだろうと思った。
湖畔を散策し、マイナスイオンをたっぷりと吸ってリフレッシュした私は、摩周駅へ引き返すバスドライバーに声をかけて乗り込んだ。

こんなローカルバスに乗るような酔狂なお客は私だけだったが、この不便極まる公共交通機関を使ったことで、私はiPhoneの画面に集中することができたのだ。
摩周湖第1展望台を出発したのは11時25分、東京市場の前場が終わる5分前だが、もはや、このときにはEU離脱派が残留派を引き離しにかかり、それとともに日経平均株価は凋落を始めたときだった。

株価が下落して喜ぶというのは投資をやらない方から見ると変な話だが、私の場合はショートポジションを膨らませたので、結果的にそうならざるを得ないのだ。

摩周駅に到着し、昼食を取った後で、駅前の足湯に浸かりながら自分のポートフォリオを眺めたとき、朝方までマイナス表示だったものがすべてプラスに変わり、一方で、日経平均株価や為替相場は阿鼻叫喚の様相を呈していた。
やはり、今年は「熊(bear)の咆哮、2016年の投資のキーワードは戻り売り(sell on rally)」ということなのだろうか。

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