私が7月に香港・マカオ旅行に行ったとき、往路は香港エクスプレス航空(Hong Kong Express Airways)、復路はピーチ・アビエーション(Peach Aviation)と、往復ともLCC(Low Cost Carrier=格安航空)を使った旅程を組んだ。
これは2014年1月17日付の「日帰りで香港・マカオ旅行が可能に」というコラムで書いた東京(羽田)発LCCと大阪(関空)着LCCの組み合わせで、現地滞在時間を最大限に取れて、しかも体力的にもできるだけ楽な香港旅行を演出しようという目的があった。
ここでネックになるのが、羽田空港を6時20分に出るというフライトスケジュールで、これに間に合わせるためには自家用車で空港へ行くか、空港周辺に前泊するしかない。
私が羽田発の早朝便を使うのはこのときが3回目だったが、過去には2011年6月の台湾旅行の前泊で使ったアーヴェストホテル(蒲田駅西口)(4,600円)、2013年8月の台湾旅行の前泊で使ったオークイン3(4,700円)と、双方とも蒲田駅周辺のビジネスホテルに泊まり、羽田空港行きシャトルバス(蒲95)を利用した。
そして、7月の旅行のときはカプセル・イン・蒲田(2,800円)に泊まり、蒲田駅東口発4時30分の京浜急行バス(蒲30)に乗って空港まで行った。
おそらく、公共交通機関を使ったアクセスとしてはこれが最も安価ではないかと思う。
ところが、先月の北海道旅行に行く前に立ち寄ったお台場の大江戸温泉物語、このときは寝台特急「北斗星」に乗る前に一風呂浴びようと行ってみたのだが、ウェブサイトでいろいろ調べてみると、まず目に付いたのは「羽田空港 早朝便フライト前泊プラン」、バス代込みで2,800円は蒲田駅前のカプセルホテル並の安さである。
もっとも中で飲食すると、蒲田にいるより高くつくかもしれないし、今のところバスが1本(大江戸温泉 3:50-4:20 羽田空港)しかないので、空港で時間を持て余す場合もあるが、首都圏在住以外の人や外国人観光客にとっては東京観光のついでに寄れるメリットがある。
また、同じようなプランを提供しているところとして天然温泉平和島があり、どちらか便利な方を使ってみるといいだろう。
一方、成田空港への早朝アクセス手段の一つとして京成バスの東京シャトル(900円)があるが、これに「大江戸温泉物語セットプラン」(1,200円)を足して利用することができる。
それ以外の方法でも成田空港へ早朝に辿りつくことはできるが、成田空港に到着してから2時間程度は時間潰しをしないといけない。(成田空港第2ターミナルから早朝便でご出発のお客様へ)
「週末沖縄でちょっとゆるり」の著者、下川裕治氏はこのときのことを次のように書き表している。
私はこんな思いをするくらいなら「大江戸温泉物語セットプラン」に1,200円を払って、3時40分発の東京シャトルのバスに乗るだろう。
私がこのような時間帯の悪いフライトを使うときは、短期間の旅行でも現地滞在時間を確保したいときか、滞在先での移動に都合がいいなどの条件があってのことで、単にチケットの表示料金が安いからといって買うことはないからだ。
ところで、国土交通省と東京都が、2014年10月26日から2015年3月31日まで羽田空港の利便性改善のための実証実験を行う目的で、羽田空港への深夜早朝のアクセスバスが設定されることが報じられた。(2014年9月24日 タビリス-羽田空港「深夜早朝アクセスバス」の時刻表と値段。東京駅、新宿、渋谷、品川、横浜などへ5路線を新設。)
利用率がよければ2015年4月以降の運行も検討されるそうだが、これらとインターネットカフェや24時間営業のレストランなどを組み合わせれば、体力的には苛酷かもしれないが、よりバリーエーションのある旅行が楽しめることになるかもしれない。
週末沖縄でちょっとゆるり by 下川裕治
LCCの乗り入れは沖縄好きには朗報だった。
小躍りするほどだった。
しかし、世のなかはそう甘くない。
LCCの安さの背後には、つらさやストレスが横たわっている。それでも沖縄に行きたいという思いが勝ってしまう。
そして朝の6時10分発というLCCに予約を入れてしまうのだった。
成田空港から那覇に向かうジェットスター便だった。夏のシーズンに入り、その運賃はかなり値上がりしてきている。
が、僕がパソコンのモニターを眺めていた6月、この早朝便は5千円台の運賃だった。しかし、6時台に出発するこの便に合わせて成田空港へ行くことは大変なことだった。
都内に住んでいたら、始発電車を乗り継いでいっても間に合わない。
成田空港近くに前泊したら、安いLCCを使う意味がなくなってしまう。成田発那覇行きのジェットスターには、8時台に出発する便もあった。
これなら始発に乗っていけばなんとか間に合うのだが、運賃が2千円ほど高く設定されていた。
それがLCCというものなのだろうか。
その2千円の差に悩むのだ。「LCCに乗るぞ」と決めた時点で、節約モードのスイッチが入ってしまう。
この2千円が、実際の価値以上に映ってしまうのだ。
成田空港に行くには、午前1時台に東京駅から空港に向かう格安バスしかなかった。
乗ることにしたのは、午前1時30分に出発する東京シャトルというバスだった。運賃は900円。午前1時すぎにバス停に行くと、すでに長い列ができていた。若者が多かった。
ほぼ徹夜で乗る飛行機を若さで乗り切ろうとするタイプなのだろうか。
このなかには、無類の沖縄フリークもいるのかもしれない。満員の客を乗せたバスは定刻に出発した。
すぐに高速道路に入る。
そして途中の酒々井のパーキングエリアで休憩し、成田空港に着いたのは3時近かった。
通常なら1時間のコースを1時間半。その意味を成田空港ターミナルの入り口の前で知らされることになる。
ターミナルがまだ開いていないのだった。
乗客たちはドアの前でぼんやりと待つしかない。3時半頃だろうか。
警備員が現れ、ドアを開けてくれた。
館内の照明も次々についていく。
しかし眠さとの闘いはこれからだった。ジェットスターのチェックインカウンターに行ったのだが、スタッフは誰もいなかった。
通路のソファに座り、うとうととするしかない。4時過ぎにスタッフが現れてチェックイン。
しかしその先のセキュリティーチェックが開いていなかった。
その前で再び30分待つことになる。搭乗待合室に入ったのは5時だった。
そこでまた30分待ち。
こうしてやっと、飛行機に乗り込むことができた。
沖縄に行きたいという思いだけで乗り切る長い夜である。
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