障害者や要介護者であっても旅の楽しみを

この記事は約5分で読めます。

リタイア世代の夫婦

先日、福祉関係の友人から一つの記事を紹介された。
日本ではほとんど脚光を浴びていないであろう、障害者や要介護者の旅行に関する記事だった。

私にとってこの記事は新鮮で、こういったことを個人で体系立ててやっている方がいると、初めて知ることができた。

私の親は幸いに元気なので、私も好き勝手に人生をエンジョイすることができているのだが、実際にご両親の介護をされていたり、障害者の面倒を見られている家族は大変な思いをしていると聞く。

気苦労が絶えない日常から一時的であっても解放されたいというのは介助者(家族)の本音であろうが、そういった意味でも、おそどまさこ・トラベルデザイン・オフィスがやっているようなトラベルコーディネートは素晴らしいことだと思う。

また、内閣府が出している平成25年版の高齢社会白書に高齢者の介護の実情が掲載されているが、75歳以上になると、全体の3割程度の人が要支援、要介護の認定を受けているとあり、プチ富裕層(金融資産を1億円以上保有する個人)以上の人(参考:2014年2月8日-産経新聞-日本の”本当のお金持ち” 超富裕層とはどのような人たちか)を中心として、こうした介助旅行の需要というのものはますます増えてくるだろう。

日本はどちらかと言うと、障害者や要介護者が引きこもりにさせられてしまうような雰囲気があるが、NPOジャパン・トラベルボランティア・ネットワークや、UD・FUN旅研究室のような支援の輪が広がり、介助旅行が旅行会社における募集旅行の一つのカテゴリーになれば理想的だと思う。

いずれにせよ、障害者や要介護者に対する事業がビジネスモデルとして確立できることが、ウィン・ウィンの関係をもたらすことになるような気がした。

***************************************

日帰り、海外、終末期でも「旅の楽しみを全ての人に」 (2014.5.16 シルバー新報 by おそどまさこ)

空港のロビーで車いすに乗って笑顔で写真に収まっている男性は、脳性小児まひのある60代のAさん。
彼は大好きなヴェートーベンの出生地であるドイツのボンから、人生を閉じたオーストリアのウィーンまで8日間の「ひとり旅」を夢見ていた。
歩くことも、意思の疎通も難しいAさんだが、単独でドイツへ出かけられるだろうか、と。

結果、彼は現地でブレザーや帽子を購入し、ヴェートーベンコンサートにも出かけた。
満足そうな笑顔から、それがどれだけAさんにとって幸せな時間だったかが伝わってくるようだ。

Aさんの車いすひとり旅の実現を支えたのは、おそどまさこさん。
19年前から、高齢者や障害の有無にかかわらず、誰もが参加できる国内外の旅行の企画・同行や、旅行介助者の養成に取り阻んでいるトラベルデザイナーだ。

この旅行には看護師とおそどさんが同行した。
「旅に出ると人との出会いに刺激を受けたり、新たな発想が浮かんでくる。心の底から元気になれる」。
学生の頃から旅に魅了され、雑誌の取材などで世界中を旅してまわったおそどさん。

だが、ある時ふと、日本では障害者や高齢者が旅行を楽しむことが難しい現状に疑問を感じるようになったという。
旅はリハビリであり、誰でも等しく旅する権利があると話す。

「病気や重い障害があっても旅の楽しみを締めて欲しくない」。
国際航空運賃は盲導犬同伴が無料だと知り、1995年2月、日本で初めて盲導犬も連れていく視覚障嘗者にやさしいフランスツアーを企画し、実現させた。

それが旅が難しい人の旅行を実現するトラベルデザイナーとして歩もうと決心した原点だ。
その後、企画・同行した旅行はこれまでに55本、参加者は千人以上に上る。

企画ツアー以外に旅立ち支援も広げようと、2004年5月に東京都庁の認証を受け、NPOジャパン・トラベルボランティア・ネットワーク(東京都多摩市)を立ち上げた。

旅行介助の基本は、旅をいかに楽しんでもらうかが第一だ。
第二はその人ができないことだけをサポートする。
病気や障がいの程度によって、できることとできないことは一人ひとり違う。

自分の力でやり遂げる楽しみを奪ってしまわないよう、事前のヒアリングは念入りに行う。
「Aさんは出発前、ストローとマグカップで飲み物を飲ませてもらっていたが、旅の途中で大好きなビールを飲み、帰国する前にはビールジョッキを自らの手で持ち、ビールを楽しむようになった。旅は不可能を可能にし、チャレンジなのだと気づき、幸せな時間をデザインできた」とおそどさんは振り返る。

今年4月、旅行介助ガイドの東京の地域拠点であるUD・FUN旅研究室もできた。
世界中どこへでも同行可能な、旅に精通し、排泄や入浴などの介助スキルがある旅行介助ガイドとの連携体制は万全だ。

「介護保険では趣味や生きがいのための外出支援がなく、制度で利用できるサービスも・どんどん縮小されている。これでは高齢者が引きこもってしまい、老後は憂鬱」と話す。

2010年からは、旅に精通し、介護技術者を対象に、重度障害者の排泄や入浴などの身体介助ができる「旅行介助ガイド」の養成講座も始めた。
旅に必要な知識を習得したかを問う「旅行介助ガイド検定」も実施し、全国で34名が認定された。

5月24日に3回目の検定が行われる。
旅行介助の同行費用は、旅費のほかに同行介助料として1日8時間あたり1万9千円を負担してもらう。
決して安くはないが、同行介助者の確保に必要な費用だ。

おそどさんのツアーでは毎回、年齢や抱えている障害が違う人が複数参加するため、互いの苦労や工夫を夕食時に話し合ったり、理解が深まるのも特色だ。

また、在宅介護の支援施設主催で日帰り旅行に同行した時、長年、自宅からほとんど出かけたことがなかった高齢女性が近くの桜の花に手をすーっと延ばし、手折った瞬間を目の当たりにし、改めて「誰にとっても外出や旅行は必要」だと強く感じたという。

今後は、人生最後の旅のプロデュースに力を入れたいと言う。
どんなに重度の障害を持っていても、「希望されるなら、人生最後の旅をデザインして地球のどこへでもお連れし、幸せづくりのお手伝いをしたい」と、国内外問わず、個人旅行のデザインから旅行介助ガイドのマッチングも含めて年間10組程度限定で旅のデザイン・コーディネートを受け付けている。

主治医から余命告知された人の旅立ちの依頼にも応じるのは、「日本で一つしかない取り組み」という。
「65年の人生経験を重ね、旅と福祉のキャリアを積んできたので、自分の知識やスキルを生かせるのはこれからかな」と微笑む。

来年は、トラベルデザイナー20年を迎え、戦後70年の世界一周・4ツアーを計画。
第1回は、9月7日から、「チェルノブイリ原子力発電所など歴史の現場を巡る17日間の旅を予定、自律した高齢者や視覚・聴覚障害者などが参加できる。
ツアーの相談などは「おそどまさこ・トラベルデザイン・オフィス」まで。

***************************************

コメント

  1. リリー より:

    いい内容だわ!大人だ!カルロスさん!

  2. カルロス より:

    毎度ありがとうございます。

  3. prego より:

    こんばんわ!
    「障害者や要介護者であっても旅の楽しみを」読ませていただきました。
    自分の親も歳をとってきてこういったことを実際に考える年齢になってきたのでとても興味深く読ませていただきました。母が亡くなる前、足が悪くなってしまい、どこにいくにも大変で寝た切りだけが介護ではないことをその時に知って、みるみる行動範囲が狭くなってしまった母を気の毒に感じました。今後高齢化で(自分も含め)こういった活動はどんどん多くなっていくといいなって思いました。

  4. カルロス より:

    おはようございます。
    私の親も今は元気ですが、いつ介護とかの状態になるかわからないので、こういう選択肢もあるのだね、という思いで書きました。

タイトルとURLをコピーしました